2019/06/08

知的な英語を使いこなせるようになりたい大学生のために

追記
私が所属する京都大学・国際高等教育院・附属国際学術言語教育センター・英語教育部門のウェブサイトでは、学生さんの自律的な英語学習・使用を支援するための情報を多く提供しています。特に以下のページなどをご参照ください。


京都大学自律的英語ユーザーへのインタビュー

英語学習相談:よくある質問





■ 前書き

(1) さらに英語を勉強したい大学生のために書きました:現在の勤務校では一回生の全学共通科目としての英語(ライティング-リスニング)を教えていますが、その中で「英語をもっと使えるようになりたいのだがどうしたらよいか」といった質問を受けることが多くなったので、ここに私なりの助言をまとめてみました。

(2) 助言の前提:ここでの助言は、学習者にある程度の英語力があり、英語使用を通じて自分の知的世界を広げ深めたいという動機をもっていることを前提としたものです。


■ 目的

(1) 英語を通じて知的信頼関係を構築する:ここに書いている助言は、「世界各地の英語話者と知的交流ができ相互信頼関係を築くことができること」を目指すものです。英語で話したり書いたりする中で、聞き手・読者に「あ、この人はきちんとした知性をもった人だ」とすぐにわかってもらえるような英語のスピーキング・ライティング能力を身につけることを狙います。そのためには日頃から知的な英語を聞いたり読んだりすることをそれほど抵抗なく習慣化できるだけのリスニング・リーディング能力を獲得することを目指します。そうやって言語や国境の壁を超えた知的信頼関係を構築し人生を豊かにすることが今回の助言の究極の目的です。

(2) Story, Style, Basicsの三つにおいて英語力をつける: ここでは英語力をStory, Style, Basicsの三層で分けて考えます。Storyとは話全体の流れ、Styleとは話者・筆者の知性や個性を示す文体的な特徴、Basicsとは基本的な文法・語法・句読法などの知識です。ここで目指しているのは、(i) 人の心をとらえるStoryの形とは何かがわかり、自分でも自らが伝えたいことをそのような形に編成できること、(ii) 知性や個性はどのようにStyleで表現されるかを理解し、自分でも目的に応じて文体を使いこなすこと、 (iii) 自分が目指すStoryとStyleを大きな問題なく表現できる程度にBasicsを習得すること、の三つです。日本の英語学習では、StoryとStyleが軽視されていますし、いわゆる「ネイティブチェック」(有料・無料の英文校閲)でも修正はBasicsレベルだけにとどまる場合が多いので、ここではストーリーテリングと文体の使い分けを重視します。


■ 原則

(1) 投資は必要最小限に留める:英語学習へのお金と時間の投資は必要最小限に留め、そこから最大の効果を生み出すことを原則とします。「何がなんでもネイティブのような完璧な英語を使えるようにする」といった英語マニア的な勉強は目指しません。そんな勉強にかけるような時間は、英語以外の勉強や私生活の充実に充てる方がよい人生につながるという信条をもっているからです。

(2) 学習言語を英語にする:英語を学習するために使う言語をできるだけ日本語から英語に変えることを原則にします。英語を日本語解説で理解することを禁じるわけではありませんが、英語は英語で理解することをできるだけ行います。そのことにより、英語表現の間の関係がネットワーク的に理解できるからです。英語表現をいくら知っていたとしても、それらの表現が孤立したままであったら、一つの英語表現が他の英語表現になかなかつながらず英語をうまく話したり書いたりすることができないものです。また日本語ではなく英語で英語を学ぶことより、英語使用に関するより多くの情報をより安く(しばしば無料)で得ることもできます。

(3) 分析的学習と統合的体験を併用する:語学の才能に恵まれた人でしたら、「英語をシャワーのように浴びる」や「英語をひたすら音読する」ことだけで英語がうまくなるのかもしれませんが、多くの人は分析的に絞って学習しないとなかなか英語が上達しません(またそもそも才能に恵まれた人も、分析的な訓練を自らに課すことで高いレベルに到達できると私は考えます。自己分析をしないイチローなんてありえません)。
 とはいえ、細かく分割された勉強ばかりしていても、学習内容を統合的に使いこなすことはできません(全体は常に部分の総和以上のものです--ゲシュタルト心理学)。分析ばかりにこだわらずとにかく英語を読み書き話し聞く経験も必要です。ある程度の分析的学習から統合的体験へ、そしてその体験の中でさらなる分析を行うといった往還が重要だと考えます。

