2025/02/03

AIを活用した英会話練習のすすめ―7つのChatGPTプロンプト(カスタムGPTs)の紹介

  

 英語を話せるようになるためには、実際に英語を口にして練習することが欠かせません。水に入らずに泳げるようにならないのと同じように、ただ英語の音声を聴いているだけでは英会話力は身につきません。ところが、多くの日本人は「話し相手がいない」「話す内容が思い浮かばない」といった理由で、英語を話す機会をつくりにくいという問題を抱えています。

 この課題を解決する方法として、AIを使って英語を話す練習をする手段が注目されています。AIならば、好きな時間に自由に会話練習ができるだけでなく、多様なトピックにも対応してくれます。そこでこの記事では、ChatGPTChrome拡張機能Voice Control for ChatGPT(以下Voice Control)を使った英会話練習の方法、そして筆者が作成した7つのプロンプト(カスタムGPTsをご紹介します。

 

 

1. Advanced Voice ModeよりVoice Controlを推奨する理由

 ChatGPTにはAdvanced Voice Modeというハンズフリーで会話できる機能もあります。しかし、初級・中級者は、英語発話が始まるまでに時間がかかったり、途中で考え込んでしまったりしがちです。そうなるとAdvanced Voice Modeでは、AIが先に話し出してしまったりするなど、案外使い勝手が悪い面があります。英語をスムーズに話せない学習者の場合は、落ち着いて話せる環境が望ましいため、パソコン上のChrome拡張機能Voice Controlを活用することをお勧めします。(Voice Controlのインストール方法などはこちらの記事をご参照ください)。

 Voice Controlでは、自分の発話の開始と終了をクリックで指示できるため、自分のペースで話せるという利点があります。Advanced Voice Modeのように応答が即座に返ってくるわけではありませんが、苦手なスピーキングの練習だと割り切れば、その遅延は大きな問題にはならないでしょう。

 また、Voice Controlを使っているとパソコン画面上に英語の書き起こしが表示されるため、ついついそれを読んでしまいがちです。でも文字を見たくなければ目をつぶってVoice Controlからの音声を聞けばいいだけです。また考えてみますと、リスニングが苦手な方の場合はむしろ文字を見ながら音声を聴くことができるので、学習者にとっては大きな助けになります。さらに、再生ボタンを押せば、何度も同じ発話を繰り返し確認できます。その際は目をつぶって聞けばいいでしょう。このように、AIとの英会話を、人間相手の英会話とは異なる「準備段階」と割り切って活用すれば、AIは非常に有効な学習手段となります。

 

 

2. 7つのプロンプト(カスタムGPTs)とその特徴

 この記事で紹介する7つのプロンプトは、筆者が作成したカスタムGPTs―自分専用のチャットボットです。カスタムGPTsを使うと、ユーザーは長いプロンプトを入力せずとも、ワンクリックで望みの機能をChatGPTに指示することができます。もし以下のカスタムGPTsの中で気に入ったものがあれば、ブラウザーでブックマークをつけてください。あるいはChatGPTの画面のExplore GPTsをクリックして、検索窓に “Yosuke Yanase” と入力すると私が作成したカスタムGPTsが現れます。お気軽にご利用ください(ChatGPTの無料ユーザーの方はカスタムGPTsが使えないので、オリジナルプロンプトのコピーをChatGPTに入力して会話を始めてください)。

これらのカスタムGPTsのほとんどはこのブログでこれまで紹介したプロンプトを元にしたものです。オリジナルのプロンプトをリンク付きで公開していますので、ご興味のある方は参考にしてください。なお、これらのカスタムGPTsは、私がこれまでブログで公開してきたプロンプト同様、予告なしに改訂することがあります。もし改善のアイデアがあれば、私の X Twitterにお知らせいただけたらありがたいです。

 

プロンプト1English Conversation Tutor自然な英語への修正と要約つき会話

1つ目は、もっともオーソドックスな会話用のプロンプトです。自分が発話した英語を、できるだけ自然な表現に直してくれる設定になっています。会話の最後には要約と覚えるべき有用な表現も10個提示されるので、会話の表現をもう一度復習できます。[オリジナルプロンプト

 

プロンプト2Debating Partner 英語ディベート練習

2つ目は、ディベート用のプロンプトです。ディベートは、相手の意見に対して必ず反論をするという単純なゲームなので、割り切って短い時間で素早く英語を話す訓練になります。まずはスピーキングの速度を上げたい人に適しているでしょう。[オリジナルプロンプト

 

プロンプト3Ask Me Questions! 質問力を鍛える会話

3つ目は、質問をすることが苦手な日本人学生向けに設計されています。日本の学校教育では質問する機会があまり多くないため、相手に対して興味深い質問を投げかける習慣が十分に育っていません。そこでこのプロンプトでは、留学生の自己紹介を受けて、ひたすら質問を投げかける練習を行います。 [オリジナルプロンプト

 

プロンプト4Role-play Conversation ロールプレイ

4つ目は、具体的な場面を設定してAIとやりとりするプロンプトです。たとえば病院での医者と患者の会話、京都の和食店での店員とお客の会話など、自分が想定するシーンを具体的に描写するほど、AIは的確に応じてくれます。海外での受診方法や、バイト先で英語対応に困っているときなどに活用してください。オリジナルプロンプト

