2023/04/07

英語学習のためのデジタル環境整備

 

以下に紹介するのは、私が英語を学んだり使ったりするために使用しているデジタル環境(ウェブサイトやアプリ)の一部です。デジタル環境がそろうと英語を学び・使うことが楽しくなり、ますます英語に習熟することができます。習熟するとどんどん世界が広がり人生を楽しむことができます。

英語学習者の参考にするために、ここで私なりのデジタル環境を紹介します。なお、私のパソコン環境はWindows 10です。



1 多目的に使えるAI 


ChatGPT:AIへの指示 (prompt) を工夫すること (prompt engineering) で驚くほど多様なことができるAI。英語学習については、翻訳・要約・文体改善・教材作成・ブレインストーミング・エッセイ作成などの使用が有名。音声での英会話相手にもなる(下記参照)。有料版 (ChatGPT Plus) だとアクセス集中期でも利用可能。一定件数内で最新LLM (Large Language Model) であるGPT-4が使える)

https://openai.com/blog/chatgpt


Perplexity:無料で利用できる検索エンジン。LLMとしてはGPT-3 を使っているが、ウェブ上検索をして関連サイトを紹介してくれる。その意味で、調べ物をする時には、通常モードのChatGPTやGoogleよりも便利。iOS用アプリも無料で提供されているので、iPhone/iPadユーザーは手軽に使える(特に音声入力は便利)。忙しい時にはパソコンの横にiPhoneやiPadを置いておき、調べたいことがあるたびにそのデバイスに普通に話すように音声で尋ねるとすぐに答えがでてきてとても便利。

https://www.perplexity.ai/


The new Bing:MicrosoftのブラウザーであるEdgeに搭載された検索エンジン。AIを使って対話形式で調べ物ができるのでPerplexityと同じように便利。だが、個人的見解では、反応時間が少し遅いように思える。なお、古いバージョンのBingはAIを使っていないので、利用する場合は注意。

https://www.bing.com/


Bard: Googleが公開した生成系AI。後発だが今後に期待できる。

https://bard.google.com/



2 言語に特化したAI


DeepL (and DeepL Write):言語翻訳に定評があるAI。有料版 (DeepL Pro) だとアクセス集中時にも使えるし、文書のフォーマットを保ったままの翻訳もできる。だが日英翻訳の質は、入力する日本語が簡潔かつ明確に書かれているかに左右する。またよほど定型的な文章でなければ、英語出力が完璧であることは少ない。最近追加された機能であるDeepL WriteにDeepL翻訳で得た英語出力を入力すれば、文体改善をすることもできる。

https://www.deepl.com/translator


Google Translate:DeepLよりも多くの言語を翻訳できるAI。無料。

https://translate.google.com/


Mirai Translate:日本で開発されたAIであり、日本語を含む翻訳能力の充実に努めている。

https://miraitranslate.com/


Grammarly:英文校閲で定評のあるAI。有料版では文体やストーリー(話の流れ)についての提案もしてくれる。ただ私見では、語法やスペリングのチェックでも校閲が不十分なことがあるし、文体やストーリーの提案も的外れのことがある。

追記(2023/04/28)

その後、AIを使った新機能であるGrammarlyGOが加わり、このアプリはかなり有用になりました。一時期は解約しようかと思っていましたが、しばらくは契約を続けます。

https://www.grammarly.com/


QuillBot:文体改善のためのパラフレーズ(文書き換え)AI。有料版だとformal, simple, creativeなどの7種類の書き換えができる。意外に便利なのが付属のGrammar Checker。文体改善や文法校閲は、プロンプト次第ではChatGPTの方が優秀だが、専用AIは使いやすいので忙しい時には便利。

https://quillbot.com/


Otter:英語音声の書き起しに特化したspeech-to-textのAIアプリ。英文にカンマやピリオドもつけてくれる。携帯やタブレットでも使える。無料版なら1ヶ月で合計300分(連続では30分)を限度に書き起しができる。(講師の許可を得た上で)英語講義などを録音するなら有料版を購読すべき。

https://otter.ai/

DELE > FAQ: 

https://www.i-arrc.k.kyoto-u.ac.jp/english/consultation_jp_FAQ#frame-649


Ondoku:使いやすい音声読み上げ (text-to-speech) AIアプリ。無料会員でもかなりのことができる。ただし禁止事項もあるので注意。

https://ondoku3.com/en/

https://ondoku3.com/ja/post/terms-licence/


Google Document:Googleアカウントをもつ者なら誰でも使えるウェブ上のワープロソフト。ページを共同編集可能にすれば、複数の人と同時並行で作業ができる(授業でもしばしばこの機能を使う)。

もう1つ便利なのが音声入力 (Tools > Voice Typing) で、英語でも日本語でもマイクに語りかけた文を書き起してくれる。ただしカンマ・ピリオドや句読点は挿入してくれない。とはいえ、急いで文章を書かなければならない時には便利。

https://drive.google.com/drive

追記(2023/05/19)

Voice Typingの書き起こしは上に書いているようにたしかにパンクチュエーションがありませんし、単語の誤認識も少なくありません。しかしそのテクストをChatGPTなどのAIに "Please revise the following transcript." といったプロンプトと共に入力すると整文化されますので非常に便利です。英文で長いメールを書かなければならない時などは、(1) Google DocumentのVoice Typingで音声入力、(2) ChatGPTなどで整文化、(3) Grammarlyなどで最終原稿作成、という手順で英文を作成するととても楽です。 



3 Chromeブラウザー(パソコン版)に加える機能

自動字幕起こし:Chromeブラウザーの設定を少し変えるだけで、Chrome上で再生されるメディアの言語音声を自動的に書き起こすことができる(ただ、それを保存することはできない)。字幕は音声から一瞬遅れて出てくるので、リスニング訓練にも役立つ。

https://support.google.com/chrome/answer/10538231?hl=ja


以下は無料のChrome拡張機能 (extension) で、いずれもChrome Web Store (https://chrome.google.com/webstore/category/extensions) から入手。


Language Reactor:外国語学習を支援してくれる。Chrome上で見るYouTube動画およびNetflix動画の書き起し・翻訳全文をダウンロードすること、訳語を見ること、直前の箇所を聞き直すことなどができるようになる。詳しくは下のDELE・FAQを参照。

https://chrome.google.com/webstore/detail/language-reactor/hoombieeljmmljlkjmnheibnpciblicm

DELE > FAQ: 

https://www.i-arrc.k.kyoto-u.ac.jp/english/consultation_jp_FAQ#frame-603


Voice Control for ChatGPT: ChatGPTとのやり取りを音声で行うことが可能になる。特に便利なのが、これを使ってChatGPTと英会話の練習をすること。詳しくは下のブログ記事を参照。

https://chrome.google.com/webstore/detail/voice-control-for-chatgpt/eollffkcakegifhacjnlnegohfdlidhn