(4) 英語学習よりも英語使用を優先する:上の原則とも重なりますが、いくら日本の英語教育に批判が多いとはいえ、ある程度学校で英語を学んだ人でしたら、自分なりに英語を使うための基礎的な学習はできているでしょう。自動車運転にたとえるなら、路上で運転することが許されるぐらいの能力はもっているはずです。それならば、後は、経験を重ねその経験から学ぶだけです。また、英語マニアでもないかぎり、自己目的化した英語学習よりも、自分の人生を豊かにする英語使用の方が楽しいでしょう。『論語』の「子曰、知之者不如好之者、好之者不如楽之者」(子曰く、これを知る者はこれを好む者に如かず。これを好む者はこれを楽しむ者に如かず)をもじっていえば「英語の知識をもっている人は英語好きにはかなわない。しかし、英語好きは、楽しみながら英語を使っている人にかなわない」と言えるかと思います。

(5) 量よりも質を優先する:どんな技能習得にもある程度の時間を費やすことが必要です。そしてある程度までは学習・練習に費やした時間と成果は正比例の関係にあるでしょう。しかしいたずらに時間ばかりかけることは賢明ではありません。というより、悪いお手本・見本を規範として学習・練習を重ねれば、悲惨な結果になるだけです。ましてや忙しい毎日を送る人でしたら、英語学習においても量よりも質を優先するべきです。


■ Basics

(1) 発音(構音)方法を知る:原則(3)に重なりますが、多くの人は「なんとなく英語っぽく」しゃべろうとするだけでは、必ずしも英語話者に通じる発音(構音)はできるようになりません。まずは分析的・理論的に個々の母音・子音はどのようにして発音されるのかを理解しておくことが重要です。もちろんそのような知識を獲得したからといってすぐにそれが自分の身体上で実現できるわけではありませんが、知識を指針とすることで、時間と共に技能を正しく向上させることができます(指針がなければ悪い癖がますます強くなることがあります)。以下のような無料・廉価のリソースを活用してください。

英語発音入門

Phonetics: The Sounds of American English

 なお、音声学の用語はとても難しく思えますが、理屈は簡単なものです。以下の記事も参考にしてください。

英語子音の発音法のわかりやすい表記

追記(2021/04/08)
Chromeブラウザーの自動英語字幕生成機能で、リスニングを「勉強」から「楽しみ」に変える



(2) 単語の発音はそのたびにチェックする:英単語を視覚的に認識できてもその正しい発音を知らなければ聞いてもわかりませんし話して使うこともできません。英単語を覚える際には面倒に思えてもその度毎に正しい発音を覚えておくことが長い目で見れば合理的行動になります。発音を覚えるには以前は発音記号をマスターするしかありませんでしたが、今は各種の電子媒体で英単語の音声を聞くことができますので周りの迷惑にならなければそちらを利用した方が直接的でわかりやすいでしょう。
 なお、Google検索に英単語を入れて、その横に(スペースを空けて) "pronunciation"と入力すると、その単語の発音に関する音声と関連情報が出力されます。そこに出てくる口の形のアニメーションは現段階ではそれほど有益ではないかもしれませんが、意外に役立つのが、その発音を発音記号を通常のアルファベットで表記していることです。英語話者がその音をどのように綴るかを知っていると、固有名詞を発音したり書き取ったりする際に役立ちます。

(3) スマホやタブレットなどで発音練習をする:スマホやタブレットには音声に反応する人工知能(iOSならSiri)や自動タイピング機能があります。機器の設定を英語モードにしておくと、これらはあなたが発音する英語に反応します。もちろん不明瞭な発音でしたら機械が正しく反応しませんから、これはお遊び程度の単語の発音練習になりますし、人工知能に話かける際は英会話訓練になります。
 ただ機械はビッグデータに基づいて反応しますから、頻出表現でしたら結構あいまいな発音でも認識してくれます。この点で面白いのが固有名詞を機械に認識させることです。これは普通の表現よりもデータが少ないですから、(特に子音を)きちんと発音しないと正しく認識してくれません。Basics (1)の知識を使って、自分の意図と機械の認識の差を分析すると、きわめて実践的な発音の勉強ができます。私はまだ試していませんが、自宅で使うスマートスピーカーは英語モードを常用にしておくと面白いかもしれません。

