追記
シンポジウム本番の録画とスライドが国立情報学研究所により公開されました。この録画の方が下の予行演習録画よりも少しは質が高いと思います。ご興味があれば御覧ください。
https://edx.nii.ac.jp/lecture/20231013-05
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2023年10月13日(金)に開催された国立情報学研究所主催の「教育期間DXシンポ」で20分の発表をさせていただきました。私のタイトルは以下の通りです。
大学英語教育におけるChatGPT活用型授業実践:
英語教師が認識する生成系AI活用の可能性と限界
■ スライドと解説動画
このスライド(PDF版)はここからダウンロードできます。
https://app.box.com/s/y32skw98vtlll7n63jyfo1kntjstfcvt
リハーサルで使った解説動画(約18分)もここに公開しておきます。ただしリハーサルで使ったスライドは、本番のスライドと一部で異なっています。
Q1 私の若い時代にこのようなプロンプトがあれば、私の人生も大きく変わったのではないかとも思える。京都大学の英語ライティング授業では、すべてこのようなプロンプトを使っているのか?A1 そうではありません。これは私個人の実践です。英語授業でのAI利用については、英語教師の間でさまざまな見解の相違があります。Q2 プロンプト作りの苦労は?A2 ChatGPTが出力する英語のレベルをコントロールをするために、最初はCEFRといった規格で指示したがうまくいきませんでした。そこで「英語圏でもっとも通じる表現はなんだろう」と考えているうちに、 "plain language" という用語を思い出しました。それを試したところ、プロンプトの性能が非常に向上しました。このように私のプロンプト作成・改訂作業の多くは、自然言語としての英語を使った試行錯誤です。
Q3 ここで示されたプロンプトは学術英語を優先するものですか?A3 はいそうです。詳しくは下で公開されているプロンプトを御覧ください。
【Ver. 3.4に改訂】ChatGPT学術英語ライティング添削・改訂プロンプト -- 語法添削の後にまず米国の大学入学レベルの改訂を出力し、次に学術ジャーナルレベルの改訂を出力します【Ver. 3に改訂】 学術英語語彙の使い方を学ぶためのChatGPTプロンプト英検1級などのスピーチ試験対策用の2種類のChatGPTプロンプト:スピーチアウトライン作成用とスピーチ実践・改善用 (Ver. 1.2)
Q4 GPT-4の出力内容を保証しようと思った場合は、後は英語ネイティブの「人間」に聞くしか方法はないものでしょうか?A4 今のところ「比較的信頼がおける」語法・文体においても最終判断は人間になります。ただしその人間はネイティブスピーカーである必要はないと私は考えます。それでも疑問が残れば、ChatGPTに別スレッドで別の聞き方で疑問点について尋ねればかなりの精度で問題解決します。問い方がわからなければまず日本語で問いを作り、それをChatGPTに英訳してもらった上で、ChatGPTと英語で対話することができます。いろいろ対話するうちに、かなりの問題は解決すると思います。またその英語での対話自体から英語の語感がついてきます。そうなると自分自身の判断も信頼できるものになっています。私としてはネイティブスピーカーに頼り続けるよりも、各種AI・ウェブリソースを使いこなして、自律的な英語使用者になることの方が中長期的には賢明な方針だと思っています。「究極の英語学習は、英語を使うこと」と信じています。なお、文体については、遠田和子 (2018) 『究極の英語ライティング』などの本を一読しておくことをお勧めします。
開催日時 2023年10月13日(金)10:30 - 13:001.「はじめに」喜連川 優 情報・システム研究機構長2.「ご挨拶」塩見 みづ枝 文部科学省 研究振興局長3.「AIと著作権について」籾井 圭子 文化庁著作権課長4.「大学等発スタートアップの抜本的強化について」迫田 健吉 文部科学省 科学技術・学術政策局 産業連携・地域振興課 産業連携推進室長5.「大学英語教育におけるChatGPT活用型授業実践:英語教師が認識する生成系AI活用の可能性と限界」柳瀬 陽介 京都大学国際高等教育院 教授6.「中級プログラマによる生成AIの活用事例紹介」伊東 栄典 九州大学情報基盤研究開発センター 准教授7.「大規模言語モデルと対話システム」東中 竜一郎 名古屋大学大学院情報学研究科 教授8.「VRメタバースと草の根の学びの場」三武 裕玄 明治大学総合数理学部先端メディアサイエンス学科 准教授9.「ディスカッション」おわりに喜連川 優 情報・システム研究機構長