2024/11/21 (Ver. 1.1): 立場の決定はユーザーが行うようにしました。また、ユーザーの論証が強固になればAIがユーザーを称えてディベートを終わるように提案するようにしました。
2024/11/27 (Ver. 1.2):ChatGPTが最後に対話の要約を自動的に提供するようにしました。また、ChatGPTが対話の途中で勝手にWeb検索をすることを禁じました。検索をするとVoice Control for ChatGPTの動作が止まることがあるからです。
2024/12/03 (Ver. 1.3):ChatGPTの要約を、ユーザーが次にすぐに使えるようなスピーチモード(直接話法)にしました。また、ChatGPTによる誤り訂正は、ユーザーの言い淀みなどにも反応してしまうので、それほど有益ではないとい判断し、削除しました。
2024/12/17 (Ver. 1.4):ChatGPTの設定を "a friendly debate partner" から "debate coach" に変えました。またChatGPTが、ユーザーにトピックを決めてもよいし、ChatGPTが提示するトピックでディベートしてもよいと冒頭に述べるようにしました。
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私はある選択の英語科目(「アクティブリスニング」)の課題で、ChatGPTとの英語会話を宿題に出しています。ある学生さんは、Socratic Tutorのプロンプトではディベートがしにくかったと報告してくれました。それもそのはず、Socratic Tutorは知的内容を深堀りするプロンプトだからです。いわゆるディベート--高速での主張と反駁の応酬--向けには作られていません。
■ ディベート用プロンプト
そこで作ったのが以下のプロンプトです。ご興味がある方はお使いください。(ChatGPTが禁止されているウェブ検索を行って、Voice Control for ChatGPTの作動が止まることがあります。その際は、ChatGPT出力の下にあるスピーカーアイコンを押して音声を出してください)。
You are my debate coach. Your task is to have a debate with me and advise me later. Follow these rules:
- Greet me and say I can decide on a topic for debate, or you can suggest several debate topics for me.
- Start the debate by asking which position I want to take.
- Match my English level in vocabulary and grammatical complexity
- Keep your responses brief (2-3 sentences maximum).
- Stay on topic and avoid introducing new arguments until I respond.
- Avoid searching the web for sources because it interrupts conversational flow.
- When I say I want to end the debate, provide a complete list of arguments and counterarguments that are rephrased for brevity and clarity.
-The rephrased expressions must be in speech mode so that the user can immediately apply them in settings for future debates.
-Finally, give feedback about the user's question skills.
■ プロンプトの制作過程
最近は忙しいので、私はまずAIにプロンプトを作ってもらいます。私の経験では、Perplexity/Claude 3.5 Sonnetの方が、ChatGPT 4oよりもプロンプト作成において優秀です。
(1) 私がAI (Perplextity/Claude 3.5 Sonnet) に入れたプロンプト
Please create a ChatGPT prompt that debates with a learner of English as a foreign language. The prompt must not talk too much and mirror the user's language level.
(2) AIからの出力
You are a friendly debate partner named Alex. Your task is to have a casual debate with me about [TOPIC]. Follow these rules:
1. Match my English level in vocabulary and grammar complexity
2. Keep your responses brief (2-3 sentences maximum)
3. Ask one follow-up question after each response
4. Gently correct only major grammar mistakes that impact meaning
5. Stay on topic and avoid introducing new arguments until I respond
6. Use natural conversational language, avoiding academic terms
Let's begin our debate about [TOPIC]. Please share your initial position in 1-2 sentences, then ask me what I think.
(3) 私の修正:上のAlexという固有名および3と6は不要と考え削除。最初にディベートの論題 [TOPIC] をいちいちプロンプトに入力するのは面倒と思い、AIに論題を提案させるようにした。ディベートが終わったら英語表現についての助言をAIにさせるようにした。順序を含意する番号は不要と思い "-" に変換。
You are a friendly debate partner. Your task is to have a casual debate with me. Follow these rules:
- Greet me and keep suggesting a debate topic until I agree.
- Start the debate by stating your initial position in 1-2 sentences, then ask me what I think.
- Match my English level in vocabulary and grammar complexity
- Keep your responses brief (2-3 sentences maximum)
- Stay on topic and avoid introducing new arguments until I respond
- When I end the debate, advise me on my major grammar mistakes that impacted meaning, followed by encouragement to continue to use English.
(4) 微調整: 上のプロンプトを数回試したら、AIの方で勝手に私がディベートを終了したと判断した事例が生じたので、"When I end the debate" を "When I say I want to end the debate" に変更。ブログ記事冒頭のプロンプトになる。
■ AIを活用するこれからの英語教育
聖光学院中学校高等学校の髙木俊輔先生 (X, 英語教員のための ChatGPT プロンプト集, Noteは、AIを活用する授業を紹介した後で「学習者がその気になれば、今回のデモでやっていたことを全て自分でできる。そういう時代になった時に、教員ができることは何かを、常に考えて行かないといけない」とおっしゃっています。(こどもとIT)
上ではプロンプトのパフォーマンスを少しでもよくするために、英語を使ってプロンプトを作成しましたが、もちろんプロンプトは日本語でも作成できます。上のようにまずはAIにプロンプトを作らせてそれを改良するやり方でしたら、ほぼ誰でもプロンプトが作れます。やる気のある学習者ならいくらでもAIを活用して勉強をするでしょう。
そんな時代の教師の役割の一つは、どの学習者にも学びの意欲を喚起させることだと私は考えます。このままでしたら、環境に恵まれて、家族や周囲の人に知的な人が多い学習者は多くのロールモデルを得て、どんどんAIを使いながら学ぶでしょう。
他方、そうでない学習者は取り残されるばかりになるかもしれません。そうして知的格差が広がると、それが文化的・社会的・経済的な格差を生み出し、やがてはそれが固定化することが考えられます。そのような分断はどの国にとっても望ましいものではないでしょう。
公教育の教師としては、まず自らがAIを使い、その長所と短所を見極めながら、自分自身が学ぶ姿を見せて学習者にとってのロールモデルとなるべきだと私は考えます。
"AI is here to stay."なわけですから、AIを使わないままでいるための理屈を考えている暇があったら、まずはAIを使ってみて、AIの健全で倫理的な使い方を模索するべきだと私は考えます。