(4) 辞書はスマホ・タブレットにインストールしてしまう:専用の電子辞書にはそれなりのメリットがあるでしょうが、携帯に便利なのはやはり常用しているスマホやタブレットでしょう。学生さんはWeblioを使っていることが多いですが、原則(2)に基づき、ぜひ以下のアプリをインストールして活用してください。無料版でも結構使えます。

Dictionary.com

有料版をインストール(注)するのには抵抗がある人も多いでしょうが、以下のアプリなどは長期的に見ればとても安い投資です。ぜひ早いうちから学習英英(英語を外国語として学ぶ人のために親切に編集された英語辞書)を使う習慣をつけてください。英語の語感が身につきます。原則(1)を長期的に考えれば、英和を使うのは、英語での定義がよくわからない場合、専門用語の翻訳を知る場合などに限っておいたほうが効果的です。

Longman Dictionary of Contemporary English
Cambridge Advanced Learner's Dictionary
Oxford Advanced Learner's Dictionary

なお同じく有料版ですが、英文法のアプリもあります。細かく文法・語法についてチェックするのが好きな人は以下のようなアプリを使っても面白いかもしれません。

Practical English Usage
 (Oxford University Pressの書籍をアプリ化したもの)

表現のための実践ロイヤル英文法
(旺文社の日本語書籍をアプリ化したもの)

 ちなみに、私の研究室のコンピューターは現在、ラップトップに外部キーボード (REALFORCE)と二つの27インチ外部ディスプレイを接続したものです。その横にはiPadをおいていますから4つの画面を使って仕事をしています。iPadは研究室では辞書・文法書専用として使っています。ここまではいかないにせよ、皆さんがラップトップを使っているなら、自宅ではそれに大型ディスプレイを外部接続することを強くお勧めします。視力や姿勢を悪くしてしまったらその回復は困難だからです。

(5) Thesaurasも活用する:英英辞典以上にお勧めしたいのがThesaurus (類義語辞典)です。上記のDictionary.comをThesaurusへフリックするか定義画面にあるThesaurus表記をタップするだけですぐに使えます。英語を書く時には、とりあえず思いついた単語や和英辞典で出てきた単語をThesaurusに入力してください。類似表現がたくさん出てきますからそこであなたの発想を活性化してください。気になった単語をタップしたらさらにその類義語が出てきますから、あなたの語彙ネットワークがどんどん充実します。ただ、語彙力がない人は類義語を提示されてもそのニュアンスがよくわからないでしょうから、その場合はThesaurusからDictionaryのモードに戻って英語の学習をしてください。

(6) パソコンのブラウザーでも英語辞書・文法書を使いこなす:以下のサイトはパソコンのブラウザー上で無料で使えます。ぜひブックマークして活用してください。

Dictionary.com
(上のアプリと同じもの。当然Thesaurusも使える)

Cambridge Dictionary
(無料版とは信じられないぐらい情報が多い。またGrammarについても詳しい)

Longman Dictionary of Contemporary English Online
https://www.ldoceonline.com/
(例文がとても充実している)

OneLook Dictionary Search 
(ある単語がさまざまな英英辞書でどのように定義されているかを一気に調べるサイト)

OWL: Purdue Online Writing Lab 
(英語で論文を書く人なら必ず使いこなしたい便利なサイト)

追記
SKELL (Sketch Engine for Language Learning) も無料で利用できるサイトですが、例文・連語・類義語に関して莫大な情報を提供してくれます。辞書サイトの情報では今ひとつ満足できない時になど、ぜひご利用ください。

SKELL (Sketch Engine for Language Learning)
(例文・連語・類義語について莫大な情報を提供)


