KELESジャーナルに掲載していただいた拙稿が、少し前にJ-STAGEでも公開されました。
柳瀬陽介 (2024)
「ChatGPT による学術英語語彙の自律的学習
―言語観とプロンプト設計と学習者認識の一貫性―」
KELESジャーナル9号 pp.45-51
https://doi.org/10.18989/keles.9.0_45
この実践報告は、2023年10月1日に関西英語教育学会のKELESセミナーで発表させていただいた報告に基づいています。そのセミナーのスライドや予行演習動画は、こちらから閲覧することができます。
「AI活用の決定要因としての教育観と学習観
―英語学習者が「語彙学習では間違うことが必要」と自覚するまで―」
スライドと解説動画の公開
https://yanase-yosuke.blogspot.com/2023/10/ai.html
このJ-STAGE公開を可能にしてくださったすべての方々、特に関西英語教育学会の事務局の皆様に改めて深く感謝いたします。論文執筆者としては、多くの方々に読んでいただくことが何よりの喜びです。不特定多数の読者が無料で多くの論文を読むことができる文化装置を維持するために多くの時間を割いてくださっている皆様には感謝のことばしかありません。
この実践は、個人的にはとても好きで思い出深いものです。詳しくは上から論文をダウンロードしていただきたいのですが、私としては学生から次のような感想を聞けた時には本当に嬉しく感じました。
- 「他の様々な語に触れ、文章を考えるので、とても頭を使っている」
- 「自分で例文を作るときに具体的な状況を提示することを意識した。どんな状況でその単語を使うかによってニュアンスは微妙に変わってくるから、より実践での単語選びに近づけるためには具体的な状況設定が不可欠だ」
- 「たとえ意図は伝わったとしても、ニュアンスの部分が外れていれば、小さな誤解が生じたり、印象が悪くなったりする恐れがあるので、細かな意味まで、丁寧に学習するようにしたい」
- 「自分が今まで覚えていた単語の意味やニュアンスがChatGPTと会話する中で少しずれていることに気づいた。単語帳とにらめっこするだけでは本当の意味で単語を使えるようにはなれないのだとわかった」
- 「自分が選んだ単語や構造の不適切さを指摘されたときは、そのわけをわかるまで尋ねる方が良いと感じた。そうしないと、やはり癖が出て、適さない場面で再び使うことになるだろうからである」
- 「ChatGPTにすべてを任せるのではなく、尋ねる前に自分でしっかり推敲したり、冠詞、単語の吟味をしたりしてその上でAIを頼るというプロセスを踏まないと自分で間違いに気づけなくなるうえに勉強にもならないので、これからは丁寧に作文をしていきたい」
- 「長い文を作ることでミスが増えるが、その分、得られるフィードバックが大きいので、これからもミスを恐れずに具体的で分量の多い例文を作っていきたい」
- 「このように自分の英作文のボロを効率よく出すためには、やはりなるべく長く具体的な英文を作ることが一番だ」
この実践で使ったプロンプトは、下の記事で公開しています。
【Ver. 3.1.3に改訂】 学術英語語彙の使い方を学ぶためのChatGPTプロンプト
https://yanase-yosuke.blogspot.com/2023/10/ver-3-chatgpt.html
このプロンプトの利用も改編も自由です。私はAIを使ってできるだけ教育格差を解消し、やる気のある学習者を支援したく思っています。また、その学習者の姿を見て他の学習者が意欲を喚起されることを望んでいます。日本の公教育に携わる者の間で、AIに関する知見を共有する文化が普及しますように。