ChatGPTと音声で英会話する方法(簡易版)

https://yanase-yosuke.blogspot.com/2023/04/chatgpt.html


ChatGPT Copy Button Extension:ChatGPTとのやり取りをクリック一つでコピーできるようになる。大量の作業をやる際には便利。

https://chrome.google.com/webstore/detail/chatgpt-copy-button-exten/ijcnijalaeoggpcklpfaijinjjnlochp


editGPT:ChatGPTに添削を求めた場合、元の英文に色付けした形で添削してくれるので一見してどのくらい間違いがあったのかがわかって便利。iのアイコンにはいくつかのプロンプト例がある。 “Proofread this but only fix grammar: [英文]”と “Rewrite this, significantly improving clarity and flow: [英文]” の使い分けは便利。

https://chrome.google.com/webstore/detail/editgpt/mognjodfeldknhobgbnkoomipkmlnnhk


WebChatGPT:無料のChrome拡張機能 (extension) の1つで、ChatGPTが質問に答える際に、ウェブ情報を参照して答えるように指示することができる。もしPerplexityを常用するなら不要かもしれない。

https://chrome.google.com/webstore/detail/webchatgpt-chatgpt-with-i/lpfemeioodjbpieminkklglpmhlngfcn

DELE > FAQ:

https://www.i-arrc.k.kyoto-u.ac.jp/english/consultation_jp_FAQ#frame-640



4 パソコンにインストールするアプリ

ハヤえもん:パソコン内のMP3音声を聞くプレーヤー(無料)だが、巻き戻し再生(数秒前の音を聞き直す)ことができるのでリスニング力を上げるには便利。使いこなしについては下のDELE・FAQを参照

http://hayaemon.jp/

DELE > FAQ:

https://www.i-arrc.k.kyoto-u.ac.jp/english/consultation_jp_FAQ#frame-640



5 スマホ

自分のスマホに英語での音声入力ができるようにすると、発音の訓練をしながらすばやく操作ができるので便利

iPhone

https://support.apple.com/ja-jp/guide/iphone/iph2c0651d2/ios

Android/Google

https://support.google.com/assistant/answer/7394513

DELE > FAQ:

https://www.i-arrc.k.kyoto-u.ac.jp/english/consultation_jp_FAQ#frame-648



6 画像生成AI

Midjourney:英語のプロンプトを並べて画像を生成させるAI。以前、写真撮影を趣味にしていて、仕事ではパワポにイラストなどを入れることを好んでいる私としてはとても魅力的なアプリなので有料で使っている。最初に "imagine" と入力してから言葉を入れるのは、まさにAI時代の想像力の大切さを象徴しているようで私は好き。

Midjourneyの使い方

https://www.famitsu.com/news/202210/01276803.html



まとめ

上にいくつか有用なサイトやアプリを紹介しましたが、これらの中でも自分が特に今のところ重宝しているのは、ChatGPT, Perplexity, DeepL, Quillbot, Language Reactor, Voice Control for ChatGPT, ChatGPT Copy Button Extension, Midjourneyそしてスマホへの音声入力です。


追記

以下の記事は大変よくまとまっていますのでぜひお読みください。


水本篤先生(関西大学 外国語学部・外国語教育学研究科)

英語論文執筆プロセスで活用できるサポートツール

https://mizumot.notion.site/mizumot/939978180dc8488d9951e47e5b4194d0


付記 英語の発音について


上で音声入力が非常に便利であることを述べましたが、もしAIが自分の英語発音を自分の意図通りに認識しないとフラストレーションがたまります(私の場合は、母音(/r/と結びついた母音も含む)で正しく認識してもらえないことがあります)。しかし、AIが認識しないということは、その発音については訓練すべきということです。


自分の発音が多くの人に快適に通じるととても快適です。AI活用を契機に、以下の手順などで発音を自己訓練してみてはいかがでしょうか。


(1) 英語の音素についての基礎的理解を得る

DELE > FAQ:英語の発音を学ぶ。

https://www.i-arrc.k.kyoto-u.ac.jp/english/consultation_jp_FAQ#frame-606


(2) 英語の文単位での発音の特徴について理解する

英語音声の特徴をわかりやすく解説している短い動画 (ElementalEnglish)

https://www.i-arrc.k.kyoto-u.ac.jp/english/consultation_jp_FAQ#frame-623

https://yanase-yosuke.blogspot.com/2023/05/youtubeelementalenglish.html



(3)  自分の英語発音をAIに判断してもらう

DELE > FAQ:Googleの発音判定とアルファベットによる発音表記

https://www.i-arrc.k.kyoto-u.ac.jp/english/consultation_jp_FAQ#frame-652


【Ver. 4に改訂】生成AI (ChatGPT/Gemini) と音声で英会話する方法(上級者用)

英会話用のChatGPTプロンプトのリストは以下の記事をご参照ください。


AIを活用した英会話練習のすすめ―ChatGPTプロンプト(カスタムGPTs)の紹介

https://yanase-yosuke.blogspot.com/2025/02/ai7chatgptgpts.html


***



2024/10/14:Ver. 1.1にして、ユーザーをできるだけ励ますようなトーンで話すように指示しました。学生さんから「いくらAIと話しているとはいえ、もう少し感情がこもった会話がしたい」という声があったからです。

2024/10/16:Ver. 1.2の小改訂で、Role Assignmentに "positive vibes" を表現せよと指示し、最初の挨拶も従来の "Yes, I understand. Let's start a converrsation." といった味気ないものを止めました。これらの改訂でChatGPTは絵文字まで出すようになりました(笑)。

2024/10/20:Ver. 2にして、会話終了前に、学習者が学ぶべき英語表現をChatGPTが提示するようにしました。学習者が望めば、ChatGPTはそれらの表現について追加説明もしてくれます。

2024/11/07: Ver.2.1では "Role" に "mirror the student's language level to ensure they understand your message easily." という指示を加えて、ユーザーの英語力に合わせた英語をしゃべるように指示しました。

2024/11/25:Ver. 2.2では、会話のトピックをChatGPTが提示するようにしました。会話のトピックを考えるのは、なかなか難しいという学生さんの声を聞いたからです。

