2025/06/21

ChatGPT登場半年後に私が考えていたこと:2023年『英語教育増刊号』(大修館書店)の原稿を転載


以下の原稿は、私が2023年の5月に執筆し、その年の夏の『英語教育増刊号』(大修館書店)に掲載していただいた「ChatGPTは孫悟空」という記事です。編集部の許可を得て、ここに転載します(ただし脚注は省略)。


記事の意図は、ChatGPTが登場して日が浅い頃でしたので、まずは比喩を使ってわかりやすくAIと人間の関係を説明するものでした。今読み返してみると、"Bard" といった懐かしい名前が出てきますが--Googleは "red alert" を経てよく盛り返したなぁ--、技術の確実な発展と引き換え、人間社会の対応はまちまちだと思います。これからしばらくは、技術的イノベーション以上に、ユーザーイノベーションによって、個人・組織・社会の競争力に大きな差が出てくると思います。


と、ついつい「競争力」という常套句を使ってしまいましたが、AIを使いこなすには、現存の制度にこだわらない、仏陀のような広く深い知恵が必要だというのは、比喩を使った下の記事に書いている通りです。記事の最後の「人間には、ChatGPTの可能性を凌駕するような広く深い知恵が必要だ。古くから人間はそういった知恵を宗教的想像力などによって構想してきた。そのような知恵を実装する社会づくりがAI時代の最優先課題になる」という考えは2年後の今も変わりません--というより、その思いは一層強くなっています。


ご興味があれば下の記事をご一読ください。

補記:ちなみにこの夏に出る『英語教育増刊号』(大修館書店)の新たなAI特集号にも、私は寄稿する機会をいただきました。今度は、激動する国際情勢の中で、日本の英語教師がもつべきAIリテラシーについて書きました。出版されましたら、こちらもお読みいただければありがたい限りです。



ChatGPTは孫悟空


ChatGPTを何に喩えよう?


ChatGPT は衝撃的だ。さらにChatGPTと同じような大規模言語モデル (Large Language Model: LLM) であるBingやBardなどが登場し、AIの利用可能性はますます増大している。「ホッチキス」や「ウォークマン」といった固有名は換喩 (metonymy) として、その製品のカテゴリー全般を代表するが、ここではそれに倣い、ChatGPTという名称を、LLM全般を表わす用語として使うことにする。


ある人々は、ChatGPTの登場をiPhone やコンピュータ・マウスの登場に喩えた。だが、電気の発明や火の発見に相当すると考える人たちもいる。ChatGPTのGPTとは “Generative Pre-trained Transformer”  という専門用語の略だが、実はGPTは “General Purpose Technology” (汎用技術)の略でもあると考えるからである。ChatGPTも汎用技術として電気や火のように人類史を変えるだろうという予測がその考えの背後にある。だが電気や火という喩えは巨大すぎてイメージしにくい。だからもっと具体的なものに喩えることにしよう。私の喩えはこれだ。「ChatGPTは孫悟空」。


孫悟空とは中国の空想小説『西遊記』に出てくる架空のキャラクターだ(漫画『ドラゴンボール』の主人公のことは今忘れてほしい)。孫悟空は、人・猿・神の性質を備えて超能力を発揮するが、単純でおっちょこちょいだ。『西遊記』は、日本では1978年のテレビ番組として有名になり、テレビ番組はその後も何度かリメイクされている。これらの番組で、孫悟空は三蔵法師が天竺に行くまでのお供をする。孫悟空は、筋斗雲・如意棒・分身の術を使いこなす[補注:「筋」は略字です]。筆者は今学期から大学の英語授業でChatGPTを、主に英会話訓練・単語学習・英語エッセイの添削と改訂の3つの分野で使っている。その経験から、ChatGPTはまさに孫悟空のように思える。



筋斗雲のように知識空間をかけめぐるChatGPT


 ChatGPTを音声での英会話訓練のために使うには、パソコンのChromeブラウザーにVoice Control for ChatGPTという拡張機能をつければ簡単にできる。筆者は上級者用と初級者用のプロンプト(=ChatGPTへの指示文)を作り公開している。上級者用は英語教師の自己研修のために使える。英語教師の多くは、表面的な会話はできても、話を深掘りする表現力がない。ChatGPTは、英語圏で知られている話題なら何でも対応できる。音楽でもスポーツでも経済学理論でも社会的問題でも何でも語りかけるといい。ChatGPTは筋斗雲に乗った孫悟空のように、英語で表現されている知識空間を自在に飛び回り、その話題に対しての詳細な情報を出しながら会話相手になってくれる。人間の英会話講師なら、学習者が勝手に選ぶ特定の話題をそこまで深く話すことはできない。また仮に何かの話題で学習者と興味が一致したとしても、学習者が次に選ぶ話題でも興味が一致するとは限らない。英語圏での知識世界を自在に飛び回り会話を成立させるChatGPTはまさに筋斗雲に乗った孫悟空である。

 初級者用のプロンプトは、中高生にも使える。ChatGPTがあまり話しすぎないように指示を出しているからだ。しかしChatGPTは、孫悟空のようにおっちょこちょいで、ついつい自分がペラペラしゃべってしまう。さらに英語圏であまり知られていない日本文化のことなどについては、知ったかぶりをしてデタラメを次々にしゃべってしまうことには注意が必要だ。



如意棒で自在に学習者の疑問に答えるChatGPT


 筆者は、所属校指定の単語集を使った語彙学習を、学生にChatGPTと対話することに任せている。学生は、単語学習用のプロンプトをChatGPTに入れた上で、自分が選んだ英単語について学びたいと告げる。ChatGPTは日本語よりも英語で対話した方が、はるかにパフォーマンスがいいので、学生には英語で対話するように指示している。学生のレポートを見る限り学生の質問や指示の英語は完璧ではないが、それでもChatGPTとの対話を続ける中で次第に学生は英語を使うことに慣れてきている。このあたり、ChatGPTは孫悟空と同じように完全な人間ではないので、学生も気楽に英語を使っているようだ。


 ここで特筆すべきは、学生が具体的な質問をすればするほどChatGPTが関連性の高い回答を出してくれることだ。まるで孫悟空が如意棒で自由自在に回答を示してくれるようだ。ある学生は(英語で)「なぜ一方で “in a circle”と言うが、他方で “in line”と冠詞なしで言うのか。 “in a line” と言ってはいけないのか?」と尋ね、ChatGPTとの対話をしばらく続けた。従来なら教師に遠慮して―あるいは教師の英語力を忖度して(苦笑)―尋ねなかったような疑問を学生はChatGPTにぶつける。それに対してChatGPTは如意棒でひょいと目的物を取ってくるように例文を示して解説をする。この例文生成能力も、多くの人間英語教師の能力を超えている。


 とはいえ、そそっかしい孫悟空は添削の見逃しもしてしまう。ChatGPTが問題ないといった英文に間違いが残っていることもたまにある。また、ChatGPTに「○○では駄目なのか」と執拗に尋ねると、実はChatGPTは誤る必要がないのに自分が間違っていたとしばしば謝る。英語教師は三蔵法師のように、そそっかしい孫悟空がしでかした失敗を見守らねばならない。



