2023/06/29

【Ver. 2に改訂】学習者が英語での定義と例文を通じて英単語学習をするためのChatGPTプロンプト

追記(2023/07/03)

このプロンプトはVer. 2に改訂しました。改訂のポイントは、英単語の定義を加えたこと、およびGPT-3.5でも安定して作動するようにしたことです(同じ単語リストをもった連続入力に対するプロンプトを削除)。


■ 効果

単語の例文の出力:学習者が、このプロンプトのリスト欄(下のプロンプトの最後の===で囲まれた部分)に自分が覚えたい英単語(10語から50語程度)を入力すると、ChatGPTがそれらの単語の定義と例文をリストの順番に出力します。この例文を読む(黙読・音読する)ことにより、学習者は学びたい英単語の使い方に慣れることができます。

英語と訳語の一対一対応からの脱却:このプロンプトは、英単語を覚えて使えるようになりたいと願う学習者が、英語と訳語の一対一対応ではなく、英語による定義と例文を通じて単語に習熟することを助けるためのものです。

補注:たしかに、英単語について1つの訳語だけを覚える学習法は、記憶の成否をチェックしやすく、それだけ達成感も湧く学習法です。英単語を知るきっかけとしては悪くないのかもしれません。しかし日本ではこの種類の丸暗記が多すぎるように思います。このような一対一の暗記ばかりで英単語を覚えた人は、覚えた訳語が仇となり、英文読解においてもしばしば意味を誤解します。またその単語を自ら適切に使うこともほとんどできません。ですから、日本の英語学習者が、適切な例文と共に英単語を学ぶ機会を増やすためにこのプロンプトを作りました。

例文のレベルの調整:ChatGPTが出力する例文のレベルは、入力する英単語と設定する学年レベルでおおまかに調整することができます。ChatGPTは大規模言語モデルですから、基本的に入力した単語がもっとも使われやすいような例文を出力します。難しい単語を入力すれば例文の難易度も自然に上がります。ただそれだけでなく、このプロンプトではユーザーが例文のレベルを米国の小中高の学年を示す数字で設定できるようにしました(下のプロンプトの# GOALの中の【 】の欄)。

具体的指示:小学校でしたら1から6の数字、中学校は7から9、高校は10から12の数字を入力して、それぞれの校種での学年を指定します。日本の高校1年生ぐらいの英語力の英語学習でしたら3か6ぐらいの低い数字を入れる方がよいかもしれません。逆に難関大学を目指す受験生、あるいは大学生・大学院生・社会人でしたら7か12ぐらいを入れるといいでしょう。定義や例文のレベルは、残念ながら数字の細かな変化では大きく変わりません。

学習者が自らの学びを決定する:こういったプロンプトを学習者自身が使いこなすことにより、自分が学びたい英単語およびそれらの例文のレベルを自己決定し、学習者が自分の学びは自分が決める文化が広まることを私としては願っています。上の数字のレベルは自分で自由に変えてください。






■ 想定するユーザー

高校生レベル以上の英語力をもった人:想定しているユーザーは、大量の英単語を短期間で覚えなければならない学習者で、高校生以上の英語力をもっていることを前提としています。定義も英語でなされますし、いくら学年指定を低くしても、例文の中には日本人学習者にはあまり馴染みのない単語が出てくることもありますので、中学生レベルの英語力しかもたない人が使うのは難しいかもしれません。

一般的な語彙を習得したい人:覚える英単語は一般的な単語を想定しています。高度な専門用語については、学術的には不正確な例文をChatGPTが出力する恐れがありますので、特殊な専門用語を覚えるためにこのプロンプトを使うことは推奨しません。



■ 着想

私が教えている英語科目の共通カリキュラムは、学習者が所定の単語集を使って毎週50個の英単語を学ぶことが定められています。ですが私は、機械的な丸暗記学習の弊害を懸念していますので、下のプロンプトで学習者が自ら選んだ少数の単語を深く学ぶことを勧めています。


【Ver.2に改訂】ChatGPT英語例文自動添削プロンプト

https://yanase-yosuke.blogspot.com/2023/04/chatgpt_9.html


しかしこの学び方ですと、50語すべてに目がゆきとどかないことが多く、セメスターで4回行われる共通テストで高い点数が取れないことがあります。そこで(私個人としては嫌いなことですが)テスト直前に多くの英単語を簡単に勉強する教材を学生に提供したいと考えました。指定の単語集には英語による説明的な定義がなく、かつ、例文が非常に少ないので、ChatGPTで指定する英単語を含んだ例文を生成させることにしました。

英単語を英語による定義や例文の中で覚えるのは、1つの訳語だけを暗記するのに比べると、処理する英語の分量が多くなり、一見大変なように思えるかもしれません。非効率的と断ずる人すらいるかもしれません。

しかし例文は、学ぼうとする英単語が他のどのような単語と共起してどのような文脈の中で使われるのかという情報を教えてくれます。また例文の中の他の単語についても同種の情報を与えてれます。ですから、例文に多く接すれば接するほど、英語の語彙ネットワークについての知識を密にすることができます

無理難題に聞こえるかもしれませんが、英語を使えば使うほど、英語は簡単になってきます。それだけ英語というシステムの理解が深まるからです。簡単になれば使うことが楽しくなります。それに応じて、英語をますます使いそしてさらに広く深く学べます。そうすると英語使用がますます楽しくなります。英語に関しての小理屈を日本語で覚えたりするよりも、どんどん意味深い英文に接することをお勧めします


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https://yanase-yosuke.blogspot.com/2023/06/2023.html



■ 使用上の注意

一度に入れる英単語の数:一気に英単語を覚えたい人は、50語程度を入力して大量の例文を入手して、それを読むとよいでしょう。他方、一気に多くの英単語を覚える自信がなかったり大量の英文を読むことにまだ慣れていない人は、自分が適当だと思う数(例えば10や20)の単語を入力してください。

