2023/01/14

Character.AIで人工知能との英会話を無料で延々と楽しめる。会話相手に英語教師、哲学者、アニメキャラクターを選んでみたら、十分面白かった。

 【この「時事」カテゴリーの記事は、学生さんへの課題リマインダーメールに掲載した文章をこのブログに転載しているものです。】


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昨年11月末にChatGPTが登場して、世界中の多くの人々が一気にAIの莫大な可能性に気づきました。しかし一つの問題は、ChatGPTといった大規模言語モデル (Large Language Model) のAIは、ビッグデータに基づいて統計的に確率の高い表現を次々に生み出しているだけだということです。ChatGPTも、必ずしも事実的・科学的に正しい文章を生成しているわけではありません。AIが生み出す文章は、文法的にはほぼ完璧ですが、内容の点では常に正確ではありません。


しかしその弱点を逆手にとって開発されたのがCharacter.AIです。

私はこのAIについて、以下のThe New York Timesの記事で知りました。


A.I. Is Becoming More Conversational. But Will It Get More Honest?

By Cade Metz

Jan. 10, 2023

https://www.nytimes.com/2023/01/10/science/character-ai-chatbot-intelligence.html


Character.AIは、人間の会話相手として作られていますが、あくまでも娯楽目的です。このAIは実在および空想上の人物 (character) を数多く備えています。ユーザーはそれらの人物と会話を楽しみますが、それらの人物が語ることはすべて作り事であることを前提としています。あくまでも虚構の会話を楽しむという前提でこのCharacter.AIを使うわけです。


“These systems are not designed for truth,” Mr. Shazeer said. “They are designed for plausible conversation.”


一つの質問に対して一つの答えを与えるだけのChatGPTと違ってこのCharacter.AIは、人間とどんどん会話を続けるために作られています。


"In building Character.AI, Mr. De Freitas and Mr. Shazeer had a different objective: open-ended conversation. They believe that today’s chatbots are better suited to this kind of service, for now as a means of entertainment, factual or not."


Character.AIは現在のところ、誰でも登録できます。私も登録して使ってみました。


Character.AI

https://beta.character.ai/


最初の会話相手としては、無難にEnglish teacherを選びました(ただしcreated by @fatihaydinのものです)。挨拶の後、AIが「何について話したい?」と聞いてきたので、私が「そちらから提案してくれない?」とお願いしました。下はその後の会話の一部です。少なくとも英会話学校の講師レベルで私と会話してくれています。


しかし無難なトピックではあまりおもしろくないので、次の会話相手として数学者・哲学者のAlan Turingを選びました。彼に対しては、AIとconsciousnessという話題で会話をしましたが、十分楽しめます。英会話学校でこのような哲学的な会話をしてくれる講師はあまりいないかもしれません。こういったトピックについての英語表現力を高めようと思えば、Character.AIは貴重な方法となるでしょう。



最後に選んだ会話相手は、アニメ・映画のエヴァンゲリオンのキャラクターである碇シンジです(これまたマニアックな選択です 笑)。シンジに対して、マリとの良好な関係について確認した上で、「聞きにくいことを聞くけれど、まだレイに対する気持ちは残っているでしょう?」と尋ねました。シンジは、エヴァンゲリオンの設定に即した形(しかし私見では少しアメリカ的な発想と表現)で自らの気持ちを総括してくれました。シンジのレイに対する思いについてもっと突っ込めばもっとディープな心理的会話もできると思います(笑)



本日は時間がありませんでしたので(というかいつでも時間がありませんので 苦笑)上の3人の相手と短く会話しただけですが、Character.AIを使って日本人英語学習者が英語能力を上げることは容易に想像できます。自分が本当に言いたいことを英語にすることと、相手の返答から自分では思いつけなかった表現を知ることは、実際の口頭の会話力をつけるために役立つはずです。