(7) Web検索を使いこなす:上の(6)のように専門家が作ったものではないサイトも使い方によっては便利です。例えば違いを調べたい単語を二つ並べた上で "difference" などと入力したら、その違いについて解説したページなどがあります。サイトによってはいいかげんな説明もありますが、いくつか見ると結構いい情報もあったりします(少なくとも日本語で検索するよりは、英語で検索する方が質量ともにすぐれた出力が得られます)。
 また、グーグル検索では複数の語にわたる検索をする場合、ただそれらの検索語を入力するのではなく、検索語の左右を " " で囲むことにより、それらのことばがまさにその順番で使われた結果のみが出力されます。この検索法を知らない学生さんが案外いるので私はびっくりしていますが、この検索法はぜひ活用してください。

(8) 電子的校閲手段を使う:Microsoft Wordについている「校閲」機能も馬鹿にせずに使ってください。単純ミスを減らすことができます。また有料ですがGrammarlyというアプリがあります。ブラウザー上でもMicrosoft Word上でも使えます。明らかに正しい用法を誤りと表示したり、単純ミスを指摘してくれないこともありますが、総体的に見ればミスを減らすことができますしそれなりに勉強になります(何せ自動的に表示してくれますから便利です)。それほど気が利かない助手を雇ったと思ったら、使用料を払う価値は十二分にあると私は思っています。

Grammarly


(9) 専門を英語で学ぶ・学び直す:英語の基本的表現を学ぶのにも、原則 (2) - (4) にしたがって、「英語を勉強」することよりも「英語で勉強する」ことを優先させてください。皆さんに専門知識がある場合は、英語の学術論文はそれほど難しくないことがわかるかもしれません。実際の論文から英語の定型表現を覚えてください。専門知識にまだ自信がない場合は、以下のサイトなどで高校までの学習内容を英語で学び直してください。英語の基本表現をマスターするのにはもっとも効率のよい方法かもしれません。

Khan Academy

参考:テクノロジーによる敎育の再創造: Sal KhanのTED動画


(10) 実際にとにかく話す:ここでの助言は知的な英語使用についてのものですが、あまりに最初から高度な内容を狙いすぎても逆効果かもしれません。また、実際の英語使用(特に口頭のもの)では、心理的な慣れといった要因も多くあり、原則 (5) よりも原則 (4) を優先し、とにかく場数を踏む方がよいかもしれません。すぐに思い浮かぶのは英会話学校ですが、私は原則 (1) より、大学などが提供している無料の留学生との交流などをお勧めします。 そういった機会についてはそれぞれの大学のホームページなどで調べてください。

参考:i-ARRC ポータルサイト (外国語課外学習用サイト)

  なお最近、一部の私立高校などでは、フィリピンやバングラデッシュなどの大学生・大学院生を英会話のパートナーとして選んで、ウェブを通じて会話をするビジネスを利用しているとも聞きます。私が聞いている話はいいものですが、私自身はあまりこのビジネスモデルについて知識をもっていないので、利用を考える際は自分でよく調べてください。



■  Style

(1) 日本人による優れた解説を読む:原則の(2)に反するようですが、日本人はどうしても日本語の習慣に引きづられて英語を算出してしまうので、英語がよくできる日本人が書いた書籍を読むことは非常に重要です。以下は特にお勧めです。ちなみに以下で「理系のための」といった表現が使われていても、それは自然科学系の人だけが益する内容が書かれている本ではなく文系の人にも(いや文系の人にこそ)読んでほしい内容が解説されている書籍です。

遠田和子 (2018) 『究極の英語ライティング』 研究社
(これを教科書にして授業をしたいぐらいです)

(木下是雄の類書とお間違いのないように)

倉島保美 (2000) 『理系のための英語ライティング上達法 』
("Technical Writing"という用語も覚えておいてください)。

ちなみに以下もご参考まで

文法・機能構造に関する日英語比較のための基礎的ノート
 ― 「は」の文法的・機能的転移を中心に ―


追記(2021/04/08)
Wordtuneである英文の10通りの表現法を生成し、表現の幅を広げる + AI時代の英語学習について


(2) 英語話者による優れた解説を読む:日本人の発想の癖を知った後は、やはり英語話者が英語話者のために書いた具体的な文体に関する指南書を読んでください。

Gopeng, G. & Swan, J. (1990) The Science of Scientific Writing.   American Scientist

