【この「時事」カテゴリーの記事は、学生さんへの課題リマインダーメールに掲載した文章をこのブログに転載しているものです。】
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OpenAI社のChatGPTについては、さまざまな論評記事が続いていますが、次の記事は、人文系の人間が未来を見据えた発言をしているという点で目を引きました。
What Would Plato Say About ChatGPT?
by ZEYNEP TUFEKCI
https://www.nytimes.com/2022/12/15/opinion/chatgpt-education-ai-technology.html
そのエッセイの要点は次のセンテンスに要約できます。
The right approach when faced with transformative technologies is to figure out how to use them for the betterment of humanity.
新たなテクノロジーを前にして私たちは熱狂したり、狼狽えたり、ことさらに平気を装ったりします。ですが、大切なことは長期的なゴールを見失わないことです。
学校教育でAIが活用されると、かつてプラトンが文字の普及がもたらすものとして表現した“Not truth but only the semblance of truth”がはびこります。
ノーベル経済学受賞者のハーバート・サイモンはかつて、“A wealth of information creates a poverty of attention”と述べました。扱うべき情報が増えるたびに、人間が払える注意力はますます希少資源になってゆきます。
同様に、AIが作り出したもっともらしい情報が知らぬ間に増えると、こんどは正しい知識を見抜く力が貴重になってゆくとこのエッセイの著者は説きます。
Similarly, the ability to discern truth from the glut of plausible-sounding but profoundly incorrect answers will be precious.
莫大な情報の中から正しい情報だけを見抜く力を学習者が育てるには、これまで以上に教師の支援が必要になるでしょう。そうなると教育格差がますます拡大し、教育資源が豊かな学校はAIを活用してますます学習者の能力が高まり、そうでない学校では情報洪水の中で溺れかける学習者が増えるでしょう。それは私たちの長期ゴールを否定するものです--私は宮沢賢治の「世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない」という洞察は正しいと信じていますーー
If A.I. enhances the value of education for some while degrading the education of others, the promise of betterment will be broken.
一部の人々がいくら嘆いてもAIの進展は止まらないでしょう。人間は、ますます増える情報の中から正しいものだけを見出すという、これまで以上に複雑な知的能力を獲得しなければなりません。大切なことは、そのための教育をすべての人々に与えるという理想を失わないことです。
The way forward is not to just lament supplanted skills, as Plato did, but also to recognize that as more complex skills become essential, our society must equitably educate people to develop them.
ですから、テクノロジーの話も、究極的には人間の話にしなければなりません。
And then it always goes back to the basics. Value people as people, not just as bundles of skills.
かつてAlan Kayは "The best way to predict the future is to invent it."と言いました。未来を創るために、私たちは人間を大切にするという基盤に立ち戻るべきです。