分身の術で教師のコピーを作り出す英語エッセイの添削と改訂


 英語ライティング指導で教師は添削に追われる。教師は学生の英文の語法(文法・句読点・綴り)の誤りを正した添削をしてそのポイントを提示する。だができれば文体的に改善した英文改訂案を出してそのポイントも説明するべきだ。さらには最後に励ましのことばも添えるべきだろう。これをすべて人力でやると、1人の学生あたり最低30分はかかる。実際の作業では疲れが溜まり、作業時間はどんどん長くなる。休憩時間も入れると、30分を人数分でかけた時間ではとてもすまない。これらのフィードバックを毎回・毎週やろうとすれば過労で健康を損ねかねない。


 だがChatGPTにプロンプトを入れると、これらのフィードバックが自動的にできあがる。数十人のフィードバックがわずかの時間で終わる。最初使った時、筆者は文字通り笑いが止まらなかった。まるで筋斗雲と如意棒で能力強化した教師としての自分を、分身の術で何十人にも増やしたようだ。筆者は、授業で学生にAIなしで英文を書かせ、その授業後にそれらへのフィードバックをChatGPTに作成させる。次の授業で学生はChatGPTからのフィードバックを吟味し、そこから学べたことや疑問点をレポートにまとめる。筆者はそれを授業後に読んで必要な助言を加えてその次の授業で学生に示す。このような人間の介入は必要だが、ChatGPTで教師は千人力を得る。高校生用のプロンプトも作ったのでぜひお試しいただきたい。



孫悟空には仏陀の知恵が必要


 以上、ChatGPTがなし得ることを孫悟空に喩えるという極めて非科学的な説明をした。比喩による説明は真面目な人には怒られそうだが、比喩にはある側面を強調するという長所がある。最後に孫悟空という喩えでさらに強調したい点を述べる。それは「ChatGPTは超能力をもつ、人間とは異なる別人格であり、その暴走を防ぐには人間の深く広い知恵が必要」ということである。孫悟空が人・猿・神の性質を備えているように、ChatGPTも人間に似ながら明らかに異なる思考・行動様式をもつ。孫悟空は、悪事を働けば頭に巻かれた輪を締め付けられたが、ChatGPTにも今後数々の規制が必要になるだろう。また孫悟空はある時、世界の果てから果てまで筋斗雲で移動したが、実はそれはすべてお釈迦様の手の上でのことだった。人間には、ChatGPTの可能性を凌駕するような広く深い知恵が必要だ。古くから人間はそういった知恵を宗教的想像力などによって構想してきた。そのような知恵を実装する社会づくりがAI時代の最優先課題になると私は考えている。



まとめ

★ ChatGPTは孫悟空のように超人的な能力をもっているが、少しおっちょこちょいなので、人間の監視が必要。

★ だがChatGPTに英会話訓練や単語学習の相手をさせると、学習者は自らにもっとも関連が深い学びをすることができる。英語エッセイの添削・改訂能力も驚異的。

★ ChatGPTがこれから教育界で善用されるためには、人間と地球にとって何が大切なのかを見極める人文的知恵が必要。


2025/06/08

ウェブアプリ (Random Shuffler) と カスタムGPTs (Word Quiz Generator) -- 語彙集の単語をランダムに並び替えてテスト問題とその回答を作り出します

 

■ 入力した単語の順番をランダムに入れ替えるアプリの必要性と簡単な作成


私はこれまで、担当科目で義務化されている指定語彙集からの単語テストをChatGPTプロンプトを使って作成していました。

本当はこのプロンプトを学生さんに渡して、学生さんに何度も自分でテストを作りそれに答えてもらいたいと思っていました。ですが、LLMではうまく単語の提示順番をランダム化できないのが悩みの種でした。

学生さんがよくやる暗記学習では、単語の提示順番が大きなヒントになります。しかし提示順番は、語彙集に固有のものであり、実際の言語使用にはまったく関係ありません。ですからテスト問題はランダムな順番で出したいものです。


本日、関西英語教育学会でAIに関するいろいろな発表を見ているうちに、APIを使わなくとも、入力した単語の順番をランダムに並び替えて出力するウェブアプリはできないかと思いました。

Claude (Opus 4) に下のプロンプトを入れたら、あっさりとウェブアプリを作ってくれました。このアプリはClaudeのサーバーで無料公開していますのでどなたでもお使いいただけます。


Random Shuffler

https://claude.ai/public/artifacts/5dbb0293-6c37-4843-87b6-c15d60b8b7ee


また、このアプリをこのBloggerの記事に掲載しました。

以前、単利預金と複利預金の違いを説明するウェブアプリをClaudeにつくってもらった時に、そのコードをこのブログに貼り付けたら、ブログの枠組みの色が変わってしまいましたので、その記事は削除しました。

Radnom Shufflerのコードを貼り付けても同じように変色しましたので、今回はその状況をClaudeに説明してコードを書き直しました。Vibe codingとまで呼ぶ必要はないでしょうが、コードの知識をもたない私のような素人にとってはありがたいことです。

補記(2025/06/13):その後、Bloggerの作動が少し不安定になりました。因果関係は確定できませんでしたが、安全のため、今回のアプリを掲載した記事を削除しました。



■ カスタムGPTとの組み合わせ

上のウェブアプリで提示順序を入れ替えた語彙集の単語を、下のカスタムGPTに入力してください。そうすれば、各単語の頭文字だけを示し、その単語の品詞・定義・類義語・例文を示したクイズ問題とその解答(発音記号付き)を自動的に入手できます。出力された問題と解答はコピーすれば、そのままテスト問題と解答になります。教員が使っても学習者が使ってもいいカスタムGPTかと思います。


Word Quiz Generator

https://chatgpt.com/g/g-6845308b26a48191b83572ab601ea443-word-quiz-generator


なお私は、単語はできるだけその言語の他の単語との関係性で学ぶべきだと考えています。ですから、このカスタムGPTの問題で示される品詞・定義・類義語・例文はすべて英語で書かれています。もしこれらの情報を日本語で提供したい方がいれば、下のカスタムGPT用のプロンプトを適当に書き換えてください。

またさきほど試験的に運用しましたら、50単語は対応できました。ただしChatGPTは、問題を10単語ずつ出力しましたので、出力を続けたい場合は "Please continue"などと入力してください。

上のRandom ShufflerとこのWord Quiz Generatorを使えば、誰でも簡単に単語テストを量産できます。教師の方も学習者の方も、どうぞ自由にお使いください。下のプロンプトなどのコピーや改変などもまったく自由です。



■ APIの活用

APIの技術を使えば、ウェブアプリからLLMにアクセスできますので、このように2つのアプリ(ウェブアプリとカスタムGPT)を使わずとも、1つのウェブアプリ上で、テスト問題と回答の生成ができるでしょう。また、ウェブアプリ上で学習者が一問ずつ問題に解答しフィードバックを得ることもできるでしょう。ただ私にはまだその技術がないし、APIの課金の問題もありますので(笑)、私は今、そこまでは踏み込みません。

近頃はGoogle社のGeminiの進化が目覚ましいので、私は少し前に、ChatGPTは月額20ドル版の契約に戻しました。ChatGPTの月額200ドル版の価値を見いだせなくなったからです。そこで浮いたお金でClaudeの月額17ドル版を契約しました。まだClaudeは全然使いこなせていませんが、上のような簡単なアプリ開発や言語の書き換えについては、結構面白い使い方ができるのかなと思っています。

私は技術的にはほとんど無知ですが、素人なりにAIを使いつ付けてゆこうと思っています。



Claude (Opus 4) に入れたプロンプト


Create a web application that randomizes the order of inputted items.