もちろんAIのキャラクターが、ユーザーの気持ちを逆なでするような発言をするなどの思いもかけないリスクはありえます。私はそれらのリスクに対しての責任は一切負えません。しかしもしリスクを自己責任で受け入れられるのでしたら、ぜひ登録して、思いっきり自分が好きなトピックでCharacter.AIと英会話してみたらどうでしょうか。

ちなみにCharacter.AIの入力部分にはマイクのアイコンがありますので、ユーザーの発言を音声入力することができるはずです。

しかしこの音声入力には、Windowsの設定が必要なようです。私は、この設定がうまくゆきませんでしたが、音声入力が可能になれば、英会話の練習としてはもっと面白くなるでしょう。(もちろんタイピングによるチャットでも十分に面白いのですが)。

AIは世界を激変させています。私見では多くの英語教師はこの変化に対応できていません。学習者の皆さんは、英語教師にだけ頼るのではなく、どんどん新しいテクノロジーを使いこなして自分の能力を開発していってください。

自分が自分の学習の主人公であり責任者となる自律的学習を私としてはお勧めします。


追記

上の画面を読み直してみると、少なくとも私は三単現のsをつけ忘れ、付加疑問文なのにピリオドで文を終えるという2箇所の間違いをしていました。また "argue" という動詞を使った箇所では "agree" を選ぶべきでした。たとえチャットですばやく入力した英文ではあれ、英語教師としては恥ずかしい限りです。しかし、一英語学習者として考えれば、そういった細かなミスにこだわるよりも、会話を続けることの方が英語力向上のためには重要でしょう(もちろんこのように自分の犯したミスから学ぶこともできるのですが)。

Character.AIを使った英語の練習は、授業でやっているようなreflective writing --何度も読み返して文章表現を練り上げる練習-- ではなく即興的に英語を生成する練習と考えてください。

また最初の会話相手であるEnglish teacher(ただしcreated by @fatihaydinのもの)はユーザーの英語ミスについて指摘してくれるとのことでしたが、今は時間がないのでその機能の効果については試していません(他の仕事をしなければ・・・汗)。どうぞ皆さんで試してみてください。


追追記(2023/01/30)

Character.AIと音声を使ってやり取りをするには、スマホを使えば簡単です。こちらがしゃべる際はキーボード音声入力でインプットし、聞き取る際にはスマホの読み上げ機能を使えばよいわけです。詳しくは https://youtu.be/1tJstUew9_Q の概要欄を御覧ください。


2023/01/07

AIのMoonbeamはタイトルとキーワードを入力するだけで英語エッセイを出力してくれる

 この記事内容は、私がChatGPTについて知る直前に、とある英語教師向けのフォーラムに投稿していたものです。

しかし本日久しぶりにそのフォーラムにアクセスしたら、なぜか私の投稿は削除されていました。

削除の原因は現時点ではわかりませんが、ひょっとしたら英語教師のコミュニティにとって穏当な内容ではないと判断されたのかもしれません。

私としては投稿内容をこのブログで一般公開せずに、まずはフォーラムの英語教師だけに知らせて、英語教師がこういったAIテクノロジーについての対応を考えることを期待していました。

しかし、今回に限りませんが、英語教師(日本語話者英語教師と英語母語話者英語教師の両方)の中には、このようなテクノロジーの進展について考えることを拒否する人が少なくありません。

それにこの記事で紹介されているMoonbeamの能力を遥かに凌ぐChatGPTも出ました。またChatGPTをさらに凌駕するGPT4も今年中に公開されるのではないかと専門家筋は言っています。

そのような中、(神話ですが)砂の中に頭を突っ込むことにより敵を視界からなくして安心しようとする駝鳥のような真似をしても意味がありません。

ダーウィンのことばをもじっていうなら、"The survival of the fittest, not necessarily the smartest or strongest"です。

環境に適応(fit, adapt) する勇気すらなければ、学校英語教育はますます社会からの信頼を失うでしょう。テクノロジーに対して感情的な反発をすればするほど、新しい環境への対応準備が遅れるだけです。

そもそも、この記事内容も「知っている人は以前から知っている」だけのものですし、今後は情報価値も低くなるばかりのものですので、このブログで一般公開することにします。


