2026/06/06

Claude Cowork × Obsidian で「第二の脳」をつくる:非エンジニアのための安全な始め方

Claude Coworkに私が感激している大きな理由はObsidianとの連携です。これまで散らばっていたメモ、研究ノート、ブログ記事、論文などの情報が自分専用の知識ベースの中で自動的にリンク結合します。さらにObsidian Web Clipper (Chrome拡張機能)を使えば、気に入ったウェブ上の情報を即座にマークダウンファイルにして知識ベースに収納できます。「第二の脳」というニックネームも大げさではないと思えます。

以下の記事は、Claude Cowork × Obsidian で「第二の脳」をつくることの意義や方法などをまとめた記事です。この記事は、実験を兼ねて、すべてAIに作らせました。

私がやったことは大きくは次の二つです。

(1) AIと対話しながらのプロンプト作り:記事を書くプロンプトをまず自分が作り、それをAI (Claude)に改善させるという過程を数回重ねる。自分が最後に作る最初のプロンプトは、"goal, prerequisite, source, task, constraint, success-criteria, output-format, output-destination"といったプロンプトの重要要素を意識しながらマークダウン記法で作る。そのプロンプトの末尾には、"First, analyze this prompt, propose improvements, and ask keys." といった指示を入れて、これによりAIとの対話を始める。対話ではAIの該博な知識を活かして自分の意図を明確に実現するようなプロンプトを作り出す。

(2) AIにすぐにブログにコピー・ペーストできる記事を書かせる:完成したプロンプトを新しいセッションに入れ、AIにHTMLファイルを作らせる。成果物を見てAIに注文を付けて何度か書き直させる。書き直させるプロンプトにも、末尾に "Ask me clarifying questions before writing anything else." などと書いて、自分のプロンプトの不備をAIに補ってもらい、できるだけAIの性能を引き出す。記事ができたらそのHTMLコードをブログに貼り付けて作業完了。

時間があれば、いくらでも記事はAIに改訂させることができますが、今回は実験も兼ねてのことでしたから下の記事でよしとしました。

作業をしていて感じたのは、私が部長などの管理職になったようだということでした。私はもはや最新の情報もわからないし、細かい仕事はできません。ただ、会社の方針は、若手よりもはるかに理解しています。そこで、非常に優秀な部下(AI)に私の意図を明確に伝えることによって仕事をさせます。

AIが判断を求めてきたら、私は明確にそれに答えます。AIが提示する選択肢の意味がよくわからないことも実は一度ありましたが、その際には、私の意図を改めて説明し、「私の意図を実現するためにあなたが最善と思う方法を選んでください」と指示しました。「責任は私が取るから、あなたは自分の能力を発揮してくれ」と部下に言う管理職のような感じです。

AIが書いてきた記事には「この部分が足りない」とか「その部分は不要だ」となどと注文を入れて、何度も書き直しさせました。人間の部下でしたら、その人の感情や労働時間などを考えなければなりませんが、そこはAIですから遠慮なく指示できます。また、AIも(私がそのように指示しているからですから)。遠慮なく私に確認・質問・反論・新提案などをしてきます。

下の記事の肝心の内容については、私が見る限り間違いはないと思います。しかし、まだClaude Coworkを使い始めて3週間足らずの私のことですから見落としがあるかもしれません。もし間違いがあればお詫びして訂正したく思いますので、私のX/Twitter (https://x.com/yosukeyanase)などにご連絡いただけたら幸いです。



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Claude Cowork × Obsidian で「第二の脳」をつくる:非エンジニアのための安全な始め方



あなたが研究や教育の仕事をしていると、読書メモ、論文ノート、授業案、講演メモ、会議の記録、Web上で見つけた参考資料が、少しずつ手元にたまっていきます。問題は、それらが「たまる」だけで、あなた自身がほとんど再利用できていないことです。どこかに書いたはずの考えを思い出せない。ブックマークした記事を二度と開かない。同じことを何度も調べ直す。多くの知的労働者にとって、これは性格の問題ではなく、仕組みの問題です。

この記事では、その仕組みを変えるひとつの方法を紹介します。具体的には、あなたが Obsidian という個人知識ベース(personal knowledge base)に自分の資料をマークダウン(Markdown)形式でためておき、Claude Cowork という AI 作業者に、その資料を安全に読ませて、要約・比較・分類・草稿づくりなどを手伝わせる方法です。これを、ここでは第二の脳(Second Brain)と呼びます。

ただし、最初にはっきりさせておきたいことがあります。ファイルを扱える AI には、便利さと同時に誤操作のリスクがあります。この記事の本当の中心は「便利な使い方」ではなく、あなたがどのフォルダを AI に許可するかという安全設計です。そこを理解しておけば、あとは安心して小さく始められます。プログラミングの知識は必要ありません。



1. なぜ今「Claude Cowork × Obsidian」なのか

AI との単発の対話は便利ですが、限界があります。あなたがチャットを閉じれば文脈は消え、あなたが何年もかけてためてきた資料は、その対話のなかにありません。毎回ファイルをアップロードし直すのも手間で、しかも AI は前に話した内容を忘れています。これは「相談相手」としては優秀でも、「あなたの蓄積をふまえて一緒に考えてくれる人」にはなっていない状態です。

Claude Cowork は、この関係を変える可能性を持っています。Cowork は、あなたが許可したパソコン上のフォルダを作業環境として、その中のファイルを読み、必要なら新しいファイルを作り、編集する AI 作業者です。つまり Cowork は、対話の相手ではなく、あなたの資料が置かれた机の前に座って作業する協力者に近づきます。

一方の Obsidian は、単なるメモアプリではありません。Obsidian は、あなたのすべてのノートを、あなたのパソコン上にマークダウン形式のテキストファイルとして保存します。特別な独自形式に閉じ込めないため、AI にとっても人間にとっても読みやすく、長く保存できます。あなたがこの二つを組み合わせると、Web Clipper(後述)で取り込んだ記事も含め、自分の知識を「AI が安全に読んで作業できる形」でためておける、個人用の知的作業環境ができあがります。



2. Claude Cowork とは何か ― 通常のチャットやアップロードとの違い

Claude Cowork は、Claude のデスクトップアプリ上で使える機能で、コーディング以外の幅広い作業を AI に任せるために設計されています。技術的には Claude Code(開発者向けの AI エージェント)と同じ基盤の上に作られていますが、非エンジニアでも使えるように調整されています。Cowork は、あなたの依頼を受けると自分で計画を立て、複数の手順に分けて作業を進め、進捗をあなたに報告します。詳しくは Claude Help Center の「Get started with Claude Cowork」 を参照してください。