The application has the following sections.

- Title “Random Shuffler”

- Instruction: Input words or numbers in the window below. Use commas or new lines to separate them when you enter them. This app generates the items in a randomized order.

- Input Window: The user inputs their items in this window.

- Generate icon: The user clicks this icon to start random shuffling.

- Output window: All the items appear in this window in randomly shuffled order. 

- Copy icon: The user clicks this icon to copy the content in the output window.

- Regenerate icon: The user clicks this icon to start a new random shuffling.




カスタムGPT用のプロンプト


# Role

- You are a word quiz generator. You generate quizzes for the words you receive from the user.

- You repeat the Quiz Generation procedure and the Answer Generation procedure below one by one untill you create quizzes and answers for all words. You generate quizzes and answers in the order of words you received.

- You produce quizzes and answers in the Output Format described below.


# Quizz Gneration

- **Q #**: Replace "#" with a number starting from 1, followed by one of the words you received. The word must be represented with only the initial letter in lower-case, followed by ___. Do not show the designated word in full spelling.

- **Part of Speech**: Indicate the part of speech of the word. If the word functions in more than one type of part of speech, show all parts of speech the word allows.

- **Definition**: Provide a definition of the word without using the word itself or its derivatives. Avoid showing the selected word in definition. The definition must be readily accessible to a 12-year old student. The definition must include the part of speech in full spelling. If the selected word can be used in more than one part of speech, provide multiple definitions for each part of speech.

- **Synonyms**: Show the synonyms of the word in the same line, divided by a comma. Each synonym must be enclosed with double quotes.

- **Example Sentences**: Generate three example sentences in which the selected word is represented with only the initial letter, followed by ___. For example, if the selected word is "factor", it must be represented as f___.  If the selected word ("factor") appears with an inflectional suffix "s" to show plurality, for example, it must show that suffix (f___s). Avoid using the derivatives of the word in example sentences. Each example sentence must be numbered with the number in parentheses. 


# Answer Generation

- **Q #**: Replace "#" with a number starting from 1, followed by one of the words you received. The word must be represented.

- **Pronunciation**: Provide the International Phonetic Alphabet of the target word for each part of speech in American and British English, followed by the part of speech and the variety of English in parentheses.


# Output Format

- Quizzes: Print quizzes that consist of the four sections described above (Q, Definition, Synonyms, Example Sentences) for each word you receive.

- Answers: the word with the numerical identification mark (Q #) and Pronunciation.




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2025/05/29

「AI活用により英語学習者を自律的ユーザーに育てる --京都大学の学術英語ライティング授業についての省察的報告--」(英語翻訳の二次出版付き)

 この度、私の実践報告が公開されましたのでお知らせします。


柳瀬陽介 (2025) 

「AI活用により英語学習者を自律的ユーザーに育てる 

--京都大学の学術英語ライティング授業についての省察的報告--」

『京都大学国際高等教育院紀要』8, 1-27

https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/handle/2433/294306




抄録

この実践報告は、京都大学教養・共通教育課程の「英語ライティング- リスニングA/B」の2023 年度前後期および2024 年度前期において筆者が独自に行った生成AI(ChatGPT)の活用について分析的に報告する。本実践は、AI を使わない英語力(身体化された能力)を、AI を使った能力(AI 拡張的能力)で伸ばし、両者を相互補完する統合的能力を育てて、学習者を自律的な英語ユーザーとすることを目指した。本実践の学生はAI を利用しないライティング課題とAI からのフィードバックを得て自らの英文を改訂する課題の連動で学びを段階的に深めた。学生は、授業満足度、学習成果、授業進捗速度においてかなりの肯定的評価をアンケートで回答した。今後も、教師による英語の語法と文体の指導などと学生によるAI フィードバックからの学びを充実させれば、学習者を現実世界でAI を使いこなしながら英語を執筆する自律的ユーザーとして育てることが期待できる。同時にさらにAI が発展する将来においては、英語ライティング授業も、学習者の知の探求と他者との対話への意欲という、AI が代行し得ない欲求をこれまで以上に育てる必要があるだろう。


なお、この実践報告には二次出版として英語翻訳版も付けています。


Yosuke Yanase (2025) 

Empowering English Learners to Become Autonomous Users through the Use of AI: 

A Reflective Practical Report on Academic English Writing Courses at Kyoto University

The Institute for Liberal Arts and Sciences Bulletin, Kyoto University 8, 29-57

https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/handle/2433/294306




Abstract

This practical report provides a reflective analysis of how the author used generative AI (ChatGPT) in the English Writing-Listening A/B courses at Kyoto University during the first and second semesters of the 2023 academic year and the first semester of 2024. The special goal of the courses was to improve students’ integrated ability of English proficiency by combining their embodied ability with AI-augmented ability, aiming to empower students to become autonomous language users. Through the combined assignments of writing without using AI and then revising that writing based on AI feedback, students deepened their learning in a step-by-step manner. Survey responses indicated notably positive evaluations of course satisfaction, learning outcomes, and lesson pace. By strengthening teacher-led instruction in English usage and style, as well as the ways students engage with AI feedback, educators can foster autonomous learners who skillfully apply AI when composing English texts for real-world settings. However, as AI continues to evolve, English writing courses will need to place even greater emphasis on nurturing students’ motivation for intellectual exploration and dialogue with others--needs that AI cannot fulfill.



***


 この報告は昨年の9月末締切で書いて11月末ぐらいに査読コメントに応えた完成原稿を出したものです。今年度の授業はこの報告で述べた形と大きく変わりませんが、私自身の英語ライティング環境は大きく変わりました。これからもAIの進化と普及とともに英語授業のあり方は大きく変わるでしょう--というより、変わらざるをえません。



2025/05/28

「多様性だけが人類を救うことに、賭けている」ということばで思い出した拙稿(指定討論者発表予稿)

 

私のような人間にとって知識人に出会えることほどの喜びは他にほとんどありません。ましてその人と、たとえオンラインであっても会話をすることができるのは、かけがえのない経験です。

その意味で、私がガメ・オベールさんを知ることができたのは本当にありがたい。ガメさんは私より約20歳若く、日本語を第二言語として使っていますが、私などより、はるかにはるかに広く深く読書をしています。ガメさんの日本語表現力に驚いたことは数え切れません。また博学多識で、ヨット操舵やら飛行機操縦などで自然を経験しているので教えられることばかりです。

そのガメさんは、現在、表現活動の主力を有料版のSubstackに移しています。私は毎日のように届くガメさんの記事で、思考をいろいろ刺激してもらっています。


今朝の記事(「民主制の終焉 1」)では、以下の指摘が目につきました。


いまの自由社会が終焉に瀕しているという事態を解決するための鍵は、思考の足場や、俯瞰の角度、あるいは見過ごしていた細部にあることに気づいた、というよりも、そこに鍵がなければ、もう未来へのドアは永遠に開かないことに気づいている。