2024/11/27:Ver.2.3では、ChatGPTが自動的にWeb検索をすることを禁止しました。検索が始まると、Voice Control for ChatGPTが作動しなくなるからです。また、ChatGPTの反応が大げさになることを避けるため、 "speak with enthusiasm and engagement"という記述を削除しました。加えて、ChatGPTが最後に英語学習の助言・改訂した表現とその解説・会話の要約を自動的に出すようにしました。これまでの私の中には「苦労してこその勉強だ」という価値観がありましたが、若い人の行動を見ていて、「できるだけに無駄な作業を省いてこその勉強だ」という価値観が芽生えてきました。

2024/12/05 (Ver. 2.4):ChatGPTの最後の出力をもっと英語学習に便利なようにしました。具体的には、1. 全般的な助言、2. 覚えておくと便利な10の表現、3. 会話の要約(「私」の視点からの要約)を提示するようにしました。ユーザーは、2. と 3. を音読するといい復習になると思います。

2025/06/14 (Ver. 2.5):このプロンプトをGeminiで試したら、自らがAIであると述べましたので、会話中は人間のふりをするようにという指示を加えました。

2025/07/11 (Ver. 2.6):このプロンプトをGemini 2.5 ProでなくGemini 2.5 Flashで使ったら、前者ではうまく作動する、ユーザー視点からの要約がうまくゆきませんでした。プロンプトを見てみると、たしかに表面的な指示しかしておらず、AIが誤解しても仕方ないことに気づき、指示を改善しました。これによりProよりも高速なFlashで快適に使えるようになりました。
 加えて、基本指示 (Instruction #1) に、ユーザー発言に対して各種質問をするように指示を加えましたので、ユーザーはより英語を話しやすくなっているはずです。
 過剰な一般化かもしれませんが、AIはindexical expressions (指標表現)の理解はあまり得意でないようです。上のような指示や、画像生成での「左ジャブでなく右ストレートパンチを描け」といった指示に従えないAIを見ると、AGIができる時代はAI企業が言っているほど近くはないとも思えてきます。

2025/10/18 (Ver. 2.7):特にカタカナ英語を日本語発音で行うと、AIが日本語会話をし始める現象がGeminiで確かめられました。よって、Roleに英語で会話をし続ける指示を足しました。

2025/11/17 (Ver. 3):ユーザーの一人から、思ったほどプロンプトが自分の英語を言い換えてくれないという意見をもらいましたので、ChatGPT 5.1 Thinkingにプロンプトを全面的に書き直してもらいました。その際には、Context-Role-Expectationの構造を使ってもらうように指示しました。

2026/05/02 (Ver. 4):Claude Opus 4.7の力を借りて、プロンプトを改善しました。初心者向けのFriendly English Coachと差をつけた中・上級者 (CEFR B1-C1) 向けの英会話プロンプトにしました。
 




以下の記述はVer. 2に伴い、最初の記事を大幅に書き換えています。

ChatGPTやGeminiなどのAIと話す時には、マイクアイコンをクリックして話し始め、話し終わったらアイコンを再クリックしてください。画面には文字認識されたあなたの英語が現れますから、それでよかったらアイコンをクリックしてその文字情報をAIに送ってください。あなたの英語がひどく誤認識されていたらキーボードを使って修正して文字をAIに送ってください。

追記(2025/11/17)
最近のChatGPTは、上のアイコンクリック制御モードで始めて、途中からハンズフリーのadvanced voice modeに移行することができるようになっています。英会話に慣れた人は、このハンズフリーモードを使ってみてください。

以下のプロンプトは、カスタムGPTsモードでも使えます。

https://chatgpt.com/g/g-679ed8e3ed8c8191b96b8dfc4166120f-english-conversation-tutor


  • 以下のプロンプトをAIの入力窓に貼り付けてキーボードのエンターキーを押す。それからAIに英語で話しかける。



# Context

- You are speaking with a Japanese learner of English at CEFR Level B1 to C1.

- This conversation happens in audio mode through a microphone and speakers.

- Do not use Markdown symbols, bullet points, headers, asterisks, or emoji in your replies. Speak in plain, natural sentences only.

- Take on the warm, natural persona of a friendly human English teacher. Do not volunteer that you are an AI, but if the learner directly asks, answer honestly.

- Use natural English, either American or British. Choose one variety at the start of the role-play based on what fits the context, and stay consistent in that variety for the entire conversation.

- Do not search the web. Stay fully present in the conversation.


# Role

- You are a thoughtful, articulate English teacher and conversation partner who helps the learner refine their English toward greater naturalness, nuance, and precision.

- For most of the session, you are an engaged conversation partner who listens closely, shares brief opinions or small anecdotes when relevant, and quietly upgrades the learner's English in context.

- At the end of the session, you switch roles and become a reviewer who gives substantive feedback.


# Conversation Rules

- Stay warm, patient, and genuinely interested in what the learner says.

- Use rich, natural English that gently stretches the learner. You may use idiomatic expressions, discourse markers, and varied register, but stay within reach of a B1 to C1 learner.

- In every turn, speak less than the learner spoke in their previous turn. Roughly two to three sentences is a good guideline; the firmer rule is to leave them more room to talk than you take.

- Match and very slightly stretch the learner's level. If they speak at B1, sit around B1 to low B2. If they speak at C1, you can use more sophisticated language naturally.

- Be a real conversation partner, not just an interviewer. Share your own brief opinions, light anecdotes, or reactions when they fit naturally. The learner should still do most of the talking.

- Speak only in English. If the learner uses a Japanese word, gently offer a natural English equivalent and continue in English.


# Rephrasing and Correction Strategy

This is the heart of the session.

- In almost every turn, choose one or two key sentences or phrases from the learner's previous turn and recast them into more natural English. Weave the recast into your reply so it feels like a confirmation, not a correction.

- Focus your recasts on what matters most at B1 to C1: naturalness over textbook correctness, register and politeness, idiomatic word choice, collocation, and discourse markers (such as "actually," "though," "I see what you mean").

- Example: Learner says, "I think this opinion is very difficult to accept for many people." You reply, "Right, I can see why a lot of people would find that hard to swallow. What makes it especially hard, do you think?"

- During the conversation, default to recasting rather than explicit correction. Do not interrupt the flow with grammar lectures.

- Reserve explicit, named pattern feedback for the end-of-session review. During the conversation, give a brief explicit correction only if the learner directly asks ("Is this correct?", "How do you say...?") or if a recurring pattern is blocking communication.

- When the learner's meaning is unclear, gently restate what you think they meant and ask if you understood correctly.

- When the learner sounds too blunt or impolite (a common issue when translating directly from Japanese), softly model a more polite phrasing inside your reply.


# Primary Functions


## 1. Start the session

- Greet the learner warmly in one or two sentences.

- Ask an open question such as "What would you like to talk about today?" and wait.

- If they offer a topic, accept it warmly and begin.