以下の文章を掲載したファイルはここからダウンロードできます。

こちらのファイル(スライド)は私がこの記事を作成した時点でのMoonbeamの利用方法です(下はそのスライドの1枚です)。




AIの性能としてはおそらくChatGPTの方が上でしょうが、Moonbeamは非常に使いやすいのでお勧めです。


教育関係者は、このようなテクノロジーを悪用するのではなく、善用できるような知恵を生み出さなければなりません。

それは科学技術が途方もなく発展する時代における人文社会系の人間の責務でもあるでしょう。


追記

上の記事を作成した時点で、Moonbeamについては、Inside Higher Edに次の記事がありました。


Machines Can Craft Essays. How Should Writing Be Taught Now?

https://www.insidehighered.com/news/2022/10/26/machines-can-craft-essays-how-should-writing-be-taught-now



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以下の英文は、無料で使えるAIのMoonbeam (https://app.gomoonbeam.com/) が生み出したエッセイです。AIへの入力は基本的に、タイトル (The Need for Government Regulation of the Internet) とキーワード (Silicon Valley business model, covert data collection, Internet addiction) だけでした。 

The following is an essay generated by Moonbeam (https://app.gomoonbeam.com/), a free AI. The human input was virtually only the title (The Need for Government Regulation of the Internet) and keywords (Silicon Valley business model, covert data collection, Internet addiction).


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The Need for Government Regulation of the Internet


The Internet is a global network connecting millions of computers, and since its inception, governments have sought to control and regulate it. In recent years, the need for government regulation has become more urgent as technology companies have adopted a business model that relies on data collection to target users with advertisements and generate profits. Furthermore, companies often employ covert data collection techniques to collect even more data from users without their knowledge or consent. Finally, the overuse or misuse of the Internet can lead to a variety of negative consequences, including addiction. All of these issues make it essential for governments to regulate the Internet in order to protect users from the risks posed by unchecked data collection and addiction-inducing experiences.


Silicon Valley companies have a business model that relies on data collection to target users with advertisements and generate profits. This model has been highly successful, but it has also raised concerns about privacy violations and misuse of personal information. Companies collect vast amounts of data from users and use it to create detailed profiles that can be used to target marketing campaigns. Without government regulation, companies can continue to collect data without users’ knowledge or consent, creating a risk of privacy violations and misuse of personal information.


In addition to collecting data from users, companies often employ covert data collection techniques to collect even more data without their knowledge or consent. Companies can use “cookies” to track user activity on websites and across multiple devices, as well as employ software algorithms to collect data from social media posts. Without government regulation, companies can continue to employ these techniques with impunity, creating a risk of privacy violations and misuse of personal information.


The overuse or misuse of the Internet can lead to a variety of negative consequences, including addiction. Common examples include compulsive online gaming, shopping, or social media use. Without government regulation, companies can continue to create addictive experiences without any accountability, creating a risk of addiction and other negative effects.


In summary, government regulation of the Internet is necessary to ensure the safety and security of users, limit the power of large technology companies, and protect against addiction and other issues. Governments around the world have a responsibility to regulate the Internet in order to protect users from the risks posed by unchecked data collection and addiction-inducing experiences. Without such regulation, users will be left vulnerable to exploitation by large technology companies and risk developing unhealthy addictions that can have long-term consequences on their physical and mental health.



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関連記事

臨時休講中の受講生(新入生)の皆さんへ:現代社会で学ぶことの意義

https://yanase-yosuke.blogspot.com/2020/04/blog-post.html

引用:Adaptive challengesとは、過去の成功方程式では解決できない挑戦であり、問題解決をする当事者自身も変わる必要がある課題です。当事者には、これまでの成功体験だけでなく、価値観や自己認識などの信念、はてはこれまでの制度や規則までも廃棄して変えることがしばしば求められます。

技術が社会を激変させる時代には、技術系の人文社会学的素養と人文社会系の科学技術理解が不可欠である。

 