プロンプトの変更:下のプロンプトの【 】の箇所(プロンプトでは赤字で示している)には、ユーザーの入力が必要です。最初の【 】では、1から12のどれかの数字を入力することによって、米国の小学校1年生から高校3年生までの英語のレベルを指定します(例えば米国の中学校1年生のレベルなら7を入力します)。最後の【 】には、自分が学びたい英単語を自分が適切と思う数だけ入れてください。

出力の一時停止について:単語のリスト欄にあまり多くの語を入力しますと、ChatGPTの出力が一時停止することがあります。その際には、 "Continue Generating" というアイコンをクリックしてください。

動作が不安定になった場合:何度もこのプロンプトを入力していると、定義が2度出てきたりすることが生じます。その場合は、これまでのChatGPTの履歴を一度消してからプロンプトを再入力してください。



■ プロンプト

(2023/07/03版 (Ver. 2))

※ 繰り返しますが【 】の箇所と===で囲まれた部分には、自分で適当な数字と英単語を入力してください。


# GOAL

Your goal is to produce example sentences at the level of grade 【ここに1から12の数字をどれか選んで入れる。ただし数字を入れたら両側のカッコは消すこと】 in the K-12 system of primary and secondary education in the United States.

# TASKS

1. Confirm the level of grade defined in # GOAL.

2. Select the first word in the list delimited by three equals below.

3. Produce one example sentence that contains the word selected in TASK 2 somewhere in the sentence. The example sentence must be at the level confirmed in Task 1.

4. Produce a brief definition of the word in the meaning used in TASK 3. The definition must be at the level the level confirmed in Task 1.

5. Apply the operation from TASK 1 to TASK 4 to the second word in the list until you finish selecting all of the words in the list.

# OUTPUT

- Print out the results of TASK 2, TASK 4, and TASK 3 in this order in one sequence in a numbered list format.

- Each item in the list must begin with the result of TASK 2, followed by the result of TASK 4 after a colon. The item ends with TASK 3 bracketed by double quotation marks.

===

【ここに復習したい複数の英単語を入れる。英単語はカンマで区切る方が無難です。単語を入力したらカッコは消す。ただし上下にある===は消さない。(プロンプトで指示部分とデータ部分を区分するために重要です)】

===



■ お願い

使ってみて何か感想がありましたら、Twitterの @yosukeyanase に言及していただくか、メール (yanase.yosuke.3n<*>kyoto-u.ac.jp) でご教示ください(メールアドレスの<*>はもちろん @ に変更してください)。私としてはAIを使った賢明な学び方をできるだけ社会的に共有したいと考えていますので、さまざまな意見を求める次第です。



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2023/06/27

AIを活用した英語プレゼンテーションの練習方法


 ここでは短い英語プレゼンテーションをする必要がある人のための練習方法の一つを提示します。練習プロセスの一部でAIを活用します。

下の図を御覧ください。色使いについては、ここでは交通信号の色に準じた意味合いをもたせています。赤色が最重要課題、黄色が注意を要する課題、緑色が比較的楽な課題を意味します。




第1層:開始

まず下の2つをご参照ください。プレゼンテーションの大切さとアウトライン作成のコツを学んでください。


京都大学自律的英語ユーザーインタビュー:森和俊先生(理学研究科)

アカデミアの世界に行くと、ポジションを取るときには、

最後はプレゼン勝負になります

(14:25 どのように話すと伝わるか)

https://www.youtube.com/watch?v=9UOhoud85S8&t=866s



研究のまとめ方の基本(高校生や大学1年生のための約15分のYouTube解説動画)

https://yanase-yosuke.blogspot.com/2023/06/15youtube.html



第2層:コア

このテンプレートをダウンロードして、プレゼンテーションのコア(中核)を定めてください。使用言語は日本語でも英語でもかまいません。


第3層:アウトライン

このテンプレートをダウンロードして、プレゼンテーションの骨組みを確定してください。使用言語は日本語でも英語でもかまいません(ただし下の第4層ですぐに英語を話す予定の人は英語で書いた方がいいでしょう)。


第4層:リハーサル前の準備

この層では3種類のやり方があります。自分の英語力に応じてどれかを選んでください。

第1のやり方は、アウトラインをもとにまず日本語で原稿を執筆し、それをDeepLで英訳する方法です。まだ英語では精密な思考が迅速にできない人にお勧めです。

日本語原稿作成については、下の記事をご参照ください。(2023年の秋には記事は一般公開される予定です)。この文献で示された原則を使って日本語を書くと、DeepLの英語もずいぶん読みやすくなります。ただしDeepLには時に明らかな誤訳が含まれますから、最低限の修正は自分でしてください。


「AI を活用して英語論文を作成する日本語話者にとっての課題とその対策」

『情報の科学と技術』(73巻6号 pp. 219-224)

https://yanase-yosuke.blogspot.com/2023/06/ai-736-pp-219-224.html

追記:上の文献の要点は、日本語文を書く際には以下のことを原則にしてください、ということです。以下の中でも下線部はもっとも重要ですので、常に念頭においてください。

- Essential Point First: 最初に最重要情報を述べる

- A Short Sentence with One Idea: 1 文は短くし、重要なアイデアは1 つしか入れない。 

- Consistent Perspective: 論述の視点を揃える。

- From Old Information to New Information: 読者が処理しやすい古い情報から先に出す。

- Agent+Action: 「X は(Z を)Y する」などのように、主語と動詞を明示する構文を多用する。

- Ellipsis for Clarity:できるだけ省略を減らして、AIが明確に理解できる文を書く。

追追記:DeepLの英語がぎこちなく読みにくい場合は、この段階で一度、ChatGPTに改訂してもらってください。プロンプトは、"Revise the following text for oral delivery using the Plain Language style:" ぐらいが適切です。ただ "Please revise what follows:"ぐらいだと、ChatGPTは書きことばとして改訂します。複雑な文構造をもった書きことばは、発声されるやいなやすぐに消えてゆく音声で聞くと処理しにくいので、プロンプトには "Plain Language" と "oral delivery"という用語を入れることをお勧めします。