Williams, J. and Colomb, G. (2015) Style: The Basics of Clarity and Grace (5th Edition). Pearson
(ちなみに以下は、私がこの本を授業で使った時の補助ページです)


(3) 英語の音楽性を学ぶ:書物も音声を基盤として書かれています。書かれた文章は、脳内であるいは実際に音声化されたときに心地よいものであることが必要です。その音声的な感覚を体得するためには、やはり質の高い英語音声表現を聞くことが必要です。皆さんの中にはお気に入りの英語の本がありませんか?(日本語翻訳しか読んだことがなくても結構です)近年は、英語書籍をプロの朗読家が読み上げたCDやMP3ファイルが比較的安く手に入ります。ぜひそれを家事をしながらあるいは通学途中に何度も聞いてください。英語の息遣いを身体的に感じ取ってください。村上春樹は音楽から文章のリズムを学んだと言っていましたが、Styleの習得のためにはぜひよい朗読や音声表現を聞いて、英語の音楽的な美しさを身体で理解してください。



■  Story

(1) 学術論文とはどういう文章かを理解する:そもそも学術論文とはどのような書き物なのかという基本がわかっていないと、いくら専門知識があっても、他人に読んでもらえる論文を書くのに苦労してしまいます。できるだけ早い段階に下の本を読んでおいてください。

Booth, W., Colomb, G. Williams, J. Bizup, J. Fitzgerald, W. (2016) 
University of Chicago Press.
(翻訳書(川又政治(訳)『リサーチの技法』ソシム)もありますが、原書の英語は簡単なので、原則 (2) - (4) にしたがい、原書を読むことをお勧めします)


(2) アブストラクトの書き方に学ぶ:論文のアブストラクトは、学術的なストーリーテリングの規範ともいえるものです。下の指針がなぜ共有されているかをよく分析してください。具体的なことは分野によって異なりますが、考え方は共通ですから、その共通的な指針を分析的に理解してください。

How to construct a Nature summary paragraph 


(3) TEDを集中的に視聴する:限られた時間の中で聴衆を魅了し、自分の専門分野の面白さを伝える総合プレゼンテーションとしてはTEDは極めて優れています。またこのサイトでは多くの場合、英語でも日本語でも字幕や文字書き起こしが提供されていますから、皆さんの知識や興味の程度に応じてさまざまな方法で視聴することができます。(お勧めの方法は、英語字幕で英語音声を聞き、難しかったら英語書き起こしをゆっくり読むことです)。「英語を学ぶ」という観点からは、お気に入りの動画を何度も何度も見ること(あるいは音声だけ聞き流すこと)がよいでしょう。ちなみにTEDはスマホやタブレットにも専用アプリがあります。

TED: Ideas worth spreading

参考:広大教英生がお薦めする英語動画集:はじめに

追記(2021/02/18):
下のサイトでは、TED動画のスクリプトをデータベースとした検索ができます。
TCSE: TED Corpus Search Engine


(4) The New York Timesを購読する:専門家が学会の懇親会で集まった場合、いつも専門のことを話しているかといえばそうでもなく、専門から派生したり関連したりしている話題でもりあがったりもします。そういった会話から私たちはお互いの知性(一般教養)を値踏みします。教養を身につけるのは一朝一夕ではゆきません。だからこそ英語を使って教養を深める習慣は今から始めるべきでしょう。原則 (5)を考え、The New York Timesをお勧めします。記者や寄稿者のレベルが高く、Storyの点でもStyleの点でも非常に勉強になります。これもスマホやタブレットに専用アプリがあります。皆さんの一生のことを考えると、月額の購読料は決して高くないと思います(原則 (1) に基づき、私は無駄な出費は勧めませんが(たとえば○○とか××とか(笑))、こういったお金は使うべきだと思います)。

The New York Times

ちなみに私は読んだNYTの記事の一部を自分のツイッターで流しています。ご参考まで。

Yosuke YANASE (柳瀬陽介) @yosukeyanase


(5) Podcastを聞き流す:英語圏では車で通勤したりする際にPodcastでニュースを聞いたりする習慣がどんどん普及しているとも聞きます。実際、英語のポッドキャストは充実しています。私が聞くのは、音楽ストリーミングサービスのスポティファイ(有料版)のPodcastにある The Economist や The New York Times などのポッドキャストです。特に後者は毎朝読む新聞記事と連動しているので勉強としては効果的です。