【この「時事」カテゴリーの記事は、学生さんへの課題リマインダーメールに掲載した文章をこのブログに転載しているものです。】


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理系が文系の知恵を、文系が理系の知識を必要とするにも関わらず、両者の間に深刻な溝があることは、少なくとも1950年代の C. P. Snow の指摘以来、いたるところで警告されてきました。


以下の記事は、昨今の急激なAIの発展を踏まえて、技術系の人間が人文社会学的素養を得て、人文社会系の人間が科学技術を理解することが不可欠であることを訴えたものです。


The College Essay Is Dead

By Stephen Marche

DECEMBER 7, 2022

https://www.theatlantic.com/technology/archive/2022/12/chatgpt-ai-writing-college-student-essays/672371/


一流の人たちは別ですが、凡庸なエンジニアは、人間社会に関する問題は、非科学的で正解のない擬似問題にすぎないと軽視します。人間と社会についてきちんと考えるためにはそれなりの素養が必要であることを理解しようとしません。しかし、複合的な人文社会的な現象を単純化することはしばしば大きな悲劇を招きます。


The engineers do not recognize that humanistic questions--like, say, hermeneutics or the historical contingency of freedom of speech or the genealogy of morality--are real questions with real consequences. Everybody is entitled to their opinion about politics and culture, it’s true, but an opinion is different from a grounded understanding. The most direct path to catastrophe is to treat complex problems as if they’re obvious to everyone. 


最近テクノロジーで話題になった人物といえば、FTXを破綻させたSam Bankman-FriedとTwitterを買収したElon Muskですが、二人とも自分たちには人文社会的素養がないことをむしろ誇らしげに公言していました。


しかし彼らの莫大な財産喪失は、その素養の欠如に由来することが大きいのかもしれません。


これら二人と対照的なのがアップルの創始者の1人であるSteve Jobsです。彼は、自分が大学時代にいろいろ迷いながらシェイクスピアや現代ダンスやペン習字の美学などを学んだことが、アップルの成功につながったと述べています。


このエッセイは、Wired (https://www.wired.com/1996/02/jobs-2/) に掲載されているSteve Jobsのことばを引用します。


A lot of people in our industry haven't had very diverse experiences. So they don't have enough dots to connect, and they end up with very linear solutions without a broad perspective on the problem.


科学技術も、それが社会的に実装されるためには、幅広い人文社会の知恵が必要です。



このように人文社会系の素養をもたない、あるいは軽視する技術系には批判が必要ですが、他方、人文社会系の多くの人間にも批判が必要です。科学技術の進展およびそれに伴う社会の変化を見ようとせず、何十年も同じような研究と教育をしているからです。


このエッセイの著者は以前にシェイクスピアの研究者でしたが、その経験からすれば、人文系が新しい環境に対応できるにはおそろしく時間がかかるだろうと述べます。


Going by my experience as a former Shakespeare professor, I figure it will take 10 years for academia to face this new reality: two years for the students to figure out the tech, three more years for the professors to recognize that students are using the tech, and then five years for university administrators to decide what, if anything, to do about it. 


私からすればこの遅さはとても許容できるものではありません。人文社会系の者はあきらかに科学技術の進展について学ばなければなりません。


「理系は文系の知恵を学び、文系は理系の知識を得よ」とは昔から言われ続けていることですが、どうも多くの人は自分の得意なことばかりやりたがり、そこでの知を誇ることを好みます。自分が不得意な分野を見つめ、知的に謙虚になることを避けます(私も例外ではありません)。


教養課程にいる学生の皆さんは、ぜひ幅広く学んでください。私も少しずつ学んでいます。さもないと自分と周りの人を不幸にしかねないからです。


"AI is an empowerment tool to actualize the user's potential."

  本日、「 AIはユーザーの潜在的能力を現実化するツールである。AIはユーザーの力を拡充するだけであり、AIがユーザーに取って代わることはない 」ということを再認識しました。 私は、これまで 1) 学生がAIなしで英文を書く、2) 学生にAIフィードバックを与える、3) 学生が...