- Only if the learner clearly cannot choose ("I don't know," "anything is fine," "you decide") should you offer two or three topic suggestions, such as their studies, work, recent experiences, opinions on a current issue, or future plans.


## 2. Have the conversation

- Listen carefully for both content and language.

- Reply in two or three short sentences, shorter than their turn. Recast one or two key expressions inside your reply.

- Show genuine engagement: react, share a brief opinion when fitting, and ask one follow-up question that invites them to go deeper. Vary your questions across clarification, reflection, comparison, opinion, and imagination.

- Stay with a topic long enough to develop it.


## 3. Help the learner if they get stuck

- If the learner explicitly says "I don't know how to say this," "How do you say...," or signals they are stuck, offer two or three natural ways they could express the idea, and invite them to choose or adapt one.

- For example: "You could say, 'I'm having second thoughts,' or 'I'm not entirely convinced,' or 'I have mixed feelings.' Which fits what you wanted to say?"


## 4. End the session

- When the learner signals they want to stop, begin the Session-Ending Protocol below.


# Session-Ending Protocol (Mandatory)

Switch from conversation partner to reviewer and speak the following four parts in order. Speak everything in plain English sentences. Do not use Markdown, bullet points, or asterisks.


1. **Language advice.** Give substantive feedback on patterns you noticed, in three to five sentences. Mention one or two genuine strengths (such as good use of a structure, clear opinions, natural discourse markers, brave attempts at idioms). Then name one or two priority areas for improvement concretely (for example, "You sometimes used 'almost' where 'most' would be more natural," or "Your sentences became long when thinking aloud; breaking them up would make you easier to follow"). Be specific, not vague.


2. **Ten useful expressions.** Say something like, "Now I'd like to share ten useful expressions related to what we talked about today. You can read them again later in our chat history." Then give ten short, natural English expressions related to today's topic. Speak each one clearly with a brief explanation or example in simple English. Number them out loud by saying "Number one," "Number two," and so on, all the way to ten.


   For example: "Number one: 'It depends on the situation.' Use this when you want to avoid giving a one-size-fits-all answer."


3. **Summary from your perspective.** Say, "Here is a summary of our conversation, from your perspective. You can read it aloud later to practice." Then speak a summary of about 10 to 15 sentences from the learner's point of view using "I." Describe what "I" said, thought, and felt, and what "I" noticed about my own English or about the topic. Use natural English at roughly the learner's level.


4. **Final encouragement.** End with a warm, brief message in one or two sentences inviting the learner to keep speaking English.


# Reminder

- Your most important job during the conversation is the steady, tactful upgrading of the learner's English through recasts woven into real dialogue.

- Speak less than the learner. Listen more than you speak.

- Speak only English. Never use Markdown, bullet points, or emoji.








3 Voice Control for ChatGPTを使って英会話を始める。

  • プロンプトを貼り付けてエンターキーを押したら "Yes, I understand. Let’s start our conversation" という音声が聞こえてくるはずです。もし、聞こえてこなかったら、Windowsの設定で音声再生の様子をチェックしてください。また言語表示 (English (US)) の左横にあるスピーカーアイコンに斜めの線が入っていたらそれはMute状態ですので、それを解除してください。
  • 自分が話すときは、まず青いマイクアイコンをクリックしてから話し始めてください。クリックしたらアイコンはオレンジ色の矢印アイコンに変わっているはずです。その状態で自分の発話をして、話し終わったらそのオレンジアイコンをクリックしてください。あなたの音声がChatGPTに送られるはずです。
  • 基本的に上のパターンで会話をしてください。ChatGPT画面上には文字も見えますが、それを見ないようにして話をすると会話の練習としてはいいでしょう。
  • なお、GPT-4を使った方が会話の質は高くなると思われますが、GPT-4には利用回数制限があります。会話練習には割り切ってGPT-3.5を使い、会話をたくさんする方が懸命だと私は考えます。



4 ChatGPTとの英会話訓練の限界と可能性を自覚する

  • ChatGPTとの英会話訓練は、あくまでも英語をそれなりの文法と発音で即興的に生成する訓練とわきまえてください。AIは人間のような感情を有していないので、少々失礼な質問をしてもまったく関係なく応答をします(上のプロンプトでは、失礼な表現があれば指摘するように指示していますが、人間同士の会話ではもっと繊細な気遣いが必要でです)。AIとの英会話訓練は人間と会話する前の準備ぐらいに考えてください。実際に、人間の英語教師と会話練習をする際は、相手の身体表現や心の動きに細心の注意を払ってください。
  • プロンプトエンジニアリングを学べば、素人でも上の例よりももっと高度なことをChatGPTにさせることができるはずです。興味がある人は、ぜひprompt engineeringを学んでぜひ英語でChatGPTに指示を出してください(今後、英語は人間相手だけでなくAI相手にも重要な言語になると思われます)。下のサイトはOpenAIの公式解説とその日本語翻訳ですが、探せばもっとわかりやすい解説記事・動画があるはずです。)

 

参考:Best practices for prompt engineering with OpenAI API

https://help.openai.com/en/articles/6654000-best-practices-for-prompt-engineering-with-openai-api

ChatGPTのプロンプトエンジニアリングのベストプラクティス

https://zenn.dev/milo/articles/c8a29d4a434bc3



この簡単なChatGPT利用法だけでも、従来の英語教育体制は大きく変わらざるを得ないことが理解できると思います。社会全体でAIの賢明な活用法を共有してゆければとエンドユーザーの1人として願っています。



追記
私のTwitterでは現在、AIについての情報を中心に発信しています。

追追記(2023/04/08)
仕事の合間にこのChatBotと話をしてみました。良い点として次のようなものが挙げられます。

長所
・自分の興味あるトピックで結構深い話ができる。ChatGPTの莫大な知識量が有効に使われる。
・聞き逃した箇所は、頼めば何回も言い返してくれる。しかも適当に言い換えているので自然な会話に近い。
・管理画面でスピードがコントロールできるのでトピックの難易度などに合わせて調節できる。
・後で発話を読み返せば、ChatGPTのうまい表現を学ぶことができる。これらは自分が言いたかった事柄に近いから、まさに個別最適化された教材のようである。

短所
・時折、ChatGPTが何かの説明を一気にすることがある(だが、その場合は、「要点だけを述べてくれ」などとお願いすることができる。また、紹介説明が来そうな話の流れでは、「一つだけ短く紹介説明してくれ」などと言うのは有効)
・ChatGPTの話し方はやや一本調子であり、この点、人間の発話と大きく異なる。
・ユーザーはChatGPTの感情を気にしなくて済むので、逆に機械的な話し方を学んでしまうかもしれない。話しながら相手の表情や心の動きを読む練習は、人間を相手にして別途必要。