第2のやり方は、アウトラインを参照しながら自力で英語原稿を執筆する方法です。ある程度英語を書くことに慣れている人向けです。この場合も、適宜上の赤色で示したプロンプトを使ってChatGPTに改訂してもらってください。

第3のやり方は、アウトラインを見ながら即興で英語を話す方法です。英語での瞬発的な表現力を向上させたい人にお勧めです。


第5層:リハーサル

ここがもっとも重要な段階です。スピーチの名手と言われる人は、ほぼ例外なく何度もリハーサルを繰り返しています。上の第4層で書かれた原稿を用意した人も、その原稿を読み上げることなく、あるいは最低限その原稿に時折目を落とすだけでプレゼンテーションができるまでリハーサルを繰り返してください。


第6層:ChatGPTへの音声入力

下の記事の2番めのプロンプトを使って、ChatGPTにプレゼンテーションを音声入力してください。「スピーチ実践・改善用プロンプト」の方です。


英検1級などのスピーチ試験対策用の2種類のChatGPTプロンプト:

スピーチアウトライン作成用とスピーチ実践・改善用 (Ver. 1.1)

https://yanase-yosuke.blogspot.com/2023/06/12chatgpt.html



第7層:ChatGPTからのフィードバックを得る

ChatGPTが、(1) 音声認識されたあなたのスピーチ(プレゼンテーション)、(2) そのスピーチの表現に対するコメント、(3) そのスピーチを文体的に改善した英文、の3種類のデータを出力します。これらをよく読んでください。


第8層:フィードバックを分析する

上の(1)で誤認識された単語からはあなたの発音の癖がわかるでしょう(ただしChatGPTの音声認識は常に完璧ではありませんので、過剰に自分の発音を責める必要はありません)。(2) では文法・語法の点での改善点がわかります。(3) からはより効果的な表現法が学べるでしょう。

これらの分析によって、自分の表現力を一段上のものにしてください。フィードバックをもとにもう一度、第5層のリハーサルに戻って練習を繰り返してください。ある程度練習したら再度第6層のChatGPTへの音声入力を行い、第7層と第8層の学びをより高度なレベルで行ってください。


第9層:終了

満足できるまで練習ができたら(あるいはプレゼンテーションの日が来てしまったら 笑)この練習プロセスは終了です。この練習では聴衆とのアイコンタクトなどは練習できていませんので、本番ではそういった側面にも十分に気をつけてください。ただ、この練習プロセスで英語表現についてはある程度自信がもてるようになるかと思います。




AIを使ったこのような音声言語についての練習は、いわばテニスの壁打ち練習みたいなものです。人間選手とプレーするほどの練習にはなりませんが、これまでテニスボールを打つ場所がなかった者についてはすばらしい練習となります。うまくAIを使ってください。

2023/06/26

今井むつみ・秋田喜美 (2023) 『言語の本質 ことばはどう生まれ、進化したか』中公新書

 

『言語の本質』は、知的興奮を誘う本です。著者と共に、身近な言語現象について確認・調査し考えを進めるうちに、謎が解き明かされていく感覚を得ることができます。まさにこの本の主題の1つであるオノマトペを使えば「ワクワク」する学術書です

その理由の一つは、この本が人間の言語学習の重要な特徴としている「ブートストラッピング」を本書自身が達成しているからでしょう。人間、特に子どもは、乏しい知識を駆使して仮説を立てて試行錯誤しながら驚くほど多くの学びをします。「ブートストラッピング」ということばの説明は後にして、私が本書の中核と思った箇所を少し長くなりますが引用します。


要するに、高い学習能力を持っている学習システムでは、何かのきっかけでシステムが起動されると、知識が知識を生むというブートストラッピング・サイクルによって知識がどんどん増えていくのである。単に知識のボリューム(個別の要素知識)が増えるだけではない。新しく加わる要素は既存の知識に関連付けられ、知識システムの構成要素となる。同時に、新たな知識は既存の知識を質的にも変化させる。(中略)つまり言語習得とは、推論によって知識を増やしながら、同時に「学習の仕方」自体も学習し、洗練させていく、自律的に成長し続けるプロセスなのである。(太字強調は原著)(pp. 203-204)


この記述こそは私たちが「わかった!」という感覚を的確に表現しているように思えます。私たちが何か新しいことを理解する時は、その新事項 (X) を丸暗記するのではありません。Xを理解するということは既存のA-Lといった知識が再編成され、新しい知識Mが生まれることです。抽象的な言い方になりますが、次のように表現できるかもしれません – 「ひょっとしてXって、AともBとも似てるけど、Cという点で異なっていて・・・」「つまりXは、Dとは全然違うけれど、喩えてみればEのようだけどFと対立しているGのようだというか・・・」「ああそうか、つまりHとIとJはすべてXという一点だけでつながっていたんだ!」「ということは、KかつLならMになるということか・・・」-- などと新しい知識と既存の知識の差異と関係性が明らかになり、その関係性から新たな知識が生まれるわけです。

もう少し具体的に説明を試みれば、英語がある程度できるようになった人は、英英辞典を使うのに慣れ、英語のリーディング量やリスニング量が増えてきた頃のことを思い出してください。それまでは日本語を通じてしか英語の意味を推測することしかできなかったのが、だんだん自分が慣れ親しんだ英語表現が増えるにつれ、それらの英語表現が新たな類推や推測を招き、さらに英語が使いこなせるようになった頃の感覚です。その頃は、これまでは使ったことがなかった連結で英語が創造的に使えるようになり始めたはずです。