(6) Storyについて理論的に理解する:「ストーリー」あるいは「物語」とは太古から人間が使い続けている認知様式であり、学術論文ですらももその様式の力を借りています。自然科学の大学教授を経て、ハリウッドの世界に飛び込んだ著者による以下の本は一度は読んでおくべき本だと私は思っています。

ランディ・オルソン(著)、坪子理美(訳)
慶應義塾大学出版会

なお、学術論文は、大枠では物語様式に沿いますが、中核部分では独自の科学規範様式にしたがいます。物語様式と科学規範様式の対比についてご興味があれば、以下をお読みください。

柳瀬陽介 (2018) 
「なぜ物語は実践研究にとって重要なのか―読者・利用者による一般化可能性」 
『言語文化教育研究』第16巻 pp. 12-32


皆さんの知的人生が、英語使用を通じてますます豊かになることを願っています。


追記(2019/10/10)
本日、前期に教えた学生さん2人が、今ひとつ充実できていない知的生活状況をなんとか打開したいと思い、私の研究室を訪ねてきてくれました。その際にした助言の1つを下にまとめておきます。

(7) 翻訳書・英語原著・英語朗読音源を統合的に使う:まずは国際的に話題になっている本を見つけてください。学生さんでしたら教師や大学院生に聞いてもいいかもしれません。あるいは大学生協を丹念に見てもいいでしょう。まずはその翻訳書を読んでください。そしてそれが面白かったら次に英語原著を読んでください。(過剰負担になるようでしたら翻訳書でアンダーラインを引いた箇所だけを読んでも結構です)。そうやって英語原著をある程度読んだら、その原著を朗読した音源を購入して、その朗読を何度も聞いてください。これに関しては聞き流しでも結構です。

可能でしたら同好の士を募って、ペアやグループで翻訳書と英語原著を読んでください。お互いに理解できたところ、理解できなかったところを言語化してください。さらにはその本の内容を留学生に説明するための練習を行ってください。そうやって練習しておくと、実際に留学生や英語話者と会った時にこの本について語ることができます。

要は、翻訳書・英語原著・英語朗読音源という3つのメディアを一体化して理解を深める。ある程度理解したら、それを自分なりに言語化することで受容的言語技能(リーディング・リスニング)と発信的言語機能(スピーキング・ライティング)を連動させるということです。これはあなたの知的な興味と英語力を統合させるということでもあります。バラバラな断片的知識・技能よりも統合的な知識・技能の獲得を目指してください。

ちなみに私が本日その2人の学生さん(社会科学系志望)に薦めたのセットの1つはこれです --『民主主義の死に方』、How Democracies Die(ペーパーバック)、How Democracies Die(朗読音源)。選択する際は、きちんとした内容をもっているか、自分が心底読みたいと思っているか、という2つの基準を大切にしてください。そして基準を充たすものに対しては、バイトをしてでも、ある程度の身銭を切ってください。情報は何でもタダということはありませんから。


追記(2020/12/23)
以下の本は良書です。現実世界で知的に英語を使いこなして自分の人生の可能性を拡げたい人には強くお薦めします。

今井むつみ (2020) 『英語独習法』岩波新書


(8) MOOCs (Massive Open Online Courses) で日本にいながら「留学」してしまう: Khan Academyでは知的刺激が十分に得られないとか、TEDでは体系的な学びができないとか思い始めたら、MOOCsと呼ばれるインターネット上の無料講義をどんどん自分で視聴・受講してみましょう。以下の固有名などを検索すれば、たくさんの講義への入り口が見つかります。授業聴講だけに限って言えば、日本にいながら留学して授業を受けるようなものですから、自分が得意な分野からどんどん学び始めてください。


Coursera
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FutureLearn
Udacity


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  2024/11/27 :Ver. 1.1にして、ChatGPTが最後に対話の要約を自動的に提供するようにしました。最初はChatGPTが中途半端な要約しか提供しなかったので、要約についての指示を詳細にしました。また、ChatGPTが対話の途中で勝手にWeb検索をすることを禁じ...