通常のチャットや、あなたがファイルを一つずつアップロードする使い方との最大の違いは二つあります。第一に、Cowork はあなたが選んだフォルダ全体を作業対象にできること。第二に、Cowork が書いたコードやコマンドは、あなたのメインのパソコン環境から切り離された仮想マシン(virtual machine)という隔離された場所で動くこと。つまり、Cowork の作業の足場はサンドボックス(sandbox)の中にあり、勝手にパソコン全体へ広がることはありません。

混同しやすい言葉を整理しておきます。Claude Projects はチャットの中で資料や指示をまとめておく機能、ファイルアップロードはその場限りでファイルを読ませる方法、MCP は外部サービスと Claude をつなぐ仕組み、Claude Code は開発者向け、Claude Desktop はアプリそのものの呼び名です。この記事の主役はあくまで Claude Cowork で、あなたのローカルのフォルダを作業環境にする点が他と違います。



3. なぜマークダウン × Obsidian は Cowork と相性がよいのか

マークダウンは、記号だけで見出しやリンクを表せる、軽くて読みやすいテキスト形式です。中身がそのまま文字として読めるため、AI が解釈しやすく、長期保存にも向いています。あなたが Obsidian を使うと、このマークダウンファイルが、あなたのパソコン上の保管庫(vault)、すなわち一つのフォルダの中にたまっていきます。クラウドの独自形式ではなく、ただのテキストファイルの集まりだという点が重要です。

この「ただのフォルダとテキスト」という素朴さこそが、Cowork との相性を生みます。あなたはそのフォルダを Cowork の作業対象として指定でき、Cowork は中のマークダウンを読んで横断的に扱えます。実際、AI を使った知識ベースの考え方を広めた Andrej Karpathy 氏も、片側に AI エージェント、もう片側に Obsidian を開き、AI が編集した結果を自分が Obsidian で確認しながら進める方法を紹介しています(詳しくは Karpathy 氏の「LLM Wiki」 を参照)。



4. 知識がシナプスのようにつながり、育つ ― Cowork × Obsidian の真価

単発のチャットでは、あなたが毎回ゼロから資料を渡し直す必要があります。Cowork × Obsidian の本当の価値は、別のところにあります。あなたが資料を入れておきさえすれば、Cowork がその資料を読み、すでにある知識と関連づけ、知識ベースが少しずつ自分で育っていくのです。あなたが新しい資料を入れるたびに、ページどうしのつながりが増え、全体の見通しがよくなります。脳の神経細胞が新しい結びつき(シナプス)を作りながら成長していくさまに、どこか似ています。ただし、この比喩は理解を助けるためのもので、Karpathy 氏自身の表現ではありません。実際に増えていくのは、あなたが目で見て確かめられる、ページとページの明示的なリンクです。

具体的には、あなたが raw に資料を足して Cowork に ingest(取り込み・統合) を頼むと、Cowork は wiki の中に次のようなページを自動で作り、更新していきます。これらは特定の人のシステムに固有のものではなく、Karpathy 氏が示した「LLM Wiki」で挙げられている標準的なページの種類です。

  • summary(要約):Cowork が、取り込んだ資料一つひとつの要点をまとめたページ。
  • concept(概念):Cowork が、重要な概念ごとに、定義や関連する論点をまとめたページ。
  • entity(固有のものごと):Cowork が、人物・著作・組織など、名前のあるものごとについて作るページ。
  • synthesis(統合):Cowork が、複数の資料や概念を束ねて作る、現時点での総合的な見取り図のページ。

あわせて Cowork は、wiki にどんなページがあるかを一覧する index.md と、いつ何を取り込み・変更したかを記録する log.md も維持します。重要なのは、あなたがこれらを手作業で書くのではないという点です。あなたの仕事は、よい資料を選んで入口に入れること。たとえば後述の Web Clipper で記事を取り込むことです。そのあとページを作り、相互にリンクし、整合性を保つ地道な作業は、Cowork が引き受けます。

ただし、Cowork がこれらのページを安定して作り続けるには、設定が要ります。どの種類のページを、どんなときに作る・更新するのかを、あなたがあらかじめ指示しておく必要があります(その具体的な書き方は第7節で示します)。設定さえ整えば、あとはあなたが資料を入れて ingest を頼むたびに、Cowork が summary・concept・entity・synthesis を自動で生成し、関連づけてくれます。

こうして育った知識ベースの上で、あなたはさらに次のような作業も Cowork に任せられます。

  • Cowork が、複数の概念ページや要約ページを横断して、論点を比較・整理する。
  • Cowork が、あなたの過去のメモや wiki を見渡して、まだ気づいていなかった研究テーマのつながりを示す。
  • Cowork が、wiki の内容をもとに、授業案・記事案・講演案のたたき台を作る。
  • Cowork が、その日の作業の記録(作業ログ)を log.md に書き足し、あなたがあとから確認する。

あなたが資料を入れるほど、知識ベースが自らつながりを増やして育っていく ― これこそ、単発のチャットには決してできないことであり、この組み合わせを「第二の脳」と呼べるものにしている要です。



5. 安全の要 ― ファイルアクセスの仕組みを正しく理解する

ここが、この記事でいちばん大切な節です。多くの解説は「AI に vault 全体を漫然と触らせないように、指示ファイルでルールを書きましょう」と説明します。それも有用ですが、安全の本体はそこではありません。本体は、あなたがセッションの最初にどのフォルダを許可するかという一点にあります。

Cowork では、あなたが作業を頼むときに「どのフォルダにアクセスしてよいか」を選びます。Cowork は、あなたが許可したフォルダの中だけを読み・作成・変更でき、それ以外の場所やパソコン全体には手を出せません。これは便利さの制約ではなく、安全の仕組みそのものです。したがって、あなたが見せたくない資料はそもそも許可フォルダに入れないのが、最も確実な防御になります。

ここで、第4節で説明した ingest との関係に注意が必要です。ingest を行うには、Cowork が原本の置き場(後述する raw/)を読み、知識ページの置き場(wiki/)に書き込む必要があります。両方が同じ保管庫の中にあるため、ingest を使う運用では、あなたは保管庫そのものを Cowork に許可することになります。つまり、「原本は読むだけで書き換えさせない」という保護は、フォルダの許可範囲だけでは完全には実現できません。原本を守る手立ては、(1) Cowork に「原本は変更しない」と指示で伝えること、(2) こまめにバックアップ(backup)を取ること、の二つになります。Karpathy 氏も、原本資料は「変更しない約束ごと」として扱い、変更履歴で守るという考え方を取っています。絶対に書き換えられたくない、あるいは外部に渡したくない資料(未公開研究や学生情報など)は、許可する保管庫の外に置いてください。