私からすればこれが「ブートストラッピング・サイクル」で知識が知識を生むように学ぶ典型例の一つのように思えます。数学が得意な方なら、ある時を境に急にこれまで知っていた数学体系の理解が深まり、新しい数学概念を学ぶことが容易になった頃を思い出すかもしれません。ともあれ、知識と知識が組み合わさることにより理解が深まり、その深まった理解により新たな知識の獲得が楽になるような学びのサイクルが「ブートストラッピング・サイクル」だと私は理解しています。

とはいえ上の私の説明は誤解を含んでいるかもしれません。この時点で少しでもピンと来た方はぜひご自身で本書をお読みください。本書では、上のような粗雑な説明ではなく、一つ一つの具体的な言語現象を知ることにより、言語についての理解が深まり、言語についてさらに創造的に考えることができるようになります。


さて「ブートストラッッピング」 という用語ですが、これは “bootstrap” という動詞から来ています。この動詞の意味をOxford English Dictionaryは、 “To make use of existing resources or capabilities to raise (oneself) to a new situation or state; to modify or improve by making use of what is already present” と説明しています。(https://www.oed.com/view/Entry/21553?rskey=IJzQGM&result=2#eid)「既存の自前のリソースを使いこなすことにより新たな事態に対応する」ぐらいの意味でしょうか。この動詞はもともとは名詞に由来します。引っ張ってブーツを履くためのつまみのようなものです。CC BY-SA 3.0で利用可能な下の写真で示しますと、右のブーツの上についたつまみです。(https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Dr_Martens,_black,_old.jpg)




動詞としての “bootstrap”には"to pull oneself up by one's bootstraps"という慣用句があり、これは19世紀ぐらいから「不可能なことを行う」ぐらいの意味で使われていたそうです。(https://en.wikipedia.org/wiki/Bootstrapping) ここで思い出される--しかしこの語とは直接の関係はない--エピソードは、ミュンヒハウゼン男爵が沼に落ちてしまった自分と馬を、自分の髪の毛を引っ張って沼から引き上げたというホラ話です。「ブートストラッッピング」 とは、極端に言えばそんな矛盾を想起させるぐらい困難なことを、ほとんど自力だけでやってしまうといった語感があるように私には思えました。

この動詞は現代英語では様々な意味をもっていることは上のウィキペディア記事に記載されている通りです。言語学・言語習得での意味はこちらを御覧ください(https://en.wikipedia.org/wiki/Bootstrapping_(linguistics))。

ともあれ、人間の言語習得はブートストラッピングでかなり説明できるのではないかというのが著者がさまざまな観察や実験からたどり着いた仮説です。そして、このブートストラッピングを支える推論の一つがアブダクション (仮説形成推論 abduction) です。演繹 (deduction) とも帰納 (induction) とも異なるアブダクションの重要性を著者の一人である今井先生は、京都大学の霊長類研究所のチンパンジーの「アイ」の画像を見ていた時に気づいたそうです。

アイは訓練を受けて異なる色の積み木とそれぞれに対応する絵文字の関係を学ぶことができました。黄色の積み木を見ると△を指差して[黄色の積み木→△]という関係を学び、同様に[赤色の積み木→◇]、[黒色の積み木→◯]といった関係も学んだそうです。ところがアイは[△→黄色の積み木」という逆方向の関係性を理解することができなかったそうです。人間の子どもなら[A → X] を学んだ後に「X」を示されたら[X → A]という関係を示すことができるでしょうが、チンパンジーのアイにはそれができなかったそうです。今井先生はこの現象に驚愕し、そこから考えを進めました。

考えてみますと、[A → X] から[X → A]を導き出すのは論理的には誤り(後件肯定の誤謬)です(大谷選手は右投げ左打ちの野球選手ですが、右投げ左打ちの野球選手が必ず大谷選手であるわけはありません)。しかし人間は、[A → X] から[X → A]を導くという「対称推論」をごく自然に行うバイアスをもっているようです (p. 234)。このバイアスは人間以外の動物には事実上見られないものだそうです。しかし人間は[A → X] から[X → A]という仮説を作ることにより、「外界の情報を整理・圧縮」し、「現象からその原因を遡及的に推理」しやすくなったのかもしれません (p. 244) 。もちろんこの仮説は間違っていることもありますが、人間という動物は多くの仮説を生み出す能力によって他の動物よりも多種多様な環境に対する適応力をつけたのかもしれません( p. 245) 。


以上、私の粗雑なまとめでこの本の趣旨を歪めてしまったかもしれないことを怖れます。繰り返しになりますが、興味をもった方はどうぞこの本をじっくり楽しみながらお読みください。

少なくとも私はこの本によって言語についてのさまざまな考えが再編成されました。私が属する英語教育の業界でも昨今は出版物が増え、学生さんも業界人が書いた本ばかり読む傾向が強まっているのではないかと思います。ですが、あまり視野を狭くするのではなく、本書のような知的な興奮を誘うような本を読んだ方が、いい英語教師になれるように思います。

本書で理解が新たになったおかげで、でてきた疑問もあります。人間が他の動物と異なる特徴の一つに高度な社会性があります。私は不勉強で今、「社会性」という粗い用語しか使うことができませんが、社会性はブートストラッピング・サイクルとどう関わっているのでしょうか。本書も二人の著者が5年以上にもわたり研究交流を構築することにより初めて形をなすことができたと著者はそれぞれに述べています。二人の間のコミュニケーションという社会的現象は、ブートストラッピング効果を生み出したのだと私は想像しますが、そのメカニズムを具体的に記述するとそれはどのようなものでしょうか。

もう一つの疑問は、動物ではできないはずの対称性推論(および相互排他性推論)ができる「クロエ」 (p. 243) にはなぜその能力があったのだろうかということです。クロエは単なる統計的な外れ値だったのでしょうか。それともクロエは人間との交流(社会的関係)から何かを学んだのでしょうか?霊長類研究所での研究についてほとんど知らない私は妄想をふくらませるだけですが、そんな妄想からも何か知恵が湧くかもしれないと思って不勉強な自分を慰めることにします。