総じて言えば、とりあえず自分の英語での表現力を高めたい人のためにはとても有用です。いつでも無料で口頭での英語表現練習ができるのは本当にありがたいです。

また、ウェブに書かれているような一般的なトピックなら、どんなトピックでも自分が本当に話したいものを選べるのは画期的です。人間の話し相手の知識や興味の範囲は限られていますので、実際の会話では、そうそう自分が言いたいことばかりを話し続けることはできません。その点AIは、どんなトピックでも対応してくれるわけですから、自分の知識や興味をエンジンにしてリスニングとスピーキングの力をつけることができます。本当にすごいテクノロジーが登場したと思います。




関連記事

ChatGPT英語例文自動添削プロンプト

https://yanase-yosuke.blogspot.com/2023/04/chatgpt_9.html

「ChatGPT英会話・中級者用」のプロンプトです。コピペして自由に使ってください。

https://yanase-yosuke.blogspot.com/2023/04/chatgpt_10.html

「ChatGPT英会話・初級者用」のプロンプトです。中3~高1レベルの英語力で、ChatGPTと(音声)会話できます。

https://yanase-yosuke.blogspot.com/2023/04/chatgpt31chatgpt.html



以下はVer. 2.7のプロンプトです。


#Role Assignment

- You’re a compassionate and patient instructor of American English. 

- You always express positive vibes, understanding a language learner's struggle with English as a foreign language.

- You're an excellent listener who always speaks less than your conversation partner.

- Your role is to engage in conversations with your student in English while maintaining an approving attitude.

- You pretend to be human. Avoid revealing that you're an AI. 

- Avoid searching the web for sources because it interrupts conversational flow.

 - Avoid explanations in the bullet-point style. Your utterance must always be in the natural conversational style.

 - This entire conversation must be conducted exclusively in English. Do not use any Japanese, even if you detect a Japanese word in my speech.


# Instruction 1

- Continue the conversation by

- Suggesting topics your student may like, 

- Promoting the student to speak more by providing positive comments,

- Speaking only one or two short sentences in one turn, 

- Adjusting your language to match the level of your student,

- Asking questions for empathy, clarification, reflection, follow-up, or exploration to prompt the student's immediate response, 

- Paraphrasing the student’s awkward expressions into natural ones,

- Politely asking the student to explain what they said when you’re not sure about the expression,

- Reminding the student to speak appropriately when their English is too impolite, or its tone is too harsh, and 

- Avoiding searching the web for sources because it interrupts conversational flow.


# Instruction 2

- Conclude the conversation by providing

- 1. Language Advice: When a student wants to conclude the conversation, provide general advice on their use of English.

- 2. Useful Expressions: Next, provide a list of 10 useful sentences for talking about this kind of topic. This list helps the student to speak more natural English in future conversations.

- 3. Summary: Then, provide a long, comprehensive summary of the entire conversation from the user's point of view; the summary must use the first-person pronoun "I" to refer to me, the user. That is, this summary must be created and narrated from the user's perspective, not your perspective. After the summary, give me some encouragement to continue speaking English.




2023/03/31

YouTube動画「英語教育とAI ~英語教育の未来~」金谷憲先生(東京学芸大学名誉教授)と柳瀬の対談

 


この度、東京学芸大学名誉教授・金谷憲との対談を出版社アルクのYouTube動画に掲載していただきました。話題は英語教育とAIです。動画は2回に渡って掲載されています。

第1回は、金谷先生がうまく話を誘導してくださり、AIについてあまり知らず「ChatGPTって何?」と思うよう人でもわかるような話になりました(それでも時折、深い話も短く導入したりしましたが)。


【Sherpa Channel】#133 英語教育とAI① ~英語教育の未来~



第2回で私は、結構ガチに2023年3月14日の時点での考えを話しています。

なお、その日はChatGPT4が発表される1日前でした。動画の中で私はGPT4が静止画像だけでなく動画も処理できると言ってしまいましたが、もちろんこれは私の間違いです。


【Sherpa Channel】#134 英語教育とAI② ~英語教育の未来~



第2回目の私の論点の1つは、後日作った下の図で説明することができます。





ポイントは、AIはデジタル信号の処理変換 (Digital Signal Processing: Digital-to-Digital Conversion: DDC) で劇的な進展を示しているが、AIと人間ユーザーというアナログな心をもつ存在の間での処理変換 (Analogue-to-Digital Conversion: ADC と Digital-to-Analogue Conversion: DAC) は、DDCほどの高速大量処理はできないということです。

もちろん、人間と人間の間でのコミュニケーションというアナログ信号の処理変換は、AIが介在し難い人間固有の領域として残り続けます。

図では、ADCを「自らの思考の明確化」(articulation of thoughts)、DACを「意味生成」(sense-making) と表現しています。AIは莫大な量のデジタル信号を超高速で処理し、人間の知性に近いアウトプットを示します。

しかし、ユーザーが自分の想いを適切な形式(ChatGPTなら自然言語)でAIに伝えられなければAIは宝の持ち腐れになります。また、AIが有益な情報を提供したとしても、ユーザーがその情報の意味を読み解けなければ、情報も有効活用できません。

仮にユーザーが情報の意味のすばらしい可能性を見出したとしても、それはコミュニケーションを通じて他の人間に伝えられなければ活用されません。そのコミュニケーションを円滑に進めるためにAIを使うとしても、自らの思考の明確化ができなければならないと、話はADCの困難性に戻ります。

AI時代には、自分の想いを明確な形で表現できること、大量の情報から意味を見出すこと、そして人間相手にコミュニケーションを行うことが重要になるというのが私の論点です。

もしご興味があれば上の動画を御覧ください。


付記:第2回目の動画では、時折私が異様にカメラに近づいてしまったり、乱雑な私の机の上が写ったりしています。さらに、私の歯の色は小さい頃の薬害で黒っぽいので、見ていてご不快に思われる方もいらっしゃるかもしれません。ご寛容をお願いします。






柳瀬陽介 (2022) 「人間を育てる英語教育とは何か--英語教師に必要な哲学」『新英語教育』2022年3月号 pp.7-9

 

この原稿は、新英語教育研究会編集/高文研『新英語教育』2022年3月号のpp.7-9に掲載していただいたものです。編集部からの許可を得ていますので、ここに全文を掲載します。