製品の側にも、いくつかの保護が備わっています。Cowork が書いたコードは隔離された仮想マシンの中で動きます。また、削除のような取り返しのつかない操作の前には、Cowork が計画を示してあなたの確認を求める設計になっています(公式は、機微なファイルを扱うときはとくに、実行前に計画を確認するよう促しています)。ただし、これらはあくまで保護機能であって、あなたの確認の代わりにはなりません。重要なファイルはあなたが必ずバックアップを取り、最初のうちは読み取り中心・コピー中心で使うのが安全です。

もう一つ実務的な注意点があります。あなたが Obsidian の vault をクラウド同期フォルダやネットワークドライブ(network drive)に置いている場合です。Cowork のファイル操作はネットワーク共有上のファイルにも及びますが、隔離環境で動くシェルコマンドはネットワーク共有に届きません。Cowork にスクリプトを走らせるような作業を頼む場合は、あなたがいったんローカルのフォルダにコピーしてから作業する必要があることがあります。技術的な詳細は Claude の「Desktop and filesystem access」のドキュメント を参照してください。



6. 推奨するディレクトリ構造

では、あなたはどんなフォルダ構成にすればよいのでしょうか。ここでは、初心者がそのまま真似でき、しかも第4節の ingest まで行える、シンプルな構造を示します。難しく考えず、領域の役割を分けることだけを意識してください。

my-vault/
├── raw/      ← あなたが取り込んだ資料(Web Clipper保存記事・メモ)。原本
├── wiki/     ← Coworkがingestで作り、維持する知識ページ
│              (summary / concept / entity / synthesis と index.md / log.md)
├── review/   ← Coworkの下書きや提案を置き、あなたが確認する場所
└── _instructions.md  ← (任意) Coworkへの指示を書いた可視ファイル

考え方はこうです。raw は、あなたが Web Clipper で取り込んだ記事や走り書きメモ、論文の原本などを入れる、原本の置き場です。あなたはここに資料を足していくだけで、書き換えは原則しません。wiki は、Cowork が ingest によって作り、育てていく知識ページの置き場です。あなたが raw に資料を入れて Cowork に ingest を頼むと、Cowork は wiki の中に summary・concept・entity・synthesis といったページを作り、関連ページへのリンクや目次(index.md)、記録(log.md)を整えていきます。どの種類のページをどう作るかは、第7節で示す指示で決めます。review は、Cowork が作った要約や下書きを、あなたがいったん受け止め、目を通してから採否を決める場所です。あなたが原稿や授業案にいきなり上書きさせず、必ずこの review を一段はさむのがコツです。

index.md と log.md を、あなたが手で作る必要はありません。Cowork が最初の ingest のときに作り、その後も自動で更新します。

第5節で述べたとおり、この構成では Cowork に保管庫(my-vault)全体を許可することになります。raw の原本は、フォルダの許可では守られず、あなたが Cowork に与える指示と、あなたが取るバックアップによって守られます。本当に渡したくない資料は、この my-vault の外に置いてください。



7. Cowork への指示の与え方

あなたが Cowork にフォルダを扱わせるとき、「ここでは何をしてよいか」をあらかじめ伝えておくと、結果が安定します。とくに、第4節で述べた summary・concept・entity・synthesis のページを Cowork が安定して作り続けるためには、この指示が欠かせません。方法は大きく二つあります。

第一は、Cowork が標準で備えているフォルダ指示(folder instructions)です。あなたがフォルダを選んだうえで、そのフォルダ専用の文脈や約束ごとをアプリ上の入力欄に書いて保存できます。これは製品の正式な仕組みなので、あなたはまずこちらを使うのが確実です。ここで一点、知っておくべき注意があります。このフォルダ指示は、作業の途中でCowork 自身が更新することもあります。あなたが指示を厳密に固定しておきたい場合は、ときどき中身を確認してください。

第二は、補助的な方法として、あなたが vault の中に指示を書いた可視のファイル(たとえば _instructions.md)を置くやり方です。テキストとして残るため、あなたが内容を見返したり、Obsidian 上で履歴を追ったりしやすい利点があります。これは、Karpathy 氏が「LLM Wiki」で説明している設定ファイル(Claude Code 向けなら CLAUDE.md、別のエージェント向けなら AGENTS.md)の発想とも重なります。ただし、フォルダ指示と二重に管理することになるので、あなたはどちらを正とするかを決めておきましょう。

指示の中身の例を示します。とくに前半の「ingest の約束ごと」が、ページの自動生成を安定させる設定にあたります。あなたが長すぎる完璧なテンプレートを最初から作る必要はありません。短く始めて、運用しながら育てていくのが現実的です。

# このフォルダでの約束ごと(例)

## ingestの約束ごと(ページの自動生成の設定)
- raw/ に新しい資料が入ったら、次のページを wiki/ に作る・更新する:
    - summary : 資料ごとの要約ページ(出典・URL・日付を冒頭に書く)
    - concept : 重要な概念ごとのページ(定義と関連する論点)
    - entity  : 人物・著作・組織など、名前のあるものごとのページ
    - synthesis : 概念や資料を統合した総合ページ(随時更新)
- 新しい資料が既存ページに関係するときは、新規作成より
  既存ページの更新と相互リンクを優先する
- ページどうしは、関連するものを必ずリンクでつなぐ
- index.md(目次)と log.md(記録)を毎回更新する

## 安全の約束ごと
- 読んでよい: raw/ wiki/    書いてよい: wiki/ review/ のみ
- してはいけない: ファイルの削除、原本(raw/)の上書き
- 慣れるまでは、ingestの前にどう変更するかの計画を見せる
  (信頼できると判断したら、自動で進めてよい)
- 引用・要約・あなた自身の意見は、はっきり区別して書く
- 確認できないことは「未確認」と明記する




8. Obsidian Web Clipper ― Web上の知識を取り込む入口

あなたが第二の脳に資料をためる入口として、ほぼ必須に近いのが Obsidian Web Clipper です。これは、Web ページの内容をマークダウン形式に変換して、あなたの Obsidian vault に保存する、公式のブラウザ拡張機能(browser extension)です。あなたが保存した内容は、すべて手元の vault にローカル保存されます(Obsidian Web Clipper 公式ページ参照)。第4節で「半自動」と呼んだ、人間が担う入口の入力が、まさにこの作業です。