ともあれ圧倒的に面白い本でした。読み進めれば進めるほど面白くなります。ご興味のある方、および広く深く学ぶべき学生さんはぜひご一読を。



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「英語教育の哲学的探究3」

今井むつみ (2020) 『英語独習法』岩波新書

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語彙学習の3段階と言語習得の社会性について:今井むつみ・佐治伸郎(編著) (2014) 『言語と身体性』(岩波書店)を読んで考えたこと

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「実践報告:大学生はライティング授業を通じていかに「英語スキーマ」を学ぶか」(4/24(土)Zoomでの研究会)の発表スライドを公開します

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「英語教育の哲学的探究2」

栗田哲也 (2012) 『数学による思考のレッスン』ちくま新書

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実践者として現場で考えるための方法論

http://yanaseyosuke.blogspot.com/2013/07/blog-post_20.html

想像力と論理力の統合としての思考力について

https://yanaseyosuke.blogspot.com/2013/08/blog-post_2.html


追記(2023/06/29)

中央公論新社が『言語の本質』の特設サイトをスタートしました。

https://www.chuko.co.jp/special/gengonohonshitsu/


 

2023/06/24

無料のGPT-3.5のChatGPTで大学入試レベルの英作文を自学自習するためのプロンプト


■ 効果

このプロンプトを使うことによって、ユーザーは自分が書いた英語を、ChatGPTに自動的に(文法・スペリングなどを)添削してもらい、(文体面で)改訂してもらうことができます。改訂のレベルは日本の大学入試で求められるレベルに近いものにしています(下の「注意」を参照)。

このプロンプトを使うことにより、日本の学習者が、教師の指示を待つばかりの受け身的な存在から、自らの意思でどんどんと自学自習する能動的な存在に変わることを私は願っています



■ ユーザー

想定しているユーザーは、大学入試の自由英作文問題のために英語ライティング力を自学自習したい学習者です。ただしChatGPTからの出力はすべて英語ですから、それなりの英語力があること、あるいはユーザーがライティング力と同時にリーディング力もつけたいと願っていることを想定しています。



■ 着想

以前、下のプロンプトを公開しましたが、受験生が自由に使える無料のGPT-3.5レベルのChatGPTでどんどん自学自習できるプロンプトが欲しいという声を複数の方から聞きました。そこで、ChatGPTからの説明部分を日本語にすることを諦めてGPT-3.5で動くプロンプトを作ることにしました。


関連プロンプト:

高校生用ChatGPT/Bing英作文自動添削・改訂プロンプト

https://yanase-yosuke.blogspot.com/2023/05/chatgptbing.html



■ 注意

誤りの可能性:現時点でのAIは、常に完璧な出力をするわけではありません。ChatGPTが提供する添削・改訂にも間違いがあるかもしれないことを前提にして使ってください。

使用するAI:このプロンプトはChatGPT (GPT-3.5) で動作を確認しています。BingやBardではうまく作動しないことも多いので、ChatGPTを使ってください。

改訂のレベル:文体面での改訂 (Revision) は、私なりに大学入試で求められるレベルに調節したつもりです。ですが、使われる語彙はやや難しいものもあります。とはいえ、難関大学を目指す人はこれを機会にそういった語彙も覚えておくとリーディングでも役立つでしょう。

改訂レベルの調節:ChatGPTが出力する改訂が難しすぎると思ったら、TASKSのStep 3の"Grade 12 in high school" を "Grade 11" や "Grade 10" に落としてみてください。それでもまだレベルが高すぎると感じるならば "high school" を "middle school" に変更した上で "Grade 9" から "Grade 7" に変えることもできます。その他、Step 3の指示文の表現を変えて実験してください。私も、Gradeのレベルを変えたり、指示文表現を変えたりしていろいろと実験しましたが、それなりに変化は出ます。レベルの最適化はぜひご自身で調整してください。

日本の大学の採点基準は反映していません:プロンプトの名前には、わかりやすさを優先して「大学入試レベルの英作文」という表現を入れています。しかし実際のプロンプトを見ればわかるように、プロンプトには日本の大学が英作文に求める具体的な基準などは一切いれていません。このプロンプトの改訂は、あくまでも米国の高校生が書くacademic Englishを基準にして出力されるものです(米国の高校を選んだのは、ChatGPTがその基準をもっともよく理解するのではないかと想定したからです)。



■ 推奨する使い方

まずは書く:英語ライティング力をつけたい人は、とにかくどんどん英語を書いて、ChatGPTから助言を受けてください。技能習得にはある程度の分量の練習が不可欠です。まずは書く頻度・分量を増やすことを優先させてください。

わからない点は調べる:ChatGPTの添削や改訂で理解できない点があれば、英英辞典などを使って単語や文法について調べて、納得できるまで学んでください。その学びのプロセスこそが、ユーザーの英語力を深化させるでしょう。

推奨する英英辞典

Longman

https://www.ldoceonline.com/

Collins

https://www.collinsdictionary.com/dictionary/english/

推奨する文法解説リソース

Cambridge

https://dictionary.cambridge.org/us/grammar/british-grammar/


もちろん疑問点をChatGPTに直接尋ねることもできます。しかし、ChatGPTの回答はたまに間違うことがあります。また人間ユーザーが何度も尋ねると、必要もないのに自分が間違っていたと自説を撤回することもあります。AIに頼り切るのではなく、AIが依拠しているこれまでの人間の知的遺産を有効活用してください。

「英語らしい表現」を書くコツをつかむ:語法が添削修正されることが少なくなっても、まだ自分の英文とChatGPTが出力する英文には質的な違いがあることを実感する学習者も多いでしょう。そういった自覚がありながらも、どのようにしたら英語らしい表現が書けるようになるかよくわからない人は、下の記事・書籍を読んでコツをつかんでください。


関連記事

遠田和子 (2018) 『究極の英語ライティング』

https://yanase-yosuke.blogspot.com/2019/05/2018.html

 

