2023年5月22日(日)10:00-13:00の日本英文学会第95回大会シンポジウム第12部門(12階1201教室)は、「英語教育物語を紡ぐ:ナラティブが照らす学びと教えの当事者たち」です。司会・講師は坂本南美先生、その他の講師は、和田あずさ先生、原口治先生、斎藤兆史先生と私です。
私の発表題目は「英語ユーザーへのインタビュープロジェクトの実践から」です。
私が使うスライド(PDF版)はここからダウンロードすることができます。
この記事の一番下には、そのスライドを使った解説動画を掲載しています。動画は私が本日(=発表の前日)に予行練習として録画したものです。当日の20分という時間制限を無視して、とりあえず言いたいことを述べ約46分の動画となりました。ご興味のある方は御覧ください。
この下(動画の上)に掲載しているのは、当日の印刷配布資料の内容(=発表の骨子)です。
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英語ユーザーへのインタビュープロジェクトの実践から
1. はじめに
- 京都大学自律的ユーザーへのインタビュー (https://www.i-arrc.k.kyoto-u.ac.jp/english/interviews_jp)
2. 本発表の前提知識
2.1 規範様式と物語様式
- 1つの命題が真であることを論理的-科学的に論証することが規範となった近代
2.2 ウィトゲンシュタイン (W) の前期と後期
- 前期:極限まで論理的で科学的な言語のあり方を構想(同時にその限界を示唆)
- 後期:言語は特定の生活形式を共有する言語ゲームにおいて理解・考察されるべき
2.3 教授法比較実験研究・インタビュー質的研究・インタビュー全文公開実践の違い
- 量的研究と質的研究は共に研究者という単独の支配的な認識主体に基づく
- インタビュー全文公開実践は、複数の認識主体を働かせる探究的実践
3. W哲学からの認識論的考察
- 量的研究と前期W哲学の共通点:観察される世界には属しない認識主体
- 質的研究と前期W哲学の共通点:認識主体がたとえ自らを観察・記述したとしても、それが支配的な認識主体であることは変わらない
- インタビュー全文公開実践と後期W哲学の共通点:話し手・聞き手・読み手という複数の認識主体
- 後期W哲学は前期W哲学の堕落ではない:実践世界の事態は、家族的類似性で連綿とつながる
- 実践的記述は論理学を規範とするべきではない:観察・記述の対象は相互独立していない
- 言語の意味は、普遍的な論理空間における位置ではなく、それぞれの言語ゲーム実践において定まる
- 後期W哲学は、前期W哲学の特殊性を明らかにした
- 多文脈的で流動的な意味世界に普遍的な認識主体を求めない
- 意味世界を見るために「普遍的な真理の認識」という眼鏡を外す
4. 探究的実践についての発展的考察
- 探究的実践 (Exploratory Practice) はすべての当事者の行為主体性と権力拡充を尊重
- 探究的実践者は、超越的で特権的な観察・記述者とならず、実践共同体の中に留まる
- インタビュー全文公開は、結末を予測できない世界における「行為」である
5. おわりに
- 実践を思考する英語教育関係者は、研究という特権的な営みをどう定義すべきか