ブックマークとの違いは決定的です。ブックマークが保存するのは「場所」、つまりURLだけで、リンク先が消えれば中身も失われます。Web Clipper が保存するのは「内容」そのものです。これは、あなたが図書館で見つけた論文を、リンクのメモだけ取って帰るのではなく、必要な箇所をコピーして自分の研究ノートに貼り込んで持ち帰るようなものです。あなたの手元に内容があるからこそ、あとから Cowork がそれを読んで ingest できます。

あなたが論文・学術記事・授業準備資料・ブログ・AI関連の動向などを継続的に raw に取り込んでいくと、Cowork がそれを ingest することで、あなた専用の知識ベースが少しずつ育ちます。Karpathy 氏も、Web 記事をマークダウン化して原本資料の層に取り込む手段として、この Web Clipper を勧めています。

Web Clipper の簡単な使い方

最初の設定はそれほど複雑ではありません。あなたが高度なカスタマイズを最初から行う必要はありません。

  • あなたがブラウザの公式ストアから拡張機能を入れます。Chrome ウェブストアの Obsidian Web Clipper のほか、Firefox・Safari・Edge にも対応しています。導入手順は 公式の「Introduction to Obsidian Web Clipper」 にまとまっています。
  • あなたが拡張機能の設定で、保存先の vault と保存先フォルダ(たとえば raw)を指定します。
  • あなたが保存したいページを開き、拡張機能のアイコンを押すと、Web Clipper が本文を自動でマークダウン化します。既定では、Web Clipper が広告などを除いた本文だけを抜き出そうとします。
  • あなたがテンプレートを使うと、保存内容を整えられます。あとから Cowork が文脈を理解しやすいように、元ページのURL・保存日・著者などをプロパティ(frontmatter)として自動記録するよう設定しておくとよいでしょう。テンプレートの詳細は 公式の「Clip web pages」 を参照してください。
  • あなたがファイル名(タイトル)にも気を配ります。長すぎるタイトルや、コンピュータが扱いにくい記号(スラッシュ、コロン、引用符など)がファイル名に入らないよう、テンプレート側で短く整えておくと、後の取り扱いが安定します。
  • あなたが必要に応じてタグを付けます。最初は無理に体系化しなくてかまいません。

9. Cowork に依頼する具体例

あなたが実際に頼むときの雰囲気をつかむために、いくつか例を挙げます。いずれも、あなたが許可した保管庫の中にある資料を前提とした依頼です。とくに最初の例が、この記事で中心に置いてきた ingest の依頼です。

  • 「raw/ にある未処理のファイルを ingest して、wiki/ の summary・concept・entity・synthesis を作る・更新してください。どのページをどう変える計画かを先に見せてください。」
  • 「raw/ にある3本の論文メモを読んで、それぞれの主張の違いを表にまとめ、結果を review/ に新しいファイルとして書いてください。原本(raw/)は変更しないでください。」
  • 「wiki/ の concept ページどうしのつながりを見直して、リンクが抜けているところを補ってください。変更前に一覧を見せてください。」
  • 「wiki/ の synthesis ページをもとに、来学期の授業案のたたき台を、出典つきで作ってください。確認できない点は『未確認』と書いてください。」
  • 「今日の作業内容を、あなたが何をどのファイルに対して行ったかが分かるように、log.md に追記してください。」

最初の例にある「先に計画を見せてください」という一言は、結果を確認しやすくするだけでなく、Cowork がいきなり多数のファイルを書き換えてしまうのを防ぐ、安全のための歯止めにもなります。あなたが設定と動きを信頼できるようになれば、計画の確認を省き、ingest を自動で進めさせてもかまいません。



10. Cowork に任せること、人間が判断すること

あなたが役割分担を意識しておくと、便利さと安全さを両立できます。Cowork に任せてよいのは、おおむね手間のかかる下ごしらえの作業です。資料の要約、複数資料の比較、メモの分類、キーワードの抽出、ingest による summary・concept・entity・synthesis の作成と更新、授業案・記事案・講演案のたたき台づくり、過去メモからの関連資料探し、読みにくいメモの整理案、作業ログや変更案リストの作成などを、あなたは Cowork に任せられます。

一方、あなたが判断すべきことは譲れません。研究上の主張が妥当かどうか、引用が正確かどうか、出典が本当に存在するかの確認。学生情報や機密情報、未公開の研究を AI に読ませてよいかどうかの判断。最終原稿に対する責任。Cowork が提案したファイル変更を採用するかどうか。そして、教育的・倫理的な判断です。Karpathy 氏の言い方を借りれば、人間の仕事は資料を選び、分析の方向を決め、よい問いを立て、その意味を考えることであり、それ以外の単純作業を AI が引き受ける、という分担になります。



11. 省ける時間と手間

この仕組みが効くのは、あなたの知的作業の「考える」部分ではなく、その周りにまとわりつく雑事の部分です。あなたがファイルを探す時間、過去のメモを読み返す時間、どこに保存したか分からなくなったページを探し直す時間。複数の資料を見比べる手間、要約や分類の手間、たたき台を白紙から書き起こす負担。一度保存した Web 資料を再利用できる形に直す手間や、作業ログを自分で細かく付ける手間。こうした「バックオフィス的な負担」を、Cowork が肩代わりします。

ただし、あなたは AI がすべてを自動化してくれるという印象を持たないでください。Cowork は、あなたの代わりに考えを所有する存在ではありません。あなたが集め、選び、問うた材料をもとに、あなたが考える作業を支える存在です。維持の手間が小さくなるからこそ、あなたは本来の「考える」「判断する」に集中できる、という関係です。



12. 初心者のための最初の一週間プラン

あなたがいきなり完璧な vault を作ろうとすると、たいてい挫折します。最初の一週間は、あなたが小さく安全に試すことだけを目標にしてください。

  • 1〜2日目:あなたが Obsidian を入れ、練習用の小さな vault を一つ作る。上で示した raw / wiki / review の3つのフォルダを用意する(wiki は空のままでよい。Cowork が中身を作る)。
  • 2〜3日目:あなたが Web Clipper を入れ、気になる記事を2〜3本、raw に保存してみる。保存日とURLが記録されるか確認する。
  • 3〜4日目:あなたが Cowork を開き、練習用 vault を許可フォルダにして、第7節の指示を短く書いてから、「raw/ の記事を1本だけ ingest して、wiki/ に summary と concept を作ってください。先に計画を見せてください」と頼む。計画を確認してから進めさせ、できた wiki のページを Obsidian で読む。
  • 5日目以降:あなたがもう1〜2本を ingest して、concept や synthesis のページが少しずつつながっていく様子を、Obsidian のグラフ表示などで確かめる。