多様性だけが人類を救うことに、賭けている。


その記事で、ジョルジョ・アガンベン(Giorgio Agamben)、ジャック・ランシエール(Jacques Ranciere)、ラルフ・ダーレンドルフ(Ralf Dahrendorf)という名前が出てきました。私はアガンベンは少し読んだものの、後の2名の書籍は未読です。ただ、 ジャック・ランシエールは私が指定討論者として参加したシンポジウムで言及されていたので、2冊ほど本だけ買って、恥ずかしながら積読状態になっていることを思い出しました。


そのシンポジウム(国際研究集会2025 教育における他者性 2025年2月8-9日)では、京都大学の倉石一郎先生が「日本の教育論議における〈包摂〉概念の歪みとジャック・ランシエール哲学の可能性の中心」というタイトルで講演し、2006年に全国で初めて高等学校として知的障害者を正規生として受け入れた、大阪府立松原高校の軌跡を取り上げました。

ニューカレドニア大学のファブリス・ワカリー先生は、「オセアニアの教育学におけるイシリネクン、あるいは他者性のベクトルとしての関係性」と題した講演をなさいました。フランスの学校が持つ、専門的かつ分割されたアプローチは、自然環境と人間の環境との間につながりを構築することで意味を見出すことに慣れたカナックやオセアニアの生徒にとっては、障害となることを含めて、その解決の糸口としてドレウ語で「イシリネクン」と呼ばれる「関係の教育法」をご紹介なさいました。豊橋技術科学大学の岩内章太郎先生は、「普遍性の外部に出現する絶対他者」という講演をなさいました。

以下にコピーしたのは、その時の私の指定討論者としての発言です(日仏同時通訳のある学会だったので予稿を提出していました)。まだトランプ関税や民主主義の危機などが大騒ぎになる前でしたが、それでもアメリカをはじめとした「国民国家」はこれからどうなるのだろう、国民国家と資本主義(新自由主義)の合体権力が、新帝国主義に傾斜するなら、その時個々人はその体制にヒビを入れるために何ができるのだろうと予稿を書きながら考えていた時の空気感はなぜか今でも覚えています。

タイトルもつけていない指定討論者発言予稿ですが、ここに掲載しておきます。



***


 私が今回の3名の発表を通して考えさせられたのは、「19世紀・20世紀の西洋近代化を経た21世紀の国民国家は、これからどうなるのか」という問いである。

 国民国家は国境や国籍、言語、文化、歴史、価値などを明確に設定しようとする。その領域内で国民国家が有する法的権力は強力である。19世紀に台頭した諸国民国家は、20世紀にその力をさらに強化してきた。しかし冷戦の終結で「歴史の終わり」を見たと思うまもなく、「歴史の再開」を私たちは目にしている。今日、新自由主義と新帝国主義が世界を再編する状況を、日々肌で感じている。

 グローバリゼーションは国境をまたぐ経済活動だけでなく、人や文化の流れをも加速させている。しかし全世界的に格差も拡大し、多文化主義やリベラリズムが退潮傾向を示している。同時に、金融資本とテクノロジー資本が融合する巨大な力が、新自由主義に憤りを抱く人々(たとえばトランプ支持層)の思いと奇妙に結びつき、例えばアメリカという国民国家が今後どのように動くかも予想がつきがたい。

 こうした状況の中で、21世紀の諸国民国家はいかに生き残り、法的権力をどのように行使していくのか。その中で教育はどのように位置づけられ、どのように機能しうるのか。今回はこの問題意識を共有しながら、3名の先生方の発表に対して、以下のような問いを立てたい。


【倉石先生への質問】

 倉石先生の発表を聞き、包摂と排除という概念について、「誰が・何が、包摂・排除を決めるのか」という点を考えた。包摂・排除「される」側の問題だけでなく、包摂・排除を「行う」主体に目を向けることが重要ではないか。その視点からは、少なくとも二種類の包摂・排除が想定されるように思う。

1. 法による包摂・排除

 たとえば国民国家を典型とするように、明確な境界(国境や国籍)と立法・行政制度をもつ組織が制定する法によって生じる包摂・排除である。移民政策などが典型例として挙げられるだろう。

2. コミュニケーションによる包摂・排除

 もう一つは、ルーマンの議論を念頭に置きつつ、社会をコミュニケーションの総体としてとらえたときに生じる包摂・排除である。社会は究極的には「世界社会」すなわちグローバル社会しかないとされながらも、多様に分化していくなかで、社会の一部における差別やいじめなど、コミュニケーションの作用によって生起する包摂・排除が考えられる。

 倉石先生が示した「政治」の定義──「話す存在として数え上げられる権利をもたない人々が、その権利をもつ人々の中に入り込み、新たな共同体を作ること」──には深く共感する。

そこで質問である。松原高校での実践は、コミュニケーション(あるいは社会)を通じて国民国家の法秩序を撹乱し、同時に再生させる積極的な事例とみなしてよいか。また、コミュニケーションには非言語なものもある限り、包摂と排除の境界線はこれからも更に更新され続けると考えて差し支えないか。私は松原高校の例に希望を見ているのでこのような問いを立てた。


【ワカリー先生への質問】

 ワカリー先生は、「関係性の文化」と呼ばれるものが、国民国家的な管理・中央集権化とは大きく異なる価値観や文化を育む可能性について論じたと理解している。そこでは、個人や集団間の協力の原則、非公式な方略、個人と集団の団結という道徳的価値、網状空間(ネットワーク)におけるつながり、そして個人を一つのエコシステムとして考えるなど、多様な要素が組み合わさった文化が形成されると考えられる。

 さらに、ワカリー先生が提起した「学び」は、生活環境・学習者・芸術が渾然一体となり、創造につながるものだと理解した。これは、標準化され厳密に測定化されるような中央集権型の教育とは対照的なアプローチであると感じる。私自身も実践者として、こうした学びのあり方に深く共感する。

 そこで質問する。ワカリー先生がいう関係性の文化に基づく教育は、現在の新自由主義や新帝国主義が席巻する「世界帝国の中心部」に対して、どのような影響を与えうると考えるか。周縁に位置するとみなされがちな地域や文化から、中心に変化をもたらすことは可能なのだろうか。


【岩内先生への質問】

 最後に岩内先生にうかがいたいのは、レヴィナスが「他者」を語る際に使用する「無限」という用語に関してである。岩内先生の発表では、プラトンのイデア論と比較したうえでフッサールの考え方の優位性が示され、私自身それに大いに納得した。しかし、レヴィナスの「無限」という言葉には個人的にやや違和感がある。また、先生自身が使用する「絶対他者」という表現に含まれる「絶対」という語にも、同様の感覚を覚えている。

 もちろん、レヴィナスがホロコーストの惨禍を念頭に置いていた可能性を考えれば、「無限」が出てくる背景として、究極的な経験が想定されているのかもしれない。しかし私たちは、レヴィナスの内面については推測するしかない立場にある。そこでより重要になるのは、岩内先生自身がどのような経験を想定して「絶対他者」という言葉を使うのかという点である。私には、「無限」や「絶対」といったことばは、ホロコーストのような極限体験が前提となってこそ、初めて切実に発せられる表現のようにも思われる。

 教育の文脈でレヴィナスの「無限」や「絶対他者」といった概念を用いることは有益だろうか。もし有益だとすれば、具体的にはどのような事例において「無限」や「絶対他者」という言葉が相応しいのか、ご意見をうかがいたい。