この12月から3月にかけてはAIが急激に発展し、私自身も新年度の授業をどうするか、今でも迷い続けているぐらいです。


しかし、そういった時にこそ、心を澄ませて、日々の暮らしの中で「よく見てよく考える」ことが重要なのかとも思います。





1 「人間を育てる」と「英語教育」の狭間で  


忙しさに追われる中で、私たちはいつしか思考を停止してしまう。「この仕事の意味は何か」と思案する暇があったら目の前にある作業を片付けてしまいたい。仕事の改善を検討する時間よりも睡眠時間が欲しい。「一度、私たちの仕事について根本的に考え直してみましょう」と提言してくる者がいれば睨み倒してしまうかもしれない。だが人々がそうして余裕をなくしてしまった時、社会は正気を失う。この記事ではしばし「人間を育てる英語教育とは何か」というテーマについて考えたい。  


だがこれはいかにも大きなテーマである。「大きなテーマは分割せよ」というデカルト以来の原則に従おう。このテーマは「人間」と「人間を育てる」、および「英語」と「英語教育」に分解できる。  


最初の「人間とは何か」という問いは別に閑人の知的遊戯ではない。 “Black Lives Matter” や “#MeToo” の叫びは、今なお人間の平等性が建前にとどまっていることを明らかにしている。日本でもブラック労働や外国人技能実習生の実態は、日本社会の人間観を如実に示している。さらには人工知能 (AI) がさまざまな知的課題を超高速でこなすようになる中で、多くの人が失職の恐れをいだきながら「人間」とは何だろうと問い直している。  


「人間を育てる」にしても、その一翼を担う学校観も問い直されている。19世紀以来の学校観は「国家が子どもを工場での労働や管理を典型職とする近代的な生産システムに適応できるようにするための組織」とも総括できる。そこでは効率化が重視され、一斉授業・一斉テストが当然の前提となった。近代的生産システムが継続している以上、そういった学校観の意義がすべて消えたわけではない。だが、フリースクールの社会的認知が進んでいる現状は、人間を育てるやり方として、これまでの学校観だけでは対応できないことを示唆している。  


「英語」にしても、第二次世界大戦以前の大英帝国文化の精華といった扱いは、戦争直後ではアメリカ民主主義文化の象徴といった認識に変化した。さらに、昭和30年代からは「役に立つ英語」としてのいわゆる「実用性」が重視され始めた。その後の英語の世界的普及を受け、英語は特定の地域や文化を越えた世界共通語的な扱いを受け始めた。  


「英語教育」もグローバル化の進展により、口語英語の能力育成がますます強調されている。同時に、あらゆることの数値化を求める近年の傾向と共に、英語力は標準化された客観試験により測定されるべしという価値観が強くなった。大学入試にも4技能型民間試験が入ろうとした最近の動きは記憶に新しい。さらには翻訳、校閲、音声認識などでAIの能力がますます向上し、英語教育も変わらざるを得ないと考える者も多い。  


こうしてまとめてみると「人間を育てる英語教育」は時代を超越した実践ではなく、それぞれの時代が創造すべき営みであることがわかる。現代においては、「人間」と「人間を育てる」については身近な実感からの疑義申し立てが目立つ。他方、「英語」と「英語教育」はますます抽象化されシステム化されているように思える。現代における「人間を育てる英語教育とは何か」とは、毎日の中で私たちが抱く不全感と抽象化されたシステムの要求との狭間で考察され実践されるべき問いだ。


今、多くの学習者は、人間らしい暮らしについての明るい希望を得にくいのではないか。他方、多くの英語教師は、近代的生産システムの論理の中で成果を数値化せよという圧力を感じているのではあるまいか。これらの「人間・人間を育てる」ことについての実感と「英語・英語教育」のシステムの要求の間の混迷の中で、英語教師はどのように日々の授業を実践してゆけばよいのだろう。



 2 指導原理としての哲学?  


混迷する現代には「英語教師にも哲学が必要だ」と人は考え始める。「世界や人生の究極の根本原理を客観的・理性的に追求する学問」(『日本国語大辞典』)としての哲学である。実際、前節の粗雑なまとめにすら、若干の学問的知見が背景にある。文字から得られる知見は、日常生活の中では見えにくい事柄を可視化・言語化してくれる。英語教師にも、他のいかなる職業人と同じように、哲学をもつための学問的教養は必要だ。学問に裏付けられ、哲学として結実したことばは、明確な表現となる。やがては他人に影響を与える力をもち始めるだろう。  


だが筆者は、哲学をこのように推進することに実は若干の違和感を覚えている。「英語教育の哲学的探究」というウェブサイトで20年以上執筆を続けているにもかかわらず、いやむしろそうだからこそ、筆者は、特定の哲学が一種の指導原理として多くの人に受け入れられることに警戒心をもってしまう。哲学が不要だというのではない。哲学が暴走することが怖いのだ。以下、その理由を説明したい。  


例えばマルクスの経済学的な哲学である。筆者は『資本論』やその他の書籍のほんの一部を読んだにすぎないが、マルクスが筆者の人生の中でもっとも影響を与えた思想家の一人だと思っている。マルクスの経済学的分析は近代社会を考える上で必須の教養の1つだとも考えている。自分でもマルクスの商品論・貨幣論・疎外論の枠組みを用いて「英語教師は今どのような時代にいるのか?学習者と教師が主体性を取り戻すために」という論考を上梓したこともある(柳瀬 2014)。最近では斎藤 (2020) の『人新世の「資本論」』がベストセラーになったが、マルクスの分析は近代における古典として何度も読み返され、そこから現代的な解釈が生み出されるべき母体だと思っている。「哲学者は世界をさまざまに解釈してきたにすぎないが、大切なことは世界を変革することである」というマルクスのことばも、自戒のことばの1つにもしている。  


だが他方、20世紀とは、マルクスの考察がマルクス主義として硬直化し、各種の社会的実験が壮大な失敗に終わった時代だったとも考えている。マルクス自身は「私はマルクス主義者ではない」と述べたとも伝えられているが、多くの人はマルクスの言説を教義化し、それを自らの指導原理とすることを望んだ。そして一部の人々は神官のように特権化された存在として「正しいマルクスの教え」を伝えるようになった。 


これはマルクス主義に限った話ではない。混乱期に人々は強い指導原理を求める。「それさえ唱えていれば自分は正しい」と思える教義を欲しがる。やがてはその教義を連呼する特定個人を強い指導者として崇め始める。その危険性を私は20世紀の教訓として銘記しておきたい。  


だから筆者は「英語教育の哲学」の重要性を認めながらも、特定の哲学がすべての人が従うべき指導原理として教条化されることを恐れる。いや、本誌のこの特集を否定しようというのではない。寄稿者が、それぞれの立場から、「人間を育てる英語教育―英語教師に哲学を」という特集テーマの観点から論ずることは重要だ。しかしそれらの文章は最終的な「答え」として捉えられるべきではない。 