必要な場合には助言を受ける:自分で調べても解決しない疑問点は、友人や先生に尋ねてください。なんでも友人や先生に尋ねる人は歓迎されないこともありますが、自分なりにしっかり調べた上で焦点化された疑問について相談する人は歓迎されることも多いはずです。実際、教師としては、そのような質問を受けることで指導力を上げることができます。お互いに学ぶ意欲を高めるような相談をしてください。

なお英語教師の中にはAIの普及で人間の英語教師はいらなくなるのではないかと不安にかられている人がいます。ですが、すでに英語授業でAIを活用し始めた私は、むしろ人間教師の重要性は高まったと実感しています。学習者個々人の問題に寄り添った高度な助言をするためです。



■ プロンプトについての注釈

このプロントは下のプロンプトを少しだけ修正したものです。


関連プロンプト:

【Ver. 3に改訂】ChatGPT学術英語ライティング添削・改訂プロンプト -- 添削の後にまず米国の大学入学レベルの改訂を出力し、次に学術英語としての改訂を出力するようにしました。

https://yanase-yosuke.blogspot.com/2023/05/chatgptver2.html


修正のポイントは以下の通りです。

(1) Academic Englishにそれほどこだわらない:Academic Englishとしての要求水準を低くして、academic Englishに関する定義部部分を削除しました。このことによりプロンプトの分量が減り、扱いやすくなりました。

(2) Plain Languageの記述を追加:ChatGPTに過剰に難しい語彙・表現を使わせないための工夫として、 "Plain Language"の精神を尊重せよとChatGPTに指示しました。(この修正は、上の学術英語ライティング添削・改訂プロンプトにも加えてVer. 3.1としました。

(3) 自学自習用に特化:上のプロンプトは教師が使うことを前提としていますから、入力された英文をもう一度出力しています。しかし自学自習する人にとってはそれは不要ですから、その出力を削除しました。

(4) 改訂レベルは1つだけ:上のプロンプトは、私が大学での授業で用いるため、改訂レベルは2つ示しています。1つは学生のレベルよりも少し高いもの、もう1つは学生が目指すべきレベルです。しかしこのプロンプトは大学入学のために十分な英語ライティング力をつけるためのものですから、上の最初のレベルとほぼ同じ改訂だけを示すようにしています。



■ 皆さんへのお願い

このプロンプトは私なりに若干の試行錯誤をして作成しました。しかし、多くの人がさまざまな状況で使っているうちに色々な不備や改善点が浮かび上がってくるかと思います。なにか情報があれば、Twitterの @yosukeyanase に言及していただくか、メール (yanase.yosuke.3n<*>kyoto-u.ac.jp) でご教示ください(メールアドレスの<*>はもちろん @ に変更してください)。



■ プロンプト (プロンプトは予告なしに修正する場合があります)

2023/06/24版 (Ver. 1):ChatGPT学術英語ライティング添削・改訂プロンプト Ver. 3を微修正して作成。

2023/06/28版 (Ver. 1.1):# TASKSでも "Plain Language" に言及した。



# ROLE

You are an instructor of English writing.

You write in the style of Plain Language. Plain Language is writing designed to ensure the reader understands as quickly, easily, and completely as possible. It avoids verbose, convoluted language and jargon.

You are also an experienced coach who understands the difficulties foreign language learners face.

You always find good points in your student's writing and encourage them to continue learning.


# GOAL

Your goal is to help students develop their writing skills in grammar and style.


# TASKS

Execute the following tasks step by step.

Step 1: Read the student's text delimited by three equals and carry out the only mechanical corrections (i.e., spelling, grammar, and punctuation.)

Step 2:  Make a complete list of corrections and their reasons in Step 1. The list number must start from "a." and continue in alphabetical order.

Step 3: Rewrite the result of Step 1 in the academic English style appropriate for Grade 12 in high school. Adhere to the Plain Language style, too.

Step 4: Explain in plain language the points of revisions in Step 3. The list number starts from "a." and continues in alphabetical order.

Step 5: Encourage the student by specifying the strengths of their writing.


# OUTPUT

Print out the following six outputs.

-1. Usage Correction: <the result of Step 1>

-2. Usage Issues: <the result of Step 2>

-3. Revision: <the result of Step 3>

-5. Points of Revision: <the result of Step 4>

-5. Comment: <the result of Step 5>


===

添削・改訂を必要とする英文をここに入れる

===




■ 関連記事

【Ver. 3に改訂】ChatGPT学術英語ライティング添削・改訂プロンプト -- 添削の後にまず米国の大学入学レベルの改訂を出力し、次に学術英語としての改訂を出力するようにしました。

https://yanase-yosuke.blogspot.com/2023/05/chatgptver2.html

高校生用ChatGPT/Bing英作文自動添削・改訂プロンプト

https://yanase-yosuke.blogspot.com/2023/05/chatgptbing.html

英検1級などのスピーチ試験対策用の2種類のChatGPTプロンプト:スピーチアウトライン作成用とスピーチ実践・改善用

https://yanase-yosuke.blogspot.com/2023/06/12chatgpt.html

ChatGPT英語例文自動添削プロンプト

https://yanase-yosuke.blogspot.com/2023/04/chatgp

ChatGPTと音声で英会話する方法(上級者用)

https://yanase-yosuke.blogspot.com/2023/04/chatgpt.html

アメリカ英語の母音についての簡単な解説

https://yanase-yosuke.blogspot.com/2023/04/blog-post_14.html

アメリカ英語の子音についての簡単な解説

https://yanase-yosuke.blogspot.com/2023/04/blog-post_15.html

アメリカ英語で子音が連続する場合

https://yanase-yosuke.blogspot.com/2023/04/blog-post_25.html

無料YouTube動画のElementalEnglishでアメリカ英語の発音を学ぶ

https://yanase-yosuke.blogspot.com/2023/05/youtubeelementalenglish.html

International Phonetic Alphabet (IPA) で発音を学ぶ際に便利なサイト集

https://yanase-yosuke.blogspot.com/2023/04/intern

映画で学ぶアメリカ英語の発音とリスニング (Rachel's English)

https://yanase-yosuke.blogspot.com/2023/06/rachels-english.html

イントネーションの重要性を自覚して、自分でも使い分けられるようになる -- "English with Kim" のYouTubeチャンネルから動画リストを作りました

https://yanase-yosuke.blogspot.com/2023/06/english-with-kim-youtube.html


2023/06/22

研究のまとめ方の基本(高校生や大学1年生のための約15分のYouTube解説動画)