2025/05/18

国立情報学研究所・教育機関DXシンポの第2回目の登壇の動画とスライド、およびその後の社会の変化を踏まえての長期的視野の必要性

 2024年10月3日(水)に国立情報学研究所の教育機関DXシンポジウムに2回目の登壇をさせていただきました(ここ半年あまり本当に忙しくてブログの整理もままなりませんでした)。


AIの言語生成と人間の言語使用の違いを重視するAI活用:

大学英語ライティング授業の教育学的考察


概要ページ

https://edx.nii.ac.jp/lecture/20241003-03

資料ダウンロードページ

https://www.nii.ac.jp/event/upload/202401003-3_yanase.pdf

発表動画





この発表では、1回目の登壇 以降の実践を受け、「AIを英文完成のためでなく、英語を使いこなす人間の育成のために使う」方向性を示しました。

今、AIの普及を受け、多くの生徒や教師が英語ライティングを学ぶ・教える意義を失いかけています。「AIに任せればいいじゃない」というのがその理由です。こういった状況で、必要なのは、そもそもライティングとはどのような営みであり、それはAIを活用することによりどのように発展するべきかを定めることかと思います。

私の上での主張は、英語ライティングはその作品を完成した時から活動が始まるということです。自分が書いた内容について、さまざまに語りえるからこそ、英語で書く意味も出てくるということです。そういった力を育てるには、英語ライティング教育の枠組みは変わらなければならないと考えています(自らの実践では定められた標準シラバスのため思うように実行できないのがはがゆいところですが)。

先日たまたま目にしたX/Twitterの投稿は、東京大学大学院工学研究科の教員の方が同研究科の授業のほとんどすべてが英語で行われる方針について、自らの思いを書いたものでした。

その中で次のような箇所が目を引きました。

海外に出て専門性の必要な生活をしてみるとわかりますが、語学と言うのは単純に自動翻訳ができれば済むものでは決してなく、人と人とのマルチモーダルなコミュニケーションの総体なので、いろいろな場面で即応できる総合的な能力及び感覚を持っていないと、国際社会で相手にすらされなくなってしまいます。

英語ライティング教育は、他の技能教育と統合されるべきでしょう。ですが、私としても定められた標準シラバスもあり、その方向になかなか動けないのが悔しいところです。


また、上の東大の方針については、「明治以来せっかく日本語で工学を始めとした諸学を学べるようになったのに、その財産を捨てるとは何事だ」といった反応が来るでしょう。上の先生も、そういった議論を十分に自覚しています。

これ[=大学院の授業を英語にする方針]に関しては、僕が決定に関わっているわけではないので何も言う立場にはありませんが、もちろん日本語話者の学生に不利になる可能性や、そもそも国の財源で運営される大学が他国語で授業をやるのはいかがなものかといった疑義に対しても十分に議論をされた結果の強い判断なのだと思いますし、僕自身、国際的なアカデミアや実務・開発の環境に身を置く中で、今後日本語に閉じた授業や研究環境にこもっていては、大学としても、卒業生の価値としても、引いては日本の産業競争力や国力としても、確実にジリ貧になるのは目に見えている(というかもう既になっている)中で、必要不可欠な、もしくは少し遅しすぎるくらいの動きなんだと思います。

私自身も、日本語への翻訳の重要性を認めます。それは国家レベルではとても重要なことです。しかし、多くの科学者やビジネスパーソンあるいは政治家・行政官が、英語をマルチモーダルに使いこなせなければ、日本の国力が危ういとも思っています。この論点については、下の発表では、AIを使って、日本語人の日本語力と英語力をいわば「共進化」させる道筋を描きました。

第15回産業日本語研究会・シンポジウム(テーマ:生成AIの普及で日本語のコミュニケーションがどうかわるのか)の予行演習動画と使用したスライドの公開


先日(2025年5月12日)、東京都は都立学校(小中高)の14万人に生成AIを使わせる方針を発表しました。これだけの大量の若い人たちが、学習にAIを頻繁に使い始めれば、学校教育の姿は変わらざるをえないでしょう。英語においては特にライティングとスピーキング指導の変革は必至です。

そんな大変動の中で、長期的な視野をもって賢明な教育方針を打ち立てることが今の教育関係者の課題だと思います。

2025/05/15

書評『よい教育研究とはなにか--流行と正統への批判的考察』(大修館書店『英語教育』2024年9月号掲載原稿)の公開


以下の書評は、大修館書店の『英語教育』2024年9月号74ページに掲載させていただいた原稿です。ガート・ビースタ(著)、 亘理陽一、神吉宇一、川村 拓也、 南浦涼介(訳) (2024) 『よい教育研究とはなにか--流行と正統への批判的考察』 (明石書店)を、英語教育界がどう読み解けるかという視点から書きました。

編集部の許可を得てここに公開します(このブログでは、その雑誌には掲載しなかった原稿を以前公開しておりました。下記参照)。 

この本が出版してしばらく経ちますが、出版当時の衝撃が薄れ、英語教育界がまた何もなかったかのように、この本などが提起している問題をうやむやにしていることを私は恐れます。



英語教育研究の再生のための必読書


 教育学は英語教育学にとっての最重要隣接分野の1つである。だが、その理解は乏しい。そんな教育学の世界的研究者の入門書的な著書が翻訳出版された。本書は、研究者と実践者が共に学び合える教育研究の可能性を示している。そんな本書を英語教育界はどう読み解くのだろうか。

 日本の英語教育研究者の多くは、世界的流行の影響を受けている―研究者は方法論の厳密さとエビデンス獲得を目指す。自然科学こそが研究の究極のあり方であり、厳密な測定を最重要視する。主観や価値は排除する。研究者の力量は国際的学術誌論文掲載で決まる。教育行政と教室実践を正当化する権威と権力をもつのは論文である―

 だがそのような潮流の中でいくつかの問いが忘れ去られる。「私たちは私たちが大切だとしているものを測っているのか、それとも測っているものを大切にしているのか」。「因果関係で説明できるのは、教育実践のわずか一部にすぎないのではないのか」。「そもそも現在の論文の多くは、研究のための研究ではないのか」。

 日本の英語教育学界は本書を熟読し研究の再生を図れるのか。それともこの教育学的見識を「それってあなたの感想ですよね」とばかりに軽視するのか。英語教育学者と日本語教育学者(そして言語教育に造詣の深い編集者)の共同作業で、高品質の翻訳書として刊行された本書は、この国でどう受容されるのだろうか。



関連記事

柳瀬陽介 (2025) 「実践者論文の意義と原則 ―RCTに基づく科学論文との対比から― 」『KELESジャーナル』第10号 pp. 29-32

https://yanase-yosuke.blogspot.com/2025/05/2025-rct-keles10-pp-29-32.html

「言語使用におけるリスクと責任--身体的で歴史的な実践知」のスライドと予行演習動画の公開

https://yanase-yosuke.blogspot.com/2024/09/blog-post.html

ガート・ビースタ(著)、田中智志・小玉重夫(監訳) (2021)『教育の美しい危うさ』東京大学出版会 /Gert Biesta (2013) The Beautiful Risk of Education. Routledge

https://yanase-yosuke.blogspot.com/2024/08/2021-gert-biesta-2013-beautiful-risk-of.html