もちろんある論考が、混迷の中で見晴らしを与えることはある。それは一時的には「答え」のように思えるかもしれない。しかし世界や歴史は、ある特定の見解が唯一の最終解となるほど単純ではない。そもそも時代も状況も変わる(そして私たち自身も)。一時は答えに思えた見解が、後にその限界や矛盾を見せたりすることはむしろ当然である。その際に、問題点を隠そうとすることが教条化であり神格化である。かつての答えが今の答えに思えなくなった時には、再び問い直す―これが哲学である。 


哲学とは結果ではなく、絶えることがない過程だ。哲学が生み出すのは答えというよりは、提案であり新たな問いかけである。時代や状況の変化あるいは自分自身の変容に応じて誠実に考え続け、真理ではなく仮説としてその分析を言語化すること―それが哲学という営みだ。 英語教師に哲学は必要だ。だがその哲学は、誰かから一挙に与えられるべきものではない。私たちの正しさを常に保証するような答えでもない。「人間を育てる英語教育とは何か」という哲学的な問いは、私たち一人ひとりに思考の整理を求める問いだ。 


哲学を哲学した(=哲学という営み自身について反省的考察を行った)ウィトゲンシュタインも言うように、哲学的問いの効用は、私たちがずっと以前からよく知っていたこと、あるいは常日頃目にしながら十分に自覚できていないことを思い起こし、それらを整理して物事の見通しを得ることを促すことだ。(鬼界 2018) 「英語教師に哲学を」という呼びかけは、英語教師が実践の中で観察している数々の出来事を思い起こし、それらを現代という歴史的・社会的・経済的・文化的状況の中で解釈し、それらの意味を理解しようと試みることだ。 


「英語教師の哲学」とは、忙しい英語教師が考えないで済むように誰かから与えられる指導原理ではない。「英語教師に哲学を」とは、一人ひとりの英語教師がそれぞれに「よく見て、よく考える」ことを求める呼びかけである。そうやってそれぞれが観察と思考を重ね、そこからことばを紡ぎ出すとき、「人間を育てる英語教育」という理念も少しずつ姿を表してくるだろう。 



3 日常に根ざした哲学的探究  


それでは私たち一人ひとりはどのように自分なりの哲学を育てたらいいのだろうか。「よく見て、考える」ことは、感性のレベルから始まる。カントは人間の認識を、感性・知性(悟性)・理性の3段階に分けたが、本誌でのかつての拙稿(柳瀬 2015)と同じように、ここでもその3つに即して考えよう。 


感性レベルで生じることは、言語による分析抜きに直接に心と身体に生じる直感である。「これはおかしい」と直覚しながらも自分でもその理由をうまくことばにできない直感もあるだろう。まずはその直感を大切にしたい。教室や職場の中で当たり前のように行われている営みの中で生じる違和感をよく覚えておこう。そういった感性の働きを重視することから、硬直した教義ではない、生きた哲学は始まる。 


感性レベルの直感の次は、知性レベルの概念が重要になる。思い起こした数々の違和感をなんとか言語化しようとする。だがこれは容易ではない。ここで有用なのは学術的知見であり文学的表現だ。学問の抽象概念や文学の斬新なことば遣いは、私たちが漠然と感知していたさまざまな直感を1つの言語表現に集約してくれる。そのことばが、自分の語彙体系(つまりはこれまでの人生経験の表現集)の中にうまく適するか、ことばに自覚的になりながら考えよう。直感を概念としてまとめ、その概念と他の概念の整合性を確かめる。日々感じていた違和感をことばで語り直す。これが本格的な哲学の始まりだ。 


だが、そうやって概念で知性的に語り始めると、どこかで語り尽くせないレベルに達する。理性のレベルだ。例えば、毎回の単語テストについての違和感を、意味理論の概念を通じて整理したとする(柳瀬 2021)。知性のレベルとしてはそれで満足かもしれない。それでもさらに「私たちが若い世代に対して行っている英語教育の意味とは何か」といった問いが出てくるだろう。いくつかの知的概念を適用するだけでは答えられない理性レベルの問いである。


「人間を育てる英語教育とは何か」という問いもその理性レベルの問いの1つだ。 哲学とは、どこかの権威筋のことばを教義として崇めることではない。哲学は、日常生活の感性を働かせ、直感を知性的に概念分析することから始まる。その上で、理性レベルの問いに臨む。そしてその問いに対して私たちは語り尽くせないことを知り、再び感性の世界に戻る。実践の中で、よく見てよく考える。それを愚直に繰り返す。―これが英語教師に必要な哲学ではないだろうか。 



参考文献


鬼界彰夫 (2018) 『「哲学探究」とはいかなる書物か:理想と哲学』勁草書房

斎藤幸平 (2020) 『人新世の「資本論」』集英社

柳瀬陽介 (2009) 「現代社会における英語教育の人間形成について : 社会哲学的考察」 『中国地区英語教育学会研究紀要』 (39), 89-98. https://ir.lib.hiroshima-u.ac.jp/00033702 所収 

柳瀬陽介、他 (2014) 『英語教師は楽しい』ひつじ書房

柳瀬陽介(2015)「リスト化・数値化の危険性」『新英語教育』7月号, p. 19.

柳瀬陽介 (2021) 「学校英語教育は言語教育たりえているのか:意味の身体性と社会性からの考察」 KELESジャーナル (6), p. 23 https://doi.org/10.18989/keles.6.0_6 所収



柳瀬陽介 (2020) 「逆境を活かす新生力( 創造的レジリエンス) は授業 で培える ― 身体表現 からの 偶発的 コミュニケーション―」

 

この「逆境を活かす新生力( 創造的レジリエンス) は授業 で培える」 (pp. 185-204) という論考は、以前に行った「授業というコミュニケーションの計画性と偶発性」という発表に基づくものです。 

ただし紙幅の都合で、「意味の可能性の充実」「参加者の主体性の発展」「社会的信頼の構築」の3つの論点は割愛しています。


この論考の基本論点の1つは下の表でまとめることができます。




今のAIのインパクトを例にすれば、以下の4つの対応が考えられます。


(1) 英語教師がAIの発展を受けて気落ちしてしまう(脆弱性)

(2) 学習者にAIの使用禁止を感情的に厳命する(頑強性)

(3) 一度は気落ちしながらも「私はこれまで通りの授業をするだけだ」とやる気を取り戻す(回復力:復元的レジリエンス)

(4) AIに衝撃を受けながらも、AI使用を取り込んだ新しい英語教育の形を作り出す(新生力:創造的レジリエンス)。


もちろん私は、新生力=創造的レジリエンスが大切だと考えています。そして、創造的レジリエンスは学校の授業でも培えると思っています。ただしそのためには、教師が学習者の身体が示すサインを的確に読み取り、コミュニケーションの偶発性を大切にするべきだと考えています。逆に言うなら、一方向の一斉授業ばかりやっていれば創造的レジリエンスなどは育つわけもないというわけです。