 

この記事では、高校生や大学1年生などが広い意味での「研究」を行う際の基本について説明する動画を掲載します。動画は下のスライドを使った約15分の説明です。







上の説明は、下の2の記事の要点を述べたものです。ですが、「研究」をどのように進めていいかわからない初学者の方は、1から4までの記事をこの順番で読んでゆけば少しは理解が進むかと思います。

1. 私家版:論文執筆のための5つの手順

2. Thesis Statement (X is/does Y in Z) の3要素の説明とYとZの定め方

3. 「起承転結」、ABT、Context-Problem-Solution

4. 主張文の中に反論をどのように組み込むか

また、以下は、研究者がまず日本語で原稿を書いて、次にそれをDeepLなどで英語翻訳し、さらにChatGPTなどで改訂する論文執筆過程についてまとめたものです。こちらもぜひお読みください。

「AIを活用して英語論文を作成する日本語話者にとっての課題とその対策」の解説動画、および理系研究者との対話から学んだこと

https://yanase-yosuke.blogspot.com/2024/03/ai.html 


「『英語ユーザーへのインタビュー』の経験から」 笹島茂・宮原万寿子・末森咲・守谷亮編 (2023)『英語授業をよくする質的研究のすすめ』(ひつじ書房)所収 (pp.92-97)


この度、縁をいただいて、笹島茂・宮原万寿子・末森咲・守谷亮編(敬称略)の『英語授業をよくする質的研究のすすめ』(ひつじ書房 2023年)に次の論考を掲載していただきました。


「英語ユーザーへのインタビュー」の経験から

pp.92-97


この論考は、私が下のインタビュープロジェクトを遂行する中で考えた質的研究と量的研究の根本的な発想の違いについて短くまとめたものです。


京都大学自律的英語ユーザーへのインタビュー

https://www.i-arrc.k.kyoto-u.ac.jp/english/interviews_jp


論考の背後には、ウィトゲンシュタイン哲学やホワイトの歴史学の考え方があります。キーワードは、「多様性」「家族的類似性」「歴史的叙述」「相互作用し合う主体」です。


関連記事

ウィトゲンシュタイン『哲学的探究』の89-133節の個人的解釈

https://yanase-yosuke.blogspot.com/2021/03/89-133.html

ヘイドン・ホワイト著、上村忠男監訳 (2017) 『実用的な過去』岩波書店 Hayden White (2014) The Practical Past. Evanston, Illinois: Northwestern University Press.

https://yanaseyosuke.blogspot.com/2018/03/2017-hayden-white-2014-practical-past.html


なお、この論考をさらに展開した立論は先日、日本英文学会のシンポジウムで発表しました。


「英語ユーザーへのインタビュープロジェクトの実践から」

(日本英文学会第95回大会シンポジウム)の解説動画とスライド

https://yanase-yosuke.blogspot.com/2023/05/95.html



以上、自分の宣伝ばかりが続きましたが、この『英語授業をよくする質的研究のすすめ』は、初学者でもわかりやすく読めるように編まれた本です。


笹島茂・宮原万寿子・末森咲・守屋亮編

『英語授業をよくする質的研究のすすめ』

ひつじ書房ホームページでの解説:

https://www.hituzi.co.jp/hituzibooks/ISBN978-4-8234-1188-5.htm



Part I 「質的研究の背景と英語教育」 (pp.2-33) は、質的研究についての素朴な15の疑問を見開き2ページで手短に解説しています。

Part II「質的研究リサーチ方法」(pp.34-86) も見開き2ページの構成を引き継ぎ、25の観点から質的研究の方法について解説します。これだけ多くの観点があるのは質的研究の方法が「多様で複雑」であり、「単に手法だけを真似してもうまく行かないことが多い」からです。質的研究では「リサーチ方法の基本をもとに、自分自身で考える必要」があります。 (p.34) 

とはいえ質的研究の方法は秘教的なものではありません。「質的研究のリサーチ方法は、人類が始まってからずっと営んできた学習の中にすでに多くのヒントがあります」とも著者は述べます。(p. 35) --私はしばしば一般書のルポルタージュを読んでいて、むしろ研究者はこのような叙述にもっと学ぶべきではないかと思ってしまいます。最近では北尾トロ (2023) 『人生上等! 未来なら変えられる』の内容だけでなく叙述スタイルも面白く読みました--

Part III「質的研究の実践例」(pp. 88-148)では拙稿も含めると7つの実践例が報告されています。個人的には末森咲先生や守屋亨先生といった若い世代の報告に共感しました。末森先生は、「博士論文に取りくんでいた期間は、最初から最後まで先が見えず、何一つ確信が持てない状態でした。目的地は決まっているけど、そこまでの道のりが全く記されていない、白紙の地図だけが手元にあるような感じでした」 (p. 109) と述懐します。守屋先生は、「周囲に自分の研究の話をしてもどこか話が噛み合わずに何度も首をひねられ、自分は研究に向かないのではないかと、己の未熟さと不甲斐なさに涙したこともあります」 (p. 114) と吐露します(言うまでもありませんが、もちろんお二方とも後日きちんと自分なりの質的研究を打ち立て、周りにも評価されています)