ガート・ビースタ(著)、 亘理陽一、神吉宇一、川村 拓也、 南浦涼介(訳) (2024) 『よい教育研究とはなにか--流行と正統への批判的考察』 明石書店

https://yanase-yosuke.blogspot.com/2024/08/2024.html

言語学習についての安直な学問化・科学化と在野の知恵について

https://yanase-yosuke.blogspot.com/2024/05/blog-post.html

柳瀬陽介「教育実践を科学的に再現可能な操作と認識することは,実践と科学の両方を損なう」(シンポジウム:外国語教育研究の再現可能性2021)

https://yanase-yosuke.blogspot.com/2021/09/2021_11.html





2025/05/14

「英学2.0を支援する英語教育研究」の発表予行演習動画とスライド

 

2025年3月15日に「英語コーパス学会ESP研究会」で、「英学2.0を支援する英語教育研究--英語とAIの相乗効果的覇権の時代における考察」という講演をしました。ここではその予行演習動画と当日に配布したスライド資料を公開します。





この講演では日本の近代史を簡単に振り返りながら、AI時代の英語教育について考察しています。近代史からの考察は、第55回中国地区英語教育学会・島根研究大会・特別講演(2024年6月22日)と第60回片平会夏期研究会・特別講演(2024年8月24日)でも行いました(いずれもブログでは未公開)。本日公開する資料はこれら2つの講演資料と重なる部分を多く含んでいます。

本講演の要旨は以下の通りです。
  • 19世紀後半の帝国主義的拡張期に、日本は西洋学問・技術を導入する手段として「英学」を採択し、近代国家としての基盤を形成した。
  • その後、英学は「英語教育」へと名実ともに移行した。
  • だが、21世紀の新帝国主義・新自由主義・AIと英語の相乗効果的覇権を受けて、英語を通じての知的活動(「英学2.0」)の重要性が高まっている。
  • 本講演では、これらの背景をふまえて英語教育研究のあり方について考察する。

近代史を振り返ったと言ったものの、私は歴史については理解が浅いので識者からのご批判を歓迎します。



追記
信頼おける英語教育学史叙述については以下の論文をご参照ください。

江利川春雄 (2022)
「日本における英語教育学と英語教育研究組織の発展史」
『中部地区英語教育学会紀要』51 巻 p. 258-263

2025/05/08

柳瀬陽介 (2025) 「実践者論文の意義と原則 ―RCTに基づく科学論文との対比から― 」『KELESジャーナル』第10号 pp. 29-32

 

この度、以下の論文を『KELESジャーナル』に掲載していただきました。同誌が一般公開されましたので、ここでもお知らせいたします。


実践者論文の意義と原則

―RCTに基づく科学論文との対比から―

柳瀬 陽介

『KELESジャーナル』

2025 年 10 巻 p. 29-32

https://doi.org/10.18989/keles.10.0_29


これは、2024年11月3日の第61回KELESセミナー(「現場教師の実践知を生かすために学会ができること―改めて問い直す実践研究―」)での発表に基づくものです。私は指定討論者として、藤田卓郎先生(福井工業高等専門学校)と吉田達弘先生(兵庫教育大学)と討論しました。

そのシンポジウムの様子は、関西英語教育学会ニューズレター(2025年1月)に丁寧に報告されています(報告者の先生方に感謝します)。

少なくとも登壇者としてはシンポジウム開催の意義を感じましたので、『KELESジャーナル』にも文章を掲載させてくださいとお願いしました。ご承諾くださった学会の皆様、ジャーナル編集に多大な労力を割いていただいた編集委員会の皆様に厚く御礼を申し上げます。


同誌にはたくさんの興味深い論考が掲載されています。私が恣意的に選ぶとしたら、以下のような観点でこれらの記事を連続して読んでみると面白いかもしれません。


■ 時代背景を理解するために

グローバル人材育成策を問い直し、協同と共生の英語教育へ

江利川 春雄   https://doi.org/10.18989/keles.10.0_4


■ 多くの教師が素朴に願っていることを言語化するために

外国語(英語)教育と人格の形成

加賀田 哲也    https://doi.org/10.18989/keles.10.0_37


■ 英語圏・日本語圏での英語教育の実践研究の実績を知るために 

教師の実践研究を支える協働の可能性

藤田 卓郎  https://doi.org/10.18989/keles.10.0_21


■ 英語教育の実践研究がさらに一歩進むために 

KELESはPractitioner Researchをどう位置づける?

~紀要編集の経験から~

吉田 達弘   https://doi.org/10.18989/keles.10.0_25


■ 実践研究の特徴と規範を理解するために 

実践者論文の意義と原則

―RCTに基づく科学論文との対比から―

柳瀬 陽介 https://doi.org/10.18989/keles.10.0_29



ご興味があればぜひ同誌をお読みください。

2025/03/25

カスタムGPT「英文の文法解析」を作りました。AIが文法構造を説明してくれます。

 

ChatGPTの使いやすいカスタム版で、「英文の文法解析」を作りました。入力窓に、文法構造を分析してもらいたい英文を入れると、ChatGPTが文法構造を説明してくれます。高校生を主なユーザーとして設定しています。これを使ってどんどん自分で英語を勉強していってください。


カスタムGPT「英文の文法解析」


 まだ作ったばかりなので不備もあるかもしれませんが、よかったらお試しください。

 以下は、 "Trump told the former prime minister of Canada Justin Trudeau “that he did not believe that the treaty that demarcates the border between the two countries was valid and that he wants to revise the boundary.”" という英文を入力した時の出力例です。



*****


こちらは、「Trump told the former prime minister of Canada Justin Trudeau “that he did not believe that the treaty that demarcates the border between the two countries was valid and that he wants to revise the boundary.”」という英文の構文解析です。すべての単語を含む、わかりやすい構文木を作成し、高校英語で習う文法用語を使って説明します。


【全体構造】

この文は 主節that節(間接話法) から成る複文です。


🌳 構文木(ツリー形式)

[主節]
Trump (S)
└── told (V)
    └── the former prime minister of Canada Justin Trudeau (O)
        └── "that" 節(間接話法の内容)(DO: tellの直接目的語)
            └── that he did not believe (名詞節の先頭 / 同格のthat節)
                └── [he (S) + did not believe (V) + that節 (O)]
                    └── that the treaty that demarcates the border between the two countries was valid
                        └── the treaty (S)
                            └── that demarcates the border between the two countries (関係代名詞の形容詞節)
                                └── that (S)
                                └── demarcates (V)
                                └── the border between the two countries (O)
                        └── was valid (V+C)
            └── and that he wants to revise the boundary (並列するthat節)
                └── he (S)
                └── wants (V)
                └── to revise the boundary (O: to不定詞句)

🧩 文の分解と文法ポイント

① 主節:

Trump told the former prime minister of Canada Justin Trudeau ~

  • Trump(主語/S)

  • told(動詞/V:tellの過去形)

  • the former prime minister of Canada Justin Trudeau(目的語/O)

    • “the former prime minister”に “of Canada” と “Justin Trudeau” がついて詳しく説明されています。


② that節(間接話法の内容):

②-1: that he did not believe that the treaty... was valid

  • he(主語)

