【この「時事」カテゴリーの記事は、学生さんへの課題リマインダーに掲載した文章をこのブログに転載しているものです。】
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Susan Napier
Hayao Miyazaki’s ‘Shuna’s Journey,’ Finally Translated Into English
https://www.nytimes.com/2022/11/02/books/review/hayao-miyazaki-shunas-journey.html
私の人生の師匠は、家の2匹のネコです。ネコを見ていると、生きる上でで大切なことは、"Food, sleep, love"であることがよくわかります。それらが満たされていれば、幸せというものでしょう。
しかし現代人はこれら3つをしばしば満たしていません。食事はファストフードばかり、睡眠は量的にも質的にも貧困、愛情はSNSの「いいね」で感じるような人は少なくないのではないでしょうか。
The New York Timesは、1983年に日本で出版された宮崎駿の漫画『シュナの旅』の英語翻訳版がようやく出版されたことを伝える記事を掲載しました。
宮崎駿は漫画家になりたいという希望をもっていたものの、親に反対され、大学では経済学を学びました。一方で在学中にも児童文学を読み漁り、やがては漫画・アニメの道に進みます。
しかし経済学の勉強は無駄にはならなかったようです。この『シュナの旅』は冒険物語ですが、秘剣や財宝を求める旅を描いたものではありません。主人公が求めたのは種子でした。
『シュナの旅』の世界では人身売買が横行しています。穀物の種子を求めるためです。しかしその種子は蒔かれても芽を吹くことがないものでした。(私はこの漫画を持っているはずなのですが、今手元になく、ストーリーをきちんと確認できません。ここの記述はNYTの簡単な記事に基づくものであることをお断りしておきます)。
この物語設定の背後には、宮崎駿経済学の知識があったのではないかとNYTの記事は推測しています。
Perhaps inspired by his study of economics, Miyazaki limns a society based on a ruthless and barren form of exchange, where human beings are bartered for seeds that cannot be sown but only consumed.
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Shuna’s story is an uplifting one, and children will appreciate its adventure, mystery and above all the immersive world that the book draws us into. At the same time, its depiction of the barter system offers a tutorial in economics, while its emphasis on the need for living seed is a lesson in sustainability.
人々が、何世代にもわたって植え続けることができる種子をもっていない状況は、なんだか現在を暗示しているようです。蒔いた種が生み出した穀物を食料としながら、その一部を次の年に蒔くというのは太古からの慣習ですが、それが今、開発された新品種の権利保護という商業的動機で制限されています(「種苗法」)。この他にも、種子をめぐる権利上の争いは世界規模でなされているとも聞きます。
もっとも私はこういった問題についてほとんど知識をもっていませんので、ここで小児的正義を訴えたり、逆に妙に大人顔をしてわかったふりをすることは控えなければなりません。
ただ、人類はこれほどに科学技術を資本主義社会で発展させたにもかかわらず、私の師匠が教える"Food, sleep, love"に不安のない社会を作り上げていないことが気になります。
人間の知性はこれから人間と社会と地球をどう変えてゆくのでしょうか。科学者こそ文学、ひいては児童文学、さらには漫画を読んでほしいと私は思っています--逆に言うと、漫画ばかり読んでいる者は科学を勉強しろということですが(自虐的笑い)--。