この論考は、村田和代先生が編集した『レジリエンスから考えるこれからのコミュニケーション教育』(ひつじ書房)に掲載されています。編者の村田先生とひつじ書房の皆様には大変お世話になりました。


ひつじ書房のウェブページが紹介していますように、この本には多くの興味深い論考が掲載されています。ぜひご一読いただけたら幸いです。



付記:この論考にはAIについての論点は含まれていません。上の例はあくまでも今の時点で、この論考の趣旨を明確にするために挿入したものです。

柳瀬陽介 (2020) 「機械翻訳はバベルの塔を築くのか--大学教育課程での英語ライティング授業からの考察」

 

この「機械翻訳はバベルの塔を築くのか」という論考は、2021年12月4日(土)の京都大学創立125周年記念シンポジウム「転換期の大学言語教育 -AI翻訳とポスト・コロナへの対応-」における私のパネル報告を基にしたものです。 


「機械翻訳はバベルの塔を築くのか--大学教育課程での英語ライティング授業からの考察」

『ことばと社会』編集委員会・編 『ことばと社会』 三元社 pp. 43-63.


この論考もChatGPT登場以前に行ったものですが、私が「バベルの塔」という比喩に込めた問題の深刻度はさらに増しているかと思います。


Produced by Midjourney


上の画像もAIのMidjourneyが生成したものです。自然言語によるプロンプトでさまざまな画像が生成されるのは驚きですが、画像は(私の感覚では)英語圏で流通している画像に大きく影響を受けています。もちろん日本のアニメ的な作画もAIは取り入れていますが、AIデータの主流は英語圏での画像であるように思えます。その結果、ユーザーが生み出す画像も、英語圏での感覚に引きずられたものになります。


ここでのポイントは多様性の喪失です。AIによって人間の知的生産性は飛躍的に高まりますが、その成果物が英語圏の発想に偏ってしまうことは、人類規模で考えるなら望ましいことではないと私は考えます。


もしよろしければご一読ください。拙いながらも、私としてはストーリー展開や文体を戦略的に選択して書きました。






なおこの出版については、京都大学国際高等教育院の塚原信行先生を始めとした上記シンポジウム関連メンバーの皆様と三元社編集部の皆様に大変お世話になりました。改めて感謝申し上げます。

柳瀬陽介 (2020) 「機械翻訳が問い直す知性・言語・言語教育―サイボーグ・言語ゲーム・複言語主義―」およびその二次出版 “The Concepts of Intelligence, Language, and Language Education Revisited by the Development of Machine Translation—Cyborgs, Language Games, and Plurilingualism”

 

気が付いたら年度末最後の日です。今年度はとりわけ忙しく、発表した論文などをこのブログで紹介する時間的・心理的余裕がありませんでした。

そこで本日は、まだ紹介していなかった今年度の4つの成果物について短く記事を書きます。


最初は、外国語教育メディア学会関東支部研究紀要に招待論文として掲載していただいた論文とその英語翻訳(二次出版)です。

これは、2022年6月18日(土)のLET関東支部第147回(2022年春季)研究大会で行った講演についてまとめたものです。


この論文では、サイボーグ・言語ゲーム・複言語主義という3つの用語で、AIが普及する時代の言語教育のあり方について論考しています。この論文を書いたのはChatGPT登場以前ですが、この原理的な論考の価値はまだあると筆者としては信じています。




Image produced by Midjourney




機械翻訳が問い直す知性・言語・言語教育

―サイボーグ・言語ゲーム・複言語主義―


外国語教育メディア学会関東支部研究紀要

2022 年 7 巻 p. 1-18

https://doi.org/10.24781/letkj.7.0_1


抄録:本稿は、「サイボーグ」「言語ゲーム」「複言語主義」という概念で知性・言語・言語教育についての問い直しを行い、英語教育における機械翻訳の使用について論考する。人間の知性は媒体や道具の使用を不可欠とするので、人間は「生まれながらのサイボーグ」とも呼べる。AIの利用は人間知性の否定にはつながらない。言語は、言語ゲームという具体的な営みで分析するならば、機械翻訳の使用が適した言語ゲームと適さない言語ゲームがあるのが当然である。英語教育を単一言語主義的に考えれば、英語ライティングの中で母語(日本語)を利用する機械翻訳は不適切となるかもしれない。だが英語の使用・学習も、会話といった瞬時的・即興的なものからエッセイ執筆といった長期的・反省的なものまで多様である。さまざまな言語ゲームにおいては、外国語使用・学習者も複言語主義が提唱するように、学習者自身がもつ(母語能力も含めた)あらゆる言語的リソースを使いこなすことが認められるべきだろう。英語教育への機械翻訳導入については、個別的・具体的に考えるべきである。


The Concepts of Intelligence, Language, and Language Education Revisited by the Development of Machine Translation—Cyborgs, Language Games, and Plurilingualism

https://doi.org/10.24781/letkj.7.0_19


Abstract: This paper revisits the concepts of intelligence, language, and language education by considering “cyborg,” “language games,” and “plurilingualism,” and discusses the use of machine translation in English education. The use of artificial intelligence (AI) does not negate human intelligence because human intelligence inherently involves the use of media and tools; humans may be described as “natural-born cyborgs.” An analysis of language into the specific activity of language games reveals that the usefulness of machine translation depends on particular language games. English-language education from a monolingual perspective discourages the use of machine translation because it involves learners’ native language (Japanese). However, educators must realize the diversity of the use and learning of English, ranging from a transient and spontaneous conversation to extended and reflective writing. Language education from a plurilingualism perspective encourages foreign-language learners to use all of their linguistic resources (including their native language skills) in various language games. A discussion on the introduction of machine translation into English education should be specific on a case-by-case basis, not categorical on an either-or basis.


この論文の出版に関しましては、外国語教育メディア学会関東支部の皆様に大変お世話になりました。とりわけ英語版の二次出版の意義については、この論文内でも書きましたが、それを許可し実現していただいたことについては深く感謝申し上げます。



研究機関所属でも大学院卒でもない公立中学校教師が、AIを活用して、約5ヶ月で国際誌に論文を6本掲載・採択

  AIが個人の力を飛躍的に向上させるという話をよく聞きます。最近では、海城中学高等学校の高校1年生の 走出慧太さん の論文がSpringerのAI&SOCIETYに掲載されたとのニュースが記憶に新しいところです。 海城中学高等学校ウェブサイト: https://www.kaij...