以下の記事は、私が自分のX(旧Twitter) に投稿していた文章を再掲したものです。
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『日経トレンディ 2023年11月号』の特集1「ずるいChatGPT式英語&エクセル」は充実していました。『日経トレンディ』といった雑誌がこのような特集をすることにより、AI活用法はビジネスパーソンへ一層普及するでしょう。同様の現象はやがて、英語教師・難関大学受験生・英語が苦手な中高生などのさまざまな層でも起こるでしょう。英語教師が好むと好まざるにかかわらず、社会の方から英語学習のあり方が変わると私は予想します。
AI活用に反対する英語教師の多くは、「学生・生徒がAIだけで課題を済ませてしまう」ことを反対理由として挙げます。しかし、厳しい言い方をするなら、そういった教師は日頃から学習者に学びの意義 (WHY) を語っていないのではないでしょうか。だから学習者が英語学習に意味を見出していないと私は推測します。
残念ながら多くの英語教師は、学習内容 (WHAT) だけ提示して、それに少し解説を加えるだけのような授業をします。最近の英語教師は、英語の練習方法 (HOW) に熱心で、学習者の技能習得向上を目指しています。(HOWに熱心になるあまり、WHATを忘れる教師もいますが、それについてはここではこれ以上述べません)。しかし教師は、WHATとHOWを扱うだけでは不十分です。WHYを伝えなければなりません。
なぜ学ぶ必要があるのかというWHYを、説得力ある形で眼の前の学習者のために伝えなければなりません。WHYは、「グローバル社会だから」といった建前や「単位がないと卒業できないから」といった脅しでは、説得力をもちません。学習者に、「なるほど、この先生は、まさに私たちのために意義を語ってくれている。この人の態度や物腰からすれば、この人は間違ったことはおそらく言っていないだろう」と思ってもらえるような言動を日頃からすることによって、教師はWHYを伝えるべきです。
WHYを伝えられない学校英語教師の教室は、これからますます空々しくなるのではないでしょうか。そのためには学校英語教師も、日頃から私生活で英語を使い、英語を学ぶことの意味を実感しておく必要があります。英語使用は、英語報道に接することでも、読書をすることでも、映画を見ることでも、英語話者の友人と話をすることでも、海外旅行をするでも、何でもいいと思います。
大切なことは英語教師が我が身で英語を使い、そのことによって英語を学ぶ喜び(および苦しさ)を感じることです。そうやって英語を学ぶ際に、英語教師もAIが本当に役立つことを発見するでしょう。
そして教師は、英語の学びの喜び(と苦しさ)を整理して、自分が担当する学習者のために翻案して伝える必要があります。(もっともそのためには時間的余裕が必要ですから、教師の待遇改善についてはこれからも声をあげてゆくことが必要です。ですが、それはまた別の話とします)。
AIが普及する時代に、英語の学びのWHYを語れない学校教師は、虚しい職業生活を送ることになるでしょう。
これまた偉そうな言い方になりますが、英語教師は、AIを使わない理由をひねり出す暇があったら、とりあえずAIを使ってみるべきです。そしてAIがどれだけ英語学習や授業準備に役立つかを実感すべきでしょう。