8/30(金)の19:30-21:30にSomatics and SEL研究会主催の公開オンライン研究会で50分の講演をしました。その後の約1時間はすべて質疑応答に使うという贅沢な会でした。事務局と参加者の皆様に改めて感謝いたします。
私の講演タイトルは「言語使用におけるリスクと責任--身体的で歴史的な実践知」でした。一般の方々はしばしば「外国語なんて、現地で暮らせばだれでも身につけることができるよ」と言います。それを聞いた言語教育関係者は、自分の存在意義を疑われたと怖れて動揺しながら「そうはいっても、教室と現地は違いますから」と言います。その弁明は正しいのですが、言語教育関係者の多くが行うことは、教室の学習ひいては評価の体系化であり「科学化」です。
しかし「言語学習についての安直な学問化・科学化と在野の知恵について」の記事 (https://yanase-yosuke.blogspot.com/2024/05/blog-post.html) でも触れたように、私は過剰な体系化や浅薄な「科学化」の方向性には賛成しません。それよりも、上の一般人の述懐の含意を丁寧に考えてゆくべきだと私は考えます。
今回の講演では、上の「現地で暮らす」こと、つまり現実世界で言語を使うことの重要な側面として、使用する言語のリスクと責任を取ることを取り上げて考察しました。その考察から、安直な科学化を施した研究が謙虚さを失った結果をかなり批判しました。この批判は、下の考察からの流れに基づいています。
「英語教育実践支援のためのエビデンスとナラティブ : EBMとNBMからの考察」 (https://doi.org/10.18983/casele.40.0_11)
「英語教育実践支援研究に客観性と再現性を求めることについて」 (https://doi.org/10.18983/casele.47.0_83)
「柳瀬陽介「教育実践を科学的に再現可能な操作と認識することは,実践と科学の両方を損なう」(シンポジウム:外国語教育研究の再現可能性2021)(https://yanase-yosuke.blogspot.com/2021/09/2021_11.html)
今回の講演のスライドはここからダウンロードすることができます。(https://app.box.com/s/jvyka8gsznljxo0vbourf9murfhje2o7)。講演の予行演習動画は下から見ることができます。ご興味のある方は御覧ください。