  • did not believe(動詞)

  • that節(目的語)

    • このthat節の中にさらに別のthat節が入っている(入れ子構造)

that the treaty that demarcates the border... was valid
  • the treaty(主語)

  • that demarcates the border between the two countries
     → 関係代名詞「that」による形容詞節。主語「the treaty」を修飾。

  • was valid(動詞 + 補語)


②-2: and that he wants to revise the boundary

  • and:等位接続詞。前の「that節」と並列。

  • he(主語)

  • wants(動詞)

  • to revise the boundary(目的語:to不定詞句)


✅ ポイントまとめ(高校生向け)

  • この文は「主節(SVO)」+「that節(間接話法の内容)」で構成されている。

  • 間接話法の中には 二つのthat節 があり、「and」でつながれている。

  • 入れ子構造(ネスト)になっており、「believe」の目的語としてさらに「that the treaty... was valid」という文が入っている。

  • 「the treaty that demarcates...」のように関係代名詞を使って名詞を詳しく説明している。


必要であれば、視覚的な構文図(ツリー図)として図解もできます!欲しい?



追記(2025/03/25)

このアプリの開発を思いついたのは、X (Twitter) で「直読直解を勧める教師は、文法構造でつまずいている生徒にどう対応するのだ!?文法訳読式はやはり必要だ!」といった主張を見たときです。平泉-渡部論争のまとめを書いたときも、直訳重視の英語教育の問題点について改めて考えたので、アプリを作ってみようと思いました。


追記(2025/03/26)

早速このアプリを試していただいた方によりますと、このアプリは通常の garden path sentence (袋小路文=複数の構文解釈を許す構造的曖昧性をもった文)を入れても、きちんと複数の構文解釈を提示してくれるそうです。

ただ、相当に意地の悪い文(笑)--通常挿入するカンマをあえて除去した文--を入れると、一つの解釈(カンマがない場合の通常の解釈)しか提示しなかったそうです。とはいえ、その方がもう一つの可能性を指摘したところ、ちゃんとカンマが入った場合の構文解釈をしなおしたそうです。

AIを使うときの鉄則の一つですが、回答に納得がいかない場合は、AIにさらなる説明を求めてください(人間と違って、AIは何度でも丁寧に説明してくれます)。どうしても納得がゆかない場合は、人間の専門家に尋ねてください。



*****


関連記事

【ご自由にお使いください】中高生の英語ライティング力向上ChatGPTプロンプト/カスタムGPT 

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【2つ追加!】AIを活用した英会話練習のすすめ―9つのChatGPTプロンプト(カスタムGPTs)の紹介

https://yanase-yosuke.blogspot.com/2025/02/ai7chatgptgpts.html

2025/03/14

英語でのsmall talkに慣れるためには、まずactive listeningの方法を学ぼう! -- お勧めYouTube動画の紹介


自由で気軽な英会話 (small talk) に上達するために最初に行うべきことの一つは、よい聞き方 (active listeneing) を学ぶことでしょう。この場合のよい聞き方とは、十分に相手の英語を認識できるといったことよりもむしろ、相手の話に興味をもっていることを、仕草や短い言葉や質問で示すことです。


下に集めたのは、そのような聞き方を学ぶためのYouTube動画です。(1) では英語学習者用の動画を集めました。(2) ではsmall talkで使われる典型的な表現をひたすらに列挙した動画を紹介しています。外国語として英語を話す学習者は、基本的な表現に慣れておいた方がよいので、このような機械的な学習動画もここに掲載しました。(3) は一般人向けの動画ですが、英語学習者としても参考になることが多いはずです。


これらの動画は、OpenAI o1 pro, Gemini 2.0, PerplexityのDeep Researchが推薦したものの中で、私なりに有益だと思ったものです(ちなみにこれらのDeep Researchでは、Perplexityの結果がもっとも役立ちました)。


動画タイトルとURLの下には、Gemini 2.0 Flash Thinking (experimental) が作成した要約をそのまま掲載しています。Google社はGeminiのこのモードをまだ試験的なものとしていますので、これらの要約は完全に信頼できるものではないかもしれません。ですが、とりあえず皆さんが、動画を見るかどうかを決めるための情報にはなるかと思い、ここに掲載します。





(1) FOR ENGLISH LEARNERS


Active Listening in English - Improve English Communication Skills  - Oxford Online English (12:26)  

https://youtu.be/aCutWBCCMaA?si=Jzr9rPufwpK68JCS

The YouTube video titled "Active Listening: How to Understand What People Are Really Saying" provides a lesson on improving English communication skills through active listening. Here's a summary of the key points:

  • Definition: Active listening involves actively participating in a conversation, even when not speaking, by providing verbal and non-verbal feedback to demonstrate engagement and comprehension [00:16], [02:27].

  • Importance: It helps to show understanding and allows the speaker to adjust their communication for better clarity [03:12].

  • Techniques:

    • Use simple affirmative words and sounds like "yeah," "okay," or "uh-huh" [04:18].

    • React emotionally with appropriate intonation, using phrases such as "really?" or "that's great!" [06:03], [07:14].

    • Indicate lack of understanding by saying "what?" or "huh?" and then clarifying the point of confusion [09:43], [10:33].

    • Employ nonverbal cues like facial expressions and gestures [11:06].

The video concludes by encouraging viewers to consider cultural differences in active listening and to practice these techniques to enhance their communication skills [11:40].




Get BETTER at CONVERSATIONS in English... with ACTIVE LISTENING - English with Benen (6:46)

https://youtu.be/ZqBRRT39L3Y?si=2gKtNUferjjC7Zvk


This video offers guidance on how to be a more engaged listener in English conversations. Here's a summary of the key techniques:

  • Use verbal cues: Employ sounds like "mm-hmm" or "aha" to signal that you are paying attention [00:36].

  • Incorporate simple words: Show your interest by using words such as "oh," "really," or "okay" [01:07].

  • Echo key words: Repeat important words or concepts that the speaker has mentioned. For instance, if someone says they are traveling to Greece, you could respond with "Greece? Wow!" [01:29].

  • Form echo questions: Create brief questions by using the auxiliary verb and the subject of the sentence. For example, if someone says, "I haven't tried Chinese food before," you could ask, "Haven't you?" [02:19]. If there is no auxiliary verb, use "do" in the appropriate tense, such as "Did you?" or "Do you?" [03:37].




5 Phrases For Active Listening - Learn To Converse Like A Native - English For IT (3:48)

https://youtu.be/KmLKazPdUns?si=BZaIe4BveNhX7i5C


This video provides five English phrases to help keep conversations flowing:

  • "Oh, wow": This can be used when someone shares something interesting. Remember to use the right intonation [00:50].

  • "Really": This shows interest or surprise and can also be used sarcastically [01:34].

  • "I know, right": Use this to express complete agreement with the speaker [02:10].

  • "Tell me more": This encourages the speaker to continue their story and provide more details [02:45].

  • "And then what happened": Similar to "tell me more," this phrase shows your interest in hearing the rest of the story [03:08].

The video also highlights the importance of using enthusiastic intonation when using these phrases [03:37].


