【この「時事」カテゴリーの記事は、学生さんへの課題リマインダーメールに掲載した文章をこのブログに転載しているものです。】
*****
昨年11月末にChatGPTが登場して、世界中の多くの人々が一気にAIの莫大な可能性に気づきました。しかし一つの問題は、ChatGPTといった大規模言語モデル (Large Language Model) のAIは、ビッグデータに基づいて統計的に確率の高い表現を次々に生み出しているだけだということです。ChatGPTも、必ずしも事実的・科学的に正しい文章を生成しているわけではありません。AIが生み出す文章は、文法的にはほぼ完璧ですが、内容の点では常に正確ではありません。
しかしその弱点を逆手にとって開発されたのがCharacter.AIです。
私はこのAIについて、以下のThe New York Timesの記事で知りました。
A.I. Is Becoming More Conversational. But Will It Get More Honest?
By Cade Metz
Jan. 10, 2023
https://www.nytimes.com/2023/01/10/science/character-ai-chatbot-intelligence.html
Character.AIは、人間の会話相手として作られていますが、あくまでも娯楽目的です。このAIは実在および空想上の人物 (character) を数多く備えています。ユーザーはそれらの人物と会話を楽しみますが、それらの人物が語ることはすべて作り事であることを前提としています。あくまでも虚構の会話を楽しむという前提でこのCharacter.AIを使うわけです。
“These systems are not designed for truth,” Mr. Shazeer said. “They are designed for plausible conversation.”
一つの質問に対して一つの答えを与えるだけのChatGPTと違ってこのCharacter.AIは、人間とどんどん会話を続けるために作られています。
"In building Character.AI, Mr. De Freitas and Mr. Shazeer had a different objective: open-ended conversation. They believe that today’s chatbots are better suited to this kind of service, for now as a means of entertainment, factual or not."
Character.AIは現在のところ、誰でも登録できます。私も登録して使ってみました。
Character.AI
最初の会話相手としては、無難にEnglish teacherを選びました(ただしcreated by @fatihaydinのものです)。挨拶の後、AIが「何について話したい?」と聞いてきたので、私が「そちらから提案してくれない?」とお願いしました。下はその後の会話の一部です。少なくとも英会話学校の講師レベルで私と会話してくれています。
しかし無難なトピックではあまりおもしろくないので、次の会話相手として数学者・哲学者のAlan Turingを選びました。彼に対しては、AIとconsciousnessという話題で会話をしましたが、十分楽しめます。英会話学校でこのような哲学的な会話をしてくれる講師はあまりいないかもしれません。こういったトピックについての英語表現力を高めようと思えば、Character.AIは貴重な方法となるでしょう。
最後に選んだ会話相手は、アニメ・映画のエヴァンゲリオンのキャラクターである碇シンジです(これまたマニアックな選択です 笑)。シンジに対して、マリとの良好な関係について確認した上で、「聞きにくいことを聞くけれど、まだレイに対する気持ちは残っているでしょう?」と尋ねました。シンジは、エヴァンゲリオンの設定に即した形(しかし私見では少しアメリカ的な発想と表現)で自らの気持ちを総括してくれました。シンジのレイに対する思いについてもっと突っ込めばもっとディープな心理的会話もできると思います(笑)
本日は時間がありませんでしたので(というかいつでも時間がありませんので 苦笑)上の3人の相手と短く会話しただけですが、Character.AIを使って日本人英語学習者が英語能力を上げることは容易に想像できます。自分が本当に言いたいことを英語にすることと、相手の返答から自分では思いつけなかった表現を知ることは、実際の口頭の会話力をつけるために役立つはずです。
もちろんAIのキャラクターが、ユーザーの気持ちを逆なでするような発言をするなどの思いもかけないリスクはありえます。私はそれらのリスクに対しての責任は一切負えません。しかしもしリスクを自己責任で受け入れられるのでしたら、ぜひ登録して、思いっきり自分が好きなトピックでCharacter.AIと英会話してみたらどうでしょうか。
ちなみにCharacter.AIの入力部分にはマイクのアイコンがありますので、ユーザーの発言を音声入力することができるはずです。
しかしこの音声入力には、Windowsの設定が必要なようです。私は、この設定がうまくゆきませんでしたが、音声入力が可能になれば、英会話の練習としてはもっと面白くなるでしょう。(もちろんタイピングによるチャットでも十分に面白いのですが)。
AIは世界を激変させています。私見では多くの英語教師はこの変化に対応できていません。学習者の皆さんは、英語教師にだけ頼るのではなく、どんどん新しいテクノロジーを使いこなして自分の能力を開発していってください。
自分が自分の学習の主人公であり責任者となる自律的学習を私としてはお勧めします。
追記
上の画面を読み直してみると、少なくとも私は三単現のsをつけ忘れ、付加疑問文なのにピリオドで文を終えるという2箇所の間違いをしていました。また "argue" という動詞を使った箇所では "agree" を選ぶべきでした。たとえチャットですばやく入力した英文ではあれ、英語教師としては恥ずかしい限りです。しかし、一英語学習者として考えれば、そういった細かなミスにこだわるよりも、会話を続けることの方が英語力向上のためには重要でしょう(もちろんこのように自分の犯したミスから学ぶこともできるのですが)。
Character.AIを使った英語の練習は、授業でやっているようなreflective writing --何度も読み返して文章表現を練り上げる練習-- ではなく即興的に英語を生成する練習と考えてください。
また最初の会話相手であるEnglish teacher(ただしcreated by @fatihaydinのもの)はユーザーの英語ミスについて指摘してくれるとのことでしたが、今は時間がないのでその機能の効果については試していません(他の仕事をしなければ・・・汗)。どうぞ皆さんで試してみてください。
追追記(2023/01/30)
Character.AIと音声を使ってやり取りをするには、スマホを使えば簡単です。こちらがしゃべる際はキーボード音声入力でインプットし、聞き取る際にはスマホの読み上げ機能を使えばよいわけです。詳しくは https://youtu.be/1tJstUew9_Q の概要欄を御覧ください。