 

プロンプト5Positive Life Coach日の振り返りとポジティブ思考

5つ目は、筆者がほぼ毎日利用している日々の振り返り用プロンプトです。1日の出来事を英語でできるだけ詳しく語り、感じたことや考えたことを共有すると、AIが「今日起こった良いことを3つ挙げてください」と問いかけてくれます。もし「3つも思いつかない」という時には、AIに助言を求めると、意外なポジティブ要素を見出してくれることがあります。

 英会話では、話す話題が次第になくなってしまうという人も、その日あった出来事や考えたことを語ることでしたら必ずできます。またそういった内容は、自分の感情に即した内容なので、表現が身近に感じられ、英語がより「身につき」ます。さらに、一日をポジティブな視点で振り返ることで、気持ちよく1日を終えられます。ぜひ毎日使ってほしいプロンプトです。

 

プロンプト6Socratic Tutor ―得意分野の知識を深める会話

6つ目は、自分のよく知っていることを英語で説明すると、AIがソクラテスのように深堀りの質問をしてくれるプロンプトです。自分が学んだ専門科目の内容やレポートで書こうと思っている考えなどについてソクラテス風の質問を受けることで、新たな気づきや表現を得ることができます。知的に面白い会話になるため、少し英語力に自信がついてきた方や専門知識を英語でアウトプットしたい方におすすめです。[オリジナルプロンプト

 

プロンプト7Counselling Session AIカウンセラー(要注意)

最後の7つ目は、悩みを相談するAIカウンセラーです。なかなか人に言いにくい悩みでも、AIは否定せずに寄り添ってくれます。ただし、このプロンプトは利用者を無条件に肯定するように作っているため、いつもいつもこれだけに頼っていると危険な場合があります。アメリカでもAIへの過剰な感情移入が問題になる事例が報告されています。ですから、日頃の悩みはできるだけ5番目の「一日の振り返り」でカバーし、本当に辛いときだけ7番目のプロンプトを使うようにしてください。[オリジナルプロンプト

 

 

3. GPT Builder を使ってプロンプトを作る方法

 GPT Builder という機能を使えば、AIと対話しながら簡単に自作のプロンプトを作成できます。作成後も編集が可能なので、まずは自分だけが使えるプロンプトを作って試してみると面白いでしょう。

ただし、筆者自身は最初に自力でプロンプトを書く方法を習得したため、GPT Builder を使うと「便利すぎて不自由に感じる」という逆説的な感覚を覚えることもあります。AIがどのように私の意図を理解しているのかが見えにくくなるからです。

 しかしカスタムGPTsを作っているうちに、以前書いたプロンプトをそのままGPT Builder に入力し、少し編集するだけで十分に活用できることがわかりました。時間があれば、最初に自分で論理的にプロンプトを組み立てる練習をし、その上でGPT Builder を利用してみると、より深くAIとの対話を理解できるでしょう。

 

 

4. 発音の悩みとYouTube動画の活用

 最後に、Voice Controlの音声認識が厳しすぎて、英語の発音を正確に認識してもらえないと感じる方もいるかもしれません。そういう場合には、まずは下のリストに掲げたYouTubeの発音練習動画を見て、発音を改善してみましょう。十分な発音練習を積むことで、AIとの英会話がよりスムーズになります。

 

【まとめ記事】英語の発音を自学自習できるYouTube動画のリスト

 

 

5. まとめ

 スピーキングでは、実際に声を出して練習することが不可欠です。発音は筋肉運動ですから、実際に口を動かさないと練習になりません。現実には、スピーキングを練習しようと思っても英会話の相手や話題に悩む人が多いですが、AIを使えば場所や時間を問わず、好きなトピックで話すことができます。Voice ControlGPT Builder などのツールを上手に活用し、皆さんも気軽に英語を話す機会を増やしてみてください。紹介した7つのカスタムGPTsを参考にしながら、自分に合った学習方法を見つけ、英語力を着実に高めていきましょう。そしてやがては外に出て、実際の人々と語り合いましょう。英語が話せると一気に世界が広がりますので楽しいですよ。


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情報開示:上の文章の作成法は以下の通りです― (1) 私がGoogle DocumentVoice Typingを使って文章を口述筆記する(句読点なし、誤字脱字や言い淀みあり)。 (2) その口述筆記を、OpenAI o1 proに文章化させる。 (3) OpenAI o1 proが出力した文章に、私が若干の手を加える―。このような方法ですと、文章作成時間が圧倒的に短くなります。しかし同時に何か大切なものが失われているようにも感じます。どんな時にこの方法を使い、どんな時に使わないか、自分でAI使用倫理を定めなければと思います。しばらくは試行錯誤を続けながら考えます。


追記(2025/02/04)

そもそもの英会話定型表現を知らない方は下のページなどから学んでください。


英会話で有用な定型表現290のリスト(7種類58機能別)

https://yanase-yosuke.blogspot.com/2024/10/280756.html




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