Five Ways to Show Active Listening During Conversations in English - English with Kim (10:35)

https://youtu.be/UaWEAYooP-U?si=zUsQJfLYVUCcAp6U

Active listening, a crucial communication skill in American culture, is the focus of this video. It emphasizes the importance of demonstrating engagement, especially for those who are not native English speakers.

Here are the key techniques discussed in the video:

  • Eye contact: Maintaining relaxed eye contact signals attentiveness [02:05].

  • Nodding: Occasional nods indicate agreement and encourage the speaker to continue [03:35].

  • Facial expressions: Reacting with appropriate facial expressions shows engagement and mirrors the speaker's emotions [05:02].

  • Rejoinders: Using short sounds like "mm-hmm" or "aha" encourages the speaker to keep talking [06:37].

  • Clarifying questions: Asking questions to clarify shows you are paying attention and encourages deeper conversation [08:39].

You can watch the full video here: Active Listening in the USA



SMALL TALK | How to keep a conversation going in English - mmmEnglish (13:04)

https://youtu.be/blUuMcKuzQE?si=LuxQ69P24QYnE4Nw


This video by mmmEnglish offers seven helpful tips for enhancing your English conversation skills, particularly in small talk situations:

  • Identify your preferred topics: Consider activities, hobbies, projects, and ideas that you find enjoyable to discuss [02:19].

  • Employ open-ended questions: Utilize "wh" questions (who, what, where, when, why, how, which) to encourage more elaborate responses [04:10].

  • Incorporate question tags: Append short tags to the end of statements to invite the other person to share their perspective [05:36].

  • Demonstrate active listening: Use gestures, brief affirmations, echo questions, and paraphrasing to show your engagement [06:46].

  • Embrace moments of silence: Allow the other person time to contribute to the conversation [10:21].

  • Engage in regular practice: Seek opportunities to converse with native English speakers whenever possible [11:04].

  • Learn useful expressions: Familiarize yourself with phrases for initiating and concluding conversations [11:43].


Small Talk | Useful Phrases & Questions for Everyday Conversation - mmmEnglish (7:24)

https://youtu.be/UcVNwvpQm8A?si=k1q6C7UgtNXPM0-g

This video, the second in a series on small talk, offers essential phrases and expressions for effective English conversations [00:08].

Here is a summary of the key points:

  • Discussing News and Current Events: The video suggests initiating such discussions with the phrase "Did you hear about...?" while advising against controversial topics like politics or religion [01:18]. It also recommends following up with questions such as "What do you think about that?" to encourage the other person to share their opinions [02:31].

  • Initiating Conversations at Social or Networking Events: To connect with others in these settings, the video proposes asking "How do you know...?" if there is a mutual acquaintance [03:30]. Offering compliments, such as "I love that dress," is also presented as an effective way to start a conversation [03:51].

  • Politely Concluding Conversations: In a work environment, the phrase "Well, I'd better get back to work" is suggested [05:29]. For social events, "I'd better keep moving" is offered as a polite way to end a conversation [05:45]. Additionally, excusing oneself by mentioning that you are looking for someone or something is also recommended [05:51].

The video concludes by emphasizing the importance of practicing these phrases to enhance one's English conversation proficiency [06:45].


5 Keys to Successful Small Talk in English and Why it Matters - English Etc. With Julie (9:39)

https://youtu.be/j9CVGQJvROs?si=DhefmKIh95gnKGDB

This video delves into the significance of small talk and offers five key principles for successful engagement in such conversations.

Here's a concise breakdown of the video's content:

  • The Value of Small Talk: Engaging in small talk is essential for fostering connections, making favorable first impressions, bridging social silences, and interpreting social cues [00:21].

  • Cultivate Openness and Curiosity: Demonstrate genuine interest in others by showing curiosity about their perspectives and experiences [02:32].

  • Maintain a Light and Positive Tone: Initiate conversations with lighthearted topics to facilitate a comfortable transition into more substantive discussions, thereby establishing a positive atmosphere [03:35].

  • Practice Active Listening: Actively participate and respond appropriately to indicate sincere interest, even in seemingly trivial exchanges [05:01].

  • Employ Open-Ended Questions: Encourage more elaborate responses by asking questions that require more than a simple "yes" or "no" [05:39].

  • Identify Common Ground: Establish rapport by seeking shared interests or experiences with the person you are conversing with [07:01].




(2) REMEMBERING TYPICAL PHRASES

100 Small Talk Questions and Answers - Real English Conversation (30:44)

https://youtu.be/8vPXIsAqmjg?si=OG2mflnyAVuNaRQC


500 Small Talk Effective English Speaking Practices for Beginners || Improve Listening Skills (2:05:34)

https://youtu.be/dRXmsTUYYJE?si=Chnd6C3Ln_lAZ748



(3) FOR THE GENERAL PUBLIC

Listen Better: 5 Essential Phrases for Active/Reflective Listening (7:10)

https://youtu.be/tgLfz3dh5UE?si=slht3bBEE08SFisb

This video explains the concept of reflective listening, also known as active listening or looping back, and how it can be beneficial in daily life [00:00]. Reflective listening involves restating what someone has said to ensure understanding, demonstrate attentiveness, and encourage further sharing of feelings [00:54].

The video suggests using five key phrases when practicing reflective listening:

  • "You are..." [02:56]

  • "It sounds like..." [04:05]

  • "It seems..." [04:25]

  • "What I'm hearing is..." [04:56]

  • "You seem to be saying..." [05:25]

The video highlights the importance of using these phrases with genuine intent to listen and show care for others, rather than merely employing them as a technique [01:42]. The main idea is to concentrate on the speaker's words and emotions, using the provided phrases as a framework to articulate your observations [03:25].



6 Winning Phrases for Active Listening so You Can Become a Better Listener at Work - Kara Ronin (10:02)

https://youtu.be/QRwmVKqtZH4?si=Q5QzISHhroFAxCWW

This video by Kara Ronin discusses active listening and how to improve it, particularly in the workplace.

Key takeaways from the video include:

  • Active listening is essential for building strong relationships both at work and in personal life [00:00]. It demonstrates engagement and understanding towards the speaker [00:26].

  • Key steps to practice active listening involve:

    • Stopping talking to provide the speaker with ample time and space [01:12].

    • Focusing intently on the speaker by minimizing distractions and maintaining eye contact [03:01].

    • Listening with the primary goal of understanding the speaker's message [04:36].

  • The video provides six helpful phrases to facilitate active listening:

    • "So what you're saying is..." [07:13]

    • "It seems like you're feeling..." [07:26]

    • "What I hear is that..." [07:34]

    • "Let me understand what you're saying..." [08:16]

    • "I want to make sure I clearly understand..." [08:30]

    • "It must be/feel..." [08:42]

  • Using these phrases helps in reiterating the speaker's points, ensuring clarity, and showing attentiveness [06:48, 09:27].

For more details, you can watch the full video at Active Listening: How To Be A Better Listener At Work.





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ChatGPT登場半年後に私が考えていたこと:2023年『英語教育増刊号』(大修館書店)の原稿を転載

以下の原稿は、私が2023年の5月に執筆し、その年の夏の『英語教育増刊号』(大修館書店)に掲載していただいた「ChatGPTは孫悟空」という記事です。編集部の許可を得て、ここに転載します(ただし脚注は省略)。 記事の意図は、ChatGPTが登場して日が浅い頃でしたので、まずは比喩...