この記事では、8/26(土)に開催されたシンポジウム(「人を育てる英語教育:田尻悟郎の授業は大学生の人生にどう影響を与えているのか」第二弾)の私の発表で使ったスライドと解説動画を公開します。ただ当日、私はコロナの後遺症でとても出張できるような状態だったので、物理的にもリモートでもシンポジウムには参加せず、解説動画だけを提供しました。
動画を作成したときもコロナ後遺症で、日頃の3割程度の体力と集中力しかありませんでした。ただそれが怪我の功名となったようで、私が敬愛する先生によれば、話すスピードがちょうどよかったそうです。
私はいつもは早口でしゃべりたおし、即興の脱線小話もよく入れます。しかしこの録画ではそんな余裕はとてもありませんでした。ですがそのおかげで、「何か面白い話が展開していることはわかるのだが、私にはその詳細がわからない」といった聴衆層を減らすことができたようです。ともあれ、録画上映が終わった時に、会場から自然発生的に拍手が起こったそうですから、それなりの内容は伝わったのではないかと思います。
このスライドと解説動画が前提としているのは、田尻悟郎先生の授業です。その授業をごく簡単に説明しますと、英語の語順や発音の仕方などについての一般的な教授をした後は、語順表を指さしながら所定の英文を暗証する課題を複数提示するものです。単位獲得のための遂行課題一覧は出されますが、それぞれの課題をいつまでにやるかどうかはすべて個々の学生に委ねられています。
学生の反応はまちまちで、すぐに課題に取り掛かる者、まごつく者、やや冷笑的に周りを見物する者などさまざまです。学生が教室のどこに座るかなどもすべて自由です。一人で黙々と練習する者、グループで助け合う者、練習もあまりできず孤立する個人・集団などいろいろな学生模様が観察されます。それが最後には、課題達成する者、それらの人に助言を求める者、TAに助けを求める者、まわりの人をさりげなく支援する者など、教室全体が学びに対して積極的な文化を作り出します。
田尻先生の授業について詳しく語ればきりがありませんが、下のスライドと解説動画は、このような授業を分析したものです。なぜ上のような設定の授業で、学習者の英語語順の身体化・自律的学習の継続・社会的協働の自発・自己肯定感の獲得といった、通常授業では達成困難なことが成就する教室秩序が成立するのだろうかというのが分析を導いた問いです。ご興味があれば御覧ください。