渡辺貴裕(2026)『教師のためのリフレクションと対話--「やってみての気づき」を授業検討会や校内研究に活かす』日本標準 は、全国の小中高の研究部が本棚に置き、校内研究の時期になる度に担当者が読んでほしい良書。
たいていの小中高では校内研究会が制度化されているが、それが形骸化され、教師が意義を感じられなくなっていることが多い。それではいけないと外部講師が呼ばれて、「エビデンスに基づく教育改善」や「国が定めた教育理念に即したPDCAサイクル」が説かれる。無論、それが役に立つこともあるが、逆に、より高度な形骸化を招く場合もある。
問題は、多くの教師と教育研究者が日頃の観察を元にした省察(リフレクション)と対話をする術を知らないことにある。その点、研究書でもあり実用書でもある本書は、問題の打開につながる。研究面について本書は、ショーンとコルトハートによる省察の考え方を平明に説き起こす。実用面では、授業検討会での発言の促し方や教師の発想を新たにする方法などを具体的に記している。
本書は、具体的な授業検討で、複数の教科の事例を取り上げている。近年は、自分の教科以外の教育書は読もうとしない人もいるが、それはあまりにももったいない。私の観察するかぎり、実力のある教師は、他教科や他校種の授業からむしろ多くのことを学ぶ。日頃自分の教科と校種で徹底的に考えているからこそ、他教科・他校種の授業から新たなアイデアを得るからであろう。他方、自分の教科・校種の本しか読もうとしない人は、日頃あまり自分で考えることをしないか、自分の領域の情報通になろうとしているか、あるいはその両方であることが多い。本書は、教師が実践者として考えることを教えているのだから、そういう人こそ本書を読んでほしい。
本書の思想は一貫している----授業は、計画だけでコントロールできるものではないのだから、教師は全身の感覚を働かせて、授業で生じた出来事の複雑さを状況ごと引き受け、教師と学習者が共にかかわれる授業を創り出す----。
こういった考えがピンと来る人には、本書はよいガイドとなるだろう。逆に、「そんなことでは授業はできません。研究にもなりません」と思う人こそは、自らの視野を広げるために本書を読んでほしい。「授業研究が栄えれば栄えるほど、現場教師が違和感を覚え、授業改善も進まない」という事態は、そういった授業研究者以外の誰も益さないからだ。