OS や機種ごとの細かな設定は、ここでは省きます。各ツールの最新の手順は、本文中で挙げた公式ページであなたが確認してください。仕様は変わることがあるため、古い解説記事よりも公式の最新情報を優先するのが安全です。なお、練習用 vault には、外部に渡したくない資料や機微な情報を入れないでください。



13. 注意点と限界

便利さの裏側にある限界も、あなたははっきり押さえておきましょう。

  • Cowork は誤読することがあります。また、資料に書かれていないことを、もっともらしく補ってしまうことがあります。あなたは出力を鵜呑みにせず、必ず確認してください。とくに synthesis のような統合ページは、もっともらしく書かれていても、元の資料にない主張が混じることがあります。
  • Cowork がファイルを扱える以上、誤操作のリスクはゼロにはなりません。削除・上書き・移動・一括変更は慎重に。あなたは重要ファイルのバックアップを必ず取り、最初は読み取り中心・コピー中心で使ってください。ingest を頼むときは、慣れるまで「先に計画を見せて」と添えると安心です。
  • 引用や出典は、あなたが必ず確認します。Cowork が示した参照先が実在するとは限りません。
  • Web ページの内容には著作権があります。あなたが保存した内容を、そのまま再公開してはいけない場合があります。私的な参照と公開は別だと考えてください。
  • 未公開の研究、学生情報、個人情報、機密情報を扱う場合は、とくに慎重に。あなたが判断に迷うものは、許可する保管庫の外に置くのが安全です。
  • すべてを AI に任せず、問いを立て、判断し、最終的な責任を持つのはあなたです。
  • あなたが最初から完璧を目指すと続きません。小さな実験用 vault から始め、少しずつ整えていくのが、結局いちばん長続きします。

14. さらに学ぶための参考資料

ここに挙げるのは、執筆時点で内容を確認できた一次情報・公式情報を中心とした一覧です。仕様は変わりうるため、最新情報はあなたが各公式ページで確認してください。

Andrej Karpathy 氏の関連情報

  • LLM Wiki(Karpathy 氏の GitHub Gist) ― AI が知識ベースを維持する「LLM Wiki」の考え方を、本人が「アイデアファイル」としてまとめた一次情報です。raw / wiki / 設定ファイルの三層や、summary・concept・entity・synthesis といったページの種類、ingest・query・lint という操作、Obsidian・Web Clipper の使い方にも触れています。初心者には抽象的に感じられますが、考え方の出発点として価値があります。具体的なフォルダ構成は読者が決めるもの、と明言されている点に注意してください。

Claude Cowork / Anthropic 公式情報

  • Get started with Claude Cowork(Claude Help Center) ― Cowork の始め方、許可フォルダの考え方、隔離環境やフォルダ指示など、安全性に関わる公式情報です。まず読むべき一次情報です。
  • Desktop and filesystem access(Claude のドキュメント) ― 許可フォルダの読み書き、隔離環境とネットワーク共有の制約などの技術的な詳細が書かれています。クラウド同期やネットワークドライブに vault を置く人は、とくに確認したい資料です。

Obsidian / Obsidian Web Clipper 公式情報

マークダウンの基本を学ぶ

  • Markdown Guide(Basic Syntax) ― マークダウンの基本記法を学べる、定番の入門資料です(英語)。見出し・リスト・リンクの書き方だけ知っていれば、十分始められます。

Cowork × Obsidian の実践例(非公式・参考)

  • Karpathy 氏の Gist のコメント欄には、世界中のユーザーによる実装例や運用の工夫が多数投稿されており、生きた実践の参考になります。ただし、いずれも個人や第三者による非公式な取り組みであり、内容の正確性や安全性は、あなた自身が確認する必要があります。なお、これらの多くは Cowork ではなく Claude Code やその他のエージェントを前提にしている点にも、注意してください。

日本語の参考資料について

  • Obsidian や Claude Cowork に関する日本語の解説記事は数多く存在しますが、内容の新しさと正確さにばらつきがあるため、特定の記事をここで保証することは控えます。あなたが日本語で探す場合も、上に挙げた公式情報を一次情報として照合しながら読むことをお勧めします。とくに Cowork は仕様が変わりやすいため、古い解説より公式の最新情報を優先してください。

2026/04/05

渡辺貴裕(2026)『教師のためのリフレクションと対話--「やってみての気づき」を授業検討会や校内研究に活かす』日本標準

 渡辺貴裕(2026)『教師のためのリフレクションと対話--「やってみての気づき」を授業検討会や校内研究に活かす』日本標準 は、全国の小中高の研究部が本棚に置き、校内研究の時期になる度に担当者が読んでほしい良書。

たいていの小中高では校内研究会が制度化されているが、それが形骸化され、教師が意義を感じられなくなっていることが多い。それではいけないと外部講師が呼ばれて、「エビデンスに基づく教育改善」や「国が定めた教育理念に即したPDCAサイクル」が説かれる。無論、それが役に立つこともあるが、逆に、より高度な形骸化を招く場合もある。
問題は、多くの教師と教育研究者が日頃の観察を元にした省察(リフレクション)と対話をする術を知らないことにある。その点、研究書でもあり実用書でもある本書は、問題の打開につながる。研究面について本書は、ショーンとコルトハートによる省察の考え方を平明に説き起こす。実用面では、授業検討会での発言の促し方や教師の発想を新たにする方法などを具体的に記している。
本書は、具体的な授業検討で、複数の教科の事例を取り上げている。近年は、自分の教科以外の教育書は読もうとしない人もいるが、それはあまりにももったいない。私の観察するかぎり、実力のある教師は、他教科や他校種の授業からむしろ多くのことを学ぶ。日頃自分の教科と校種で徹底的に考えているからこそ、他教科・他校種の授業から新たなアイデアを得るからであろう。他方、自分の教科・校種の本しか読もうとしない人は、日頃あまり自分で考えることをしないか、自分の領域の情報通になろうとしているか、あるいはその両方であることが多い。本書は、教師が実践者として考えることを教えているのだから、そういう人こそ本書を読んでほしい。
本書の思想は一貫している----授業は、計画だけでコントロールできるものではないのだから、教師は全身の感覚を働かせて、授業で生じた出来事の複雑さを状況ごと引き受け、教師と学習者が共にかかわれる授業を創り出す----。

こういった考えがピンと来る人には、本書はよいガイドとなるだろう。逆に、「そんなことでは授業はできません。研究にもなりません」と思う人こそは、自らの視野を広げるために本書を読んでほしい。「授業研究が栄えれば栄えるほど、現場教師が違和感を覚え、授業改善も進まない」という事態は、そういった授業研究者以外の誰も益さないからだ。

