こうした現象は、柳瀬先生が講演中に言及されていたように(注)Tyranny of Matrics『測りすぎ』の中で、喝破されていたものです。本書で私の印象に最も残っているのは、(うろ覚えですが)「データはそれが取るに足らないものとされ、重要だと人々に認識されていない時にこそ有用である」という一節です。内田樹先生やエマニュエル・レヴィナス師の一連の著作を渉猟し、学習指導要領で目指されていたコミュニケーション能力や現在目指されている思考力・判断力・表現力、学びにむかう人間性などは、それを目標として目指し、評価するものではなく、何か他の目標(言語習得など)を目指す内に、事後的に振り返ってみると身についていたな、と己が振り返るものであると考えるようになりました。
そこから「目指さずに目指す」という自家撞着的で、己の言葉に二重線を引きながら語るような言葉を、自身の思想の中心に据えるようになりました。日々の教育活動において実践することはもちろん、「目指さずに目指す」を理論化することはできないかと画策する毎日です。上述したTyranny of Matricsの一節は「目指さずに目指す」を社会科学的に表した言葉だと思い、非常に嬉しく感じたことを覚えています。こうした思想を体系化、理論化することはできないかと市井で(全く体系的でなく、素人同然の)研究を続けています(本当は大学院などで本格的に学びたいという気持ちもあるのですが、経済的事情や家庭の状況などもあり、なかなか思いを実現させることが困難なのが現状です)。measurement/ratingとevaluation/appreciationは、こうした私の研究を押し進めてくれるものと考えていますが、なかなかそれを学ぶことのできる書籍や論文を見つけることができていないのが、正直なところです。お忙しい中恐縮ですが、何か取っ掛かりとなるような文献をご教示いただけると大変嬉しく思います。
(注) 柳瀬が講演中に言及しようと思いながら著者名と書名をとっさに思い出すことができなかった書籍は、上に書かれているTyranny of Matrics『測りすぎ』ではなく、下のリストに掲載したKenneth J. GergenとScherto R. GillによるBeyond the Tyranny of Testing: Relational Evaluation in Educationです。