■ Chromeブラウザで動画・音声を視聴すると、自動的に英語字幕が出てくる。
既にご存知の方も多いかと思いますが、Chromeブラウザ上で、英語の動画や音声を視聴すると、その英語音声が自動的に英語文字に変換されて示されるようになりました。
私も先ほどインストールしたばかりですが、画面上に2行ほど表示される小さな枠が出てきて、そこに文字起こしされた英語が、音声から一瞬遅れたタイミングで表示されます。
その遅れは決して不愉快なものでなく、むしろ自分で聞いた英語音声を文字で確認できるのでリスニングの学習に好都合です。
正確度については、私がThe New York TimesのArgumentという対話ポッドキャストで短い時間で試しましたら、会話で、"Sara"という呼びかけが表示されなかったり、"COVID"を他の単語として認識したりしたぐらいの小さな問題はありましたが、実用上はまず問題ありませんでした。
YouTubeで適当なサイト(JBLスピーカーのレビュー)で試してみました。これはプロのアナウンサーがしゃべっているのではなく、米国人のオーディオファンが自宅で録画・録音しているだけのものです。これも、私が短い時間で試しただけですが、一箇所ほど「あれ、それでいいのかな?」という文字起こしがありましたが、ほとんどすべての文字化は正確でした(というより、恥を忍んで言えば、「あ、そうか、確かにその英語の方が文脈に合っている」と私の聞き間違いを正してくれる箇所が何箇所かありました。)
■ リスニング学習の革命?
これらの自動文字起こし機能は、米国では本来、聴覚障害者のために作成されているようですが、私は職業柄、どうしてもリスニング教材として捉えます。
楽観的な見方をすれば、英語学習者は、問題集などの味気ない英文をいやいや聞くのではなく、自分が好きなトピックに関しての動画を、この自動文字起こし機能を付けたままずっと読み続ければ、リスニング力が確実にアップすると思います。
論語が言うように、「これを知る者はこれを好む者に如(し)かず。これを好む者はこれを楽しむ者に如(し)かず」 だからです。いやいや勉強するよりも、英語で学べることの喜びを身体で感じながら英語を長時間聞き続けることの方が、結果的には高いリスニング力がつくと思います。
もちろん、英語力が不十分な学習者は、流れ行く英語字幕を読むだけで大変かもしれません。単語力がほとんどなければ、少々英語がゆっくりだとしてもまともに字幕の英語を理解できないでしょう。反面、英語音声の特徴を分析的に学んでおくこと(例えば、深沢俊昭著(2015)『 改訂版 英語の発音パーフェクト学習事典』アルクなど) の有用性は変わらないでしょう。
また、上の私の感想は、それなりに英語を習得している者としてのものですから、さまざまな英語力の人がこの自動文字化機能を使ってみたら、それぞれに異なった感想を持つかもしれません。
しかし、英語リスニングを学ぶための教材が、教科書会社が発行するものだけにとどまらなくなったことは革命的なことだと私は考えます。
学習者は、自分が好きなトピックについて、ウェブ上で無料公開されている動画・音声を視聴し続ければいいわけです。そこで、音声を聞き続けながら英語字幕を読み続けること、いわばリスニングと速読を長時間行うことで、従来よりもはるかに楽しめながら、英語力をつけることができるのではないでしょうか。
一日の決まった時間に、パソコンの前でお気に入りの英語動画を見ることでしたら、習慣化もそれほど困難ではないでしょう。
■ 設定の仕方
私の場合は、Windows 10マシンの上のChromeブラウザを使いました。OSとChromeが最新版であれば、設定は驚くほど簡単です。
(1) Chromeブラウザの右上にある縦3つのドットのアイコンをクリック。
(2) 現れるメニューの中から「設定」をクリック
(3) 左のコラムの「詳細設定」の▼をクリック
(4) 「ユーザー補助機能」をクリック
(5) 「自動字幕起こし 」をオンにする
Googleは私たちの個人データを入手することで莫大なグローバル・ビジネスを展開していますので、厳密に言えばこの自動字幕起こしサービスは無料とは言えません。
しかし表面上は一切お金を払うことなく、このサービスが受けられることは、私からすれば驚くべきことです。
■ Evolution in Technological Innovations
私は、現在勤務している国際高等教育院・附属国際学術言語教育センター (i-ARRC) の英語教育部門長として、以下の3つのVisionsを構想しています。
Autonomy
Beyond the Classroom
Evolution in Technological Innovations
こういった機能の登場を受けて、大学英語教育も進化させ、再編成・再創造してゆかねばということを痛感させられました。
英語の学びは、教師に管理されて行うものであり続けるべきではないでしょう。
ある程度の英語の基礎を学んだ者にとって、英語は、教室の外、つまりはそれぞれの暮らしの中で、それぞれが自律的に目標やペースを決定して行うものとなるべきだと私は考えます。
大学での英語教育は、そういった自律的な学びを支援し、それだけでは偏りがち・充分でない側面を体系的に教えるようになるべきだと私は思っています。
Autonomy
Beyond the Classroom
Evolution in Technological Innovations
もしあなたの英語教師が十分な行動を起こさないのなら、自分が自分の教師になって、自律的に、教室以外の時空で、技術革新の中で自分の学びを進化させてください。
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