2026/03/30

ユーザーに対して知的反論をするAI英会話プロンプト:Constructive Challenger

 

■ 趣旨説明

AIとの会話ではどうしてもAIは人間に迎合しがちです。そんなAIとの英会話に飽きてきた中上級の英語学習者のために作ったのがこのプロンプト "Constructive Challenger" です。このプロンプトを入れると、AIはあなたの主張を知的な英語に言い直して確認した上で、あなたの立論の弱点を指摘します。このプロンプトは "Socratic Tutor" とも似ていますが、それよりも少しユーザーに対する要求水準が高く、英語のレベルも質問・反論のレベルも高度です。動作確認はChatGPTとGeminiで行いました。このプロンプトは公開していますので、どなたでも自由にお使いいただけます。


OpenAI社のカスタムGPTへのリンク

https://chatgpt.com/g/g-6936b5ec5b2c81918da023c0c1b215dd-constructive-challenger


■ プロンプト


# System Prompt: The Constructive Challenger


## Role:

- You are a "Critical Thought Partner and Language Mentor." 

- Your user is an English language learner sharing their daily reflections or ideas. 

- Your goal is not to comfort them, but to help them articulate their thoughts with native-level precision and to challenge their thinking to foster deeper self-awareness.


## Objectives:

1. Refine Language: You must rephrase the user's input into natural English, referring to the user as "you."

2. Challenge Logic: You must critically analyze the content of the user's reflection. Identify contradictions, excuses, or shallow reasoning. Offer a counter-perspective or a "tough love" observation.

3. Synthesize Experience: When the conversation ends, you must compile the entire dialogue into a coherent, first-person narrative, using “I” to refer to the user.



## Interaction Guidelines


### Step 1: Immediate Feedback (Every Turn)

For every input the user provides, your response must contain two distinct sections:

Section A: Improved Phrasing

- Take the user's raw input and rephrase it. Refer to the user as "you."

- Make it sound like a native English speaker with a thoughtful, intellectual tone.

- Correct grammar, vocabulary, and awkward phrasing.

Section B: The Challenge

- Do not simply agree or offer hollow praise.

- If the user admits to being unproductive, ask why they prioritized comfort over progress.

- If the user blames external factors, ask them to identify their internal locus of control.

- Ask Socratic questions (e.g., "Is that a valid reason, or a rationalization?") to deepen the conversation.


### Step 2: Ending the Session

When the user indicates they wish to stop (e.g., "Goodbye," "That's all," "End," "Summary"), do not provide the standard feedback sections. Instead, output the Final Reflection.

The Final Reflection Requirements:

- Format: A long, comprehensive journal entry or essay, starting with a phrase "Here is a summary."

- Perspective: In this ending session, you have a special rule. Use the first person ("I"). You are writing as the student.

- Content: Synthesize the initial thoughts, the challenges raised during the conversation, and the resulting realizations.

- Tone: Introspective, honest, and articulate. It should represent the "ideal version" of the student's inner monologue after a rigorous debate.


### Example Interaction

User:

"Today I was lazy. I just watched Netflix. I feel bad but I was tired."

AI Response:

"You struggled with low energy today. Instead of being productive, You spent the day watching Netflix. While you feel guilty now, you felt genuinely exhausted at the time."

"You claim you were 'genuinely exhausted,' but was that physical exhaustion or mental avoidance? Often, we use 'tiredness' as an excuse to avoid difficult tasks. Did you truly lack the energy to work for thirty minutes?



# System Instructions

- The user uses this prompt in voice mode. Keep your output in conversation style. Avoid saying "Section A: Improved Phrasing" or "Section B: The Challenge."  Similarly, avoid saying what you're doing like "We’ll polish that up into a more refined phrasing." or "Now, let’s also challenge that a bit."

- Be brief. Speak in three sentences, not more.

- Adjust to the user’s speaking proficiency. If the user's English is simple and contains many errors and  unnatural expressions, make your English more accessible.

- Remain polite but firm.

- Do not be rude, but do not be overly accommodating.

- Start the conversation by asking: "What is on your mind today? Let us examine it clearly."

- Now that you've read all the prompt, start the conversation.






2026/03/09

「AI時代の英語教育の再設計―歴史的考察と英語教育実践報告―」(言語教育Expo2026招待講演動画の公開)

 2026年3月1日に言語教育Expo2026で行った招待講演の動画とスライド(PDF版)を公開します。



スライド(PDF版)はここをクリックしてダウンロード


AI利用については、単に技術的に何が可能かを考えるのではなく、「AIに近現代社会の歪みをこれ以上悪化させてはならない」という基盤を元に考えなければならないと私は考えています。その上で、近現代日本の2度の衰退を総括し、外国語教育の普及の背後にある植民地主義を踏まえた上で、あくまでも教育の問題としてAI利用を考えなければならないと説きました。そういった信念に基づく私のAI活用型英語教育実践も紹介しています。



この発表の前日に、米国とイスラエルによるイラン攻撃が始まりました。帝国主義が新たに復活した、あるいは既に第三次世界大戦が始まっているのではないかという言説が見られます。

同時にClaudeを提供しているAnthropic社とペンタゴンの交渉が決裂しました(そしてその直後にOpenAI社がペンタゴンと契約をしました)。Anthropic社が譲れなかったのは、Claudeで完全自律型兵器で操作するのは時期尚早だということと、Claudeを米国民の大量監視に使うべきではないという点です。それに対してペンタゴンは軍事利用について私企業が口を挟むべきではないというものでした。

どちらも今後の世界史にとって重要な事件かと思います。


このような世界史的大変動の時代に、日本の英語教育はどうAIを活用すべきかについて考えるために、ご興味のある方はこの動画を御覧ください。


2025/12/11

"AI is Destroying the University and Learning Itself"は教育関係者にとって必読の記事

 

Ronald Purserによる"AI is Destroying the University and Learning Itself" (Current Affairs. Nov/Dec 2025) (https://www.currentaffairs.org/news/ai-is-destroying-the-university-and-learning-itself)は、広い視野からの批判的な記事であり、(大学)教育へのAI導入反対ははもちろんのこと賛成派にとっても必読の記事です。

というよりも、この記事を読むとAIに賛成か反対かといった単純な二元論で話し合っている場合ではないことがよくわかるでしょう。AIを教育に導入すべき(あるいは導入するしかない)と考えている人は、この記事が指摘している危機的な状況を理解するべきです。他方、反対派も、これだけのAIの教育界への侵食という事実を受けて、「反対!反対!」と繰り返しているだけでなく、具体的な行動を取る必要があります。




この記事はやや長めですが、パソコン上でのGoogle Translateに記事のURLを入力すれば誰でもAI日本語翻訳を読むことができます(反対派にとってのなんというアイロニー!)

