私の古巣である広島大学教育学研究科(現在は人間社会科学研究科)の教授の樋口聡先生がこの3月末に定年退職をなさるということを知りました。
私は若い時にあるシンポジウムで樋口先生と一緒に登壇させていただく機会を得て、その際に「すごい研究者というのはこういう方なのか」と感服しました。
その後、私は、広島大学教育学研究科で、講座こそ違え、樋口先生と同僚になる幸運を得ることができました。
今から思えば、もっともっと研究の話をしたかったのですが、お互いに行政仕事に追われ、なかなかそういった時間を見出すことができませんた。
それでも一度は樋口先生のご自宅に招いていただき、書斎などを見せていただいたことは本当にありがたいことでした。
また私が京都に移ってからも、一度、京都駅近くで食事をする機会を得られたことも嬉しいことでした。
樋口先生は非常に旺盛な研究活動をなさっているのですが、それでも常に温厚な笑顔を絶やさないことが私にとってはまた尊敬の対象となるところです。
樋口先生は、スポーツについての哲学的・美学的研究から「身心文化論」あるいは「美学と教育学」へと研究分野を開拓されてきました。それの研究活動は日本だけでなく、海外でも注目され、近刊としてもSomaesthetics and the Philosophy of Culture: Projects in JapanがRoutledgeから刊行されるそうです。
樋口先生についての個人的なことをあまりここで私が勝手に書くべきではありませんが、樋口先生をご存知の方は誰でも知っているように、樋口先生は現在難病と闘っています。
樋口先生が病に倒れた時は私も含めて、誰もがことばを失いました。
そんな中でのこのご努力に私は頭を下げるしかありません。
そしてご定年までお勤めをお続けになったことをお慶び申し上げます。
そういう樋口先生という研究者そして人格に接することができたのは、私の人生にとって本当に大きな意味をもっています。
とはいえ私はご無沙汰ばかりしており、まったくの恩知らずと言われても仕方ありません。
しかし、さきほど樋口先生のご退職の報を聞きましたので、この文章を記しました。
樋口聡先生のこれからのご健勝とご多幸を心よりお祈りいたします。
追記
樋口先生からの許可をいただいたので、先生の著作一覧のPDFをここに掲載します。