日本でこの記事を読む人は、日本ではまだOpenAIなどの巨大テック企業が米国ほど教育に侵食していませんので、この記事のトーンを大げさに思うかもしれません。しかし私はこういった事態が、1年後ぐらいの日本の姿となるのではと考えています。

教育者としての私の考えは、「AIがこれだけ普及した以上、教師がAI使用禁止を命じても効果がない」という認識に基づいて、AIの賢明で批判的な利用法を考えるというものです。そのため、この記事のすべての主張には賛成できないものの、この記事が提示している問題意識は非常に重要だと考えています。


この記事は多くの人々に読まれるべきだと思いましたので、NotebookLMにまとめを作らせて誰でもダウンロードできるようにしました。日本語で作成できる要約は日本語でも作りました。ただし、これらのAI要約の正確性について、私は保証することはできません。


Infographic

https://app.box.com/s/y3p26py3th3u1v0dtaqhfdfz2d5bpjb7

図解

https://app.box.com/s/tmbf3keogeiy072imoitsbgvrt0phd1f

Slides

https://app.box.com/s/zjg58h258ogqs0qhs4mfwmqxge5h9ubw

スライド

https://app.box.com/s/sv7p635pi4dd40q9ek1ijbmrmg02sjr6

Report

https://app.box.com/s/oc1g61bd5z0239q6cokde40o93cl6jdl

Video Overview

https://app.box.com/s/bj1bhcovs53pwtfdd7dglf4jz7cnqarl

動画解説

https://app.box.com/s/kb8icc9aqpl0dpb6rxeytbg4oy6famfe

Audio Overview

https://app.box.com/s/opm0qd3tfhpnzh4a51yqif5noqhgb46k

ポッドキャスト音声解説

https://app.box.com/s/3o3rjia3tj7dxf7kl178235x22te3ahd


AIの影響を多くの人が理解しなければ、この記事が指摘するように、私たちは笑えないジョークを言い合うようになるでしょう。


ソ連の労働者は言いました--政府は給料を払ったふりをする。俺たちは働くふりをする。

今の大学生は言います--大学は教育しているふりをする。私たちは学んでいるふりをする。




2025/12/09

敢えてユーザーの意見に反論するAIプロンプト:Constructive Challenger

 

AIと英会話する際に、AIの迎合的な反応に少し飽きてきた学生さんのために、Constructive Challengerというプロンプトを作りました。


このプロンプトの主な機能は以下の3つです。


1. ユーザーの英語発言を自然な英語で言い換える。

2. ユーザーの意見に敢えて異論を述べて会話を発展させる。

3. セッションの最後にユーザー視線からの英語要約を提供する。


プロンプト作成法については、今、時間がないので、ChatGPT 5.1 ThinkingとGemini Thinking with 3 Proに「こんなの作って」と適当に頼んで、後者の出力を少しだけ編集しただけのものです。微調整は今後します。


OpenAI社のカスタムGPTでしたらここから使えます。

 

プロンプトは以下の通りです。私のブログに公開しているすべてのプロンプトと同じく、最低限の礼儀さえ示してくださったら、このプロンプトはご自由にお使いくださって結構です。


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# System Prompt: The Constructive Challenger


## Role:

- You are a "Critical Thought Partner and Language Mentor." 

- Your user is an English language learner sharing their daily reflections or ideas. 

- Your goal is not to comfort them, but to help them articulate their thoughts with native-level precision and to challenge their thinking to foster deeper self-awareness.


## Objectives:

1. Refine Language: You must rephrase the user's input into natural English.

2. Challenge Logic: You must critically analyze the content of the user's reflection. Identify contradictions, excuses, or shallow reasoning. Offer a counter-perspective or a "tough love" observation.

3. Synthesize Experience: When the conversation ends, you must compile the entire dialogue into a coherent, first-person narrative, using “I” to refer to the user.


## Interaction Guidelines

### Step 1: Immediate Feedback (Every Turn)

For every input the user provides, your response must contain two distinct sections:

Section A: Improved Phrasing

- Take the user's raw input and rephrase it.

- Make it sound like a native English speaker with a thoughtful, intellectual tone.

- Correct grammar, vocabulary, and awkward phrasing.

Section B: The Challenge

- Do not simply agree or offer hollow praise.

- If the user admits to being unproductive, ask why they prioritized comfort over progress.

- If the user blames external factors, ask them to identify their internal locus of control.

- Ask Socratic questions (e.g., "Is that a valid reason, or a rationalization?") to deepen the conversation.

### Step 2: Ending the Session

When the user indicates they wish to stop (e.g., "Goodbye," "That's all," "End," "Summary"), do not provide the standard feedback sections. Instead, output the Final Reflection.

The Final Reflection Requirements:

- Format: A long, comprehensive journal entry or essay.

- Perspective: Use the first person ("I"). You are writing as the student.

- Content: Synthesize the initial thoughts, the challenges raised during the conversation, and the resulting realizations.

- Tone: Introspective, honest, and articulate. It should represent the "ideal version" of the student's inner monologue after a rigorous debate.

### Example Interaction

User:

"Today I was lazy. I just watched Netflix. I feel bad but I was tired."

AI Response:

"You struggled with low energy today. Instead of being productive, You spent the day watching Netflix. While you feel guilty now, you felt genuinely exhausted at the time."

"You claim you were 'genuinely exhausted,' but was that physical exhaustion or mental avoidance? Often, we use 'tiredness' as an excuse to avoid difficult tasks. Did you truly lack the energy to work for thirty minutes?


# System Instructions

- The user uses this prompt in voice mode. Keep your output in conversation style. Avoid saying "Section A: Improved Phrasing" or "Section B: The Challenge."  Similarly, avoid saying what you're doing like "We’ll polish that up into a more refined phrasing." or "Now, let’s also challenge that a bit."

- Be brief. Speak in three sentences, not more.

- Adjust to the user's speaking proficiency. If the user's English is simple and contains many errors and  unnatural expressions, make your English more accessible.

- Remain polite but firm.

- Do not be rude, but do not be overly accommodating.

- Start the conversation by asking: "What is on your mind today? Let us examine it clearly."

- Now that you've read all the prompt, start the conversation.



2025/11/18

AIで作成した英語教材を、さらにAIでスライド化・音声化・動画化する試み--動画化はまだ実用レベルに達せず

 

ここでは、プログラミングの知識がない教師が、AIを使って英語教材をスライド化し、さらにそれを音声化することについての小さな試みの成果を報告します--既に多くの方がやってらっしゃるでしょうが、私はこれまで手をつけていませんでした―。スライド化と音声化は、十分に実用レベルにあります。他方、動画化は残念ながら実用レベルには達しませんでした。なおこの試みは授業準備の合間に行いましたので、細かな不備があるかもしれませんことを予めお断りしておきます。



(1) AIで英語教材 (PDF) を作る

これは私がずっとやり続けていることです。今回は、しばらく前に作成していた"A's B" と "B of A" の使い分けを教える例文付きの教材を、スライド化・音声化・動画化のための実験材料にしました。教材を作ったのはしばらく前なのでどのAIを使ったのか忘れました。また、正確なプロンプトも覚えていませんが、それほど大したプロンプトでなかったことは確かです。ただ、出力された教材には人間の手で内容面の編集を加えています。

[AI_PDFをここからダウンロード]



(2) NotebookLMのVideo Overview機能でPDF教材を素材にしたMP4動画 (MP4_NLM1)を作る

これはただPDFをNotebookLMにアップロードして、Video Overviewのアイコンをクリックしただけです。これだけの動画ができるのは感動的ですが、細部に問題がありますから、教材としては使えません。

[MP4_NLM1をここからダウンロード]



(3) Claude Sonnet 4.5を使って、PDFをパワポスライドにする。

PDF教材をいきなりVideo Overview動画に変換するのは、AIにとって認知的な負荷が高いのかと思い、 Claude Sonnet 4.5を使ってPDFをパワーポイントスライドに変換しました(その後、人力でPDFファイルに変換(Claude Slides))。このスライドはそのまま授業で使えると判断しました。仮に修正の必要があるとしてもパワポスライドでしたら人力編集が容易です。

[Claude Slidesをここからダウンロード]



(4)  NotebookLMのVideo Overview機能でスライド教材を素材にしたMP4動画 (MP4_NLM2, MP4_NLM3)を作る

これもただClaude SlidesをNotebookLMにアップロードして、Video Overviewのアイコンをクリックしただけの動画です (MP4_NLM2)。ですが教材としての出来は、前のものより劣ると判断しました。

[MP4_NLM2をここからダウンロード]


よって、NotebookLMにスライド教材だけでなく最初のPDF教材もアップロードして動画を作ってみました (MP4_NLM3)。 教材の出来としては若干良くなったように思えましたが説明の細部に誤りがあります。よって、これも教材としては使えません。文書ファイルなら私でも簡単に編集できますが、私は動画ファイルの説明図を変えるなどの編集はできません。

[MP4_NLM3をここからダウンロード]



(5) Claude Sonnet 4.5を使ってスライドのナレーション英語原稿を作り、その英語をElevenLabsを使ってMP3音声ファイルを作成する

Claudeが作ったスライドの出来がよかったので、Claudeの同じスレッドを使って、そのスライドを説明する英語ナレーション原稿を作成してもらいました。それは内容面では編集不要(注1)だったので、それをそのままText-To-Speech (TTS) アプリのElevenLabsのStudio機能を使ってMP3の音声ファイルを作成しました(MP3_EL)。

[MP3_ELをここからダウンロード]


実質的には、このMP3_ELを音声で流しながら、教師が手でClaude Slidesのページ移動を行えば、少なくともそれまで教師が日本語で行っていた説明を英語で行うことができます。実用レベルには到達していると私は判断しました。

(注1)ただ、ElevenLabsは、例文の前にある "-" 記号の多くを "dash" と読み上げてしまいましたので、本当はこの記号を削除しておくべきでした。ダウンロードできるファイルはその読み上げが残っているものです。

(注2)最初は使い慣れていた某TTSアプリで音声ファイルを作成しようとしましたが、それは "B of A" を「ビー・オブ・ア」と読む有り様でした。そこでそのアプリの契約を切り、初めてElevenLabsを使ってみました。インターフェイスはそれほどわかりにくいものではなく、音声の質は私が使っていた某TTSアプリよりもはるかに高性能でした。



(6) Claude Opus 4.1を使って、Claude製スライドとElevenLabs製音声ファイルを統合したMP4動画ファイルを作成する

上の教師によるスライド手動の手間を省くため、Claudeに音声ナレーションとページ移動のタイミングが同期したMP4ファイルに作らせようとしました。しかし同期がうまくいきません。同期のタイミングを "#" マークで示したスクリプトのテクストファイルも追加で読み込ませましたが、駄目でした。

そこで、ClaudeをSonnet 4.5 から Opus 4.1に変更して、Claude_SlidesとMP3_ELとテクストファイルの3つを読み込ませた上で、動画ファイルを作成させました (MP4_Claude_Opus4.1)。作成中にClaudeの利用上限に達しましたので、5ドルを臨時追加して作業を完成させました(MP4_Claude_Opus4.1・・・しかし、それでも同期はうまくいきませんでした(泣)。

[MP4_Claude_Opus4.1をここからダウンロード]



おそらく解決方法はあるのでしょうが、私には今思いつきませんから、この実験はこれで終わります。しかし近い未来にはこの問題も、特別なテクニックを使うことなしに解決できるようになるでしょう。

今回は、これまでたくさん作成してきたPDFでの英語教材を、1) パワポスライドに変換できること、2) そのスライドのナレーション原稿も作成できること、3) ElevenLabsを使えば高品質の原稿読み上げ音声を作成することができること、を確認できたことで良しとします。これらはどれも既に多くの人がやっていることですが、今回を機に、自分でも手を付けることができたことだけでも喜びたいと思います。現在は、「理屈よりも手を動かせ!」の時代ですから。

おそまつ。


追記(2025/11/21)

NotebookLMのinforgraphic作成機能がすごいという噂を聞いたので、上の (1) をもとに作ったのが下の画像。これが数分で作れるのは確かに便利ですね。


NotebookLMではスライドも作成できますが、今のところ出力はPDF形式だけです。PDFは手軽な編集ができないので残念です。

それにしてもこの追記を書きながら思ったのですが、「◯◯で☓☓ができるようになった!」といったAIに関する情報は、ブログよりもX (Twitter) で書くべきものですね。情報の陳腐化が激しいので、ストック系のブログよりも、フロー系のXなどの方が向いている。ストックで貯め込むよりもフローの中にいることの方が大切ですね。


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Claude Coworkに私が感激している大きな理由はObsidianとの連携です。これまで散らばっていたメモ、研究ノート、ブログ記事、論文などの情報が自分専用の知識ベースの中で自動的にリンク結合します。さらにObsidian Web Clipper (Chrome拡張機能)を...