この本には資料として、英語論文例と用語集が付け加えられていますが、特に前者は有用です。

英語教育(あるいは日本語教育)でこれから質的研究を始めようとしている人、または始めたものの迷い続けている人には、この本はよいガイドになるかと思います。



追記

JACET言語教師認知研究会(質的研究コンソーシアム)では、「英語授業をよくする質的研究のすすめ(仮)」というテーマでシンポジウム(ハイブリッド形式開催)を計画しているそうです。現時点での予定は以下の通りですが、正確な情報は近日中にJACET言語教師認知研究会が行うだろうアナウンスで確認してください。

日時:9月30日(土) 14:00-17:00 

会場:青山学院大学青山キャンパス総研ビル8階第11会議室



関連記事

北出慶子・嶋津百代・三代純平 (2021) 『ナラティブでひらく言語教育』

https://yanase-yosuke.blogspot.com/2022/03/2021_24.html

「人が他人の心を知ることができるのか」という難問、および再帰性 (reflexivity) と省察 (reflection) の違い

https://yanase-yosuke.blogspot.com/2022/03/reflexivity-reflection.html

八木真奈美・中山亜紀子・中井好男 (2021) 『質的研究を考えよう』(ひつじ書房)、および意味概念と物語概念のまとめ

https://yanase-yosuke.blogspot.com/2022/03/2021.html






2023/06/20

イントネーションの重要性を自覚して、自分でも使い分けられるようになる -- "English with Kim" のYouTubeチャンネルから動画リストを作りました

 

英語を教材からしか学んだ人の中には、イントネーションの機能がよくわかっていない人がいます。私が最近目にした例では、ある人は相手のイントネーション(下降上昇調)を聞きそこなったのかそこで会話を打ち切ってしまいました。別の例では、スタンダップコメディアンの微妙なイントネーションを察知できなかったためコメディのオチがわからなくなってしまいました。

ある学習者に、言われたことばのすべてを単語変換できるディクテーション能力があったとしても、その人が発話を適切に理解できるわけではありません。逆に言うなら、学習者が文字起こししたら正しい英語を、不適切なイントネーションで発話することにより、相手に誤解されることもあります。

映画をよく見る人や英語圏での生活経験が長い人の中には、イントネーションの違いを自然に習得する人もいます。しかし、そのような経験をもっていない人(あるいは経験はもっていたがイントネーションの違いにあまり敏感でなかった人)は、イントネーションについてある程度集中的に学んだ方がいいでしょう。

しばしば言われるように、"It's not what you say but how you say it." こそが実生活での基本だからです。言い方次第で意味は大きく変わり得ます。

イントネーションについてよいYouTube動画はないかBingに尋ねて探していたら、English with Kim が特に良いように思えました。ここでは、入門・基本・応用・発展の4種類に分けた上でそのチャンネルから特に有用と思われた動画をご紹介します。すべての動画をこのブログに埋め込んだら記事が重くなりますから、私が個人的に特に良いと思った動画だけ動画埋め込みを示し、その他の動画はURLの掲示だけをしておきます。もちろん下のリスト以外にも参考になる動画はありますから、興味がある方はぜひEnglish with Kimチャンネルを訪れてください。


English with Kim

https://www.youtube.com/@Englishwithkim/featured





入門:

短い動画や短い常套句からイントネーションの重要性を学ぶ


入門:まずは "I don't know" という具体例からイントネーションの重要性を学びましょう。

How to Say "I don't know" [Understand Intonation Patterns in American English]

https://youtu.be/QXUCI8eo9TY





入門: "Really"という語も言い方次第でさまざまな意味を伝えることができます。
Different Ways to Say "Really?!" [Understand Intonation Patterns in American English]


入門: "How are you?" という常套句でもイントネーションの違いによって大きく意味が変わってきます。
How to Pronounce "How are you?" [Understand Intonation in American English]


入門:イントネーションの下降調と上昇調が、会話でいかに重要な役割をもっているかを理解し実行できるようになってください。
Choosing Falling or Rising Intonation: Show You're Done Talking or Ask a Question


入門:相手の話を聞き続ける時にも、効果的な合いの手を打ってください。この際もイントネーションが重要です。
Respond Naturally in Conversations in American English with Rejoinders - Intonation Practice






基本:
イントネーションの基本を学ぶ

基本:イントネーションの違いが生み出すさまざまな意味を実感してください。
Change Your Meaning with Your Voice - Intonation, Inflection, & Tone of Voice




基本:イントネーションについての基本的な理論を学びましょう。
Intonation for Clear Communication in American English - Why Intonation is So Important

基本:長い発話をする時には特にイントネーションを使い分けることが重要です。
Pitch and Intonation When Speaking English - Intonation for Statements, Questions & Thought Groups

基本:イントネーションなんて非英語母語話者は無視してよいと思っている人はごらんください。
The Difference Between Stress and Intonation, Why Intonation Matters, and Other Intonation Myths






応用:
具体的な表現を適切なイントネーションで使えるようになる


応用:アメリカ英語で丁寧な言い方をするテクニックを身につけてください。
Sound More Polite and Tactful in American English | Practice Focus Word Stress




応用:高圧的にならずに、強く自分の希望を伝える言い方を学んでください。
Clear, Strong Suggestions and Recommendations - How to Use Verbs of Suggestion in American English

応用:感謝の気持ちを "Thank you" と平板に言うだけで済ませないようにしましょう。
Beyond Thank You: How to Show Appreciation and Express Gratitude in American English

応用:感謝された時に言う "You're welcome" についても様々な言い方を学んでください。
Beyond You're Welcome: More Ways to Respond to Thanks in American English

応用:自分が思うように話せなくても、十分相手の話を理解していることを示す方法を学んでください。
Five Ways to Show Active Listening During Conversations in English

応用:相手を乗せるうまい聞き手になるための短い表現を覚えてください。
Show You're Listening with Intonation - Short Questions and Responses For Better Conversations

応用:相手の言っていることがわからない時に "I beg your pardon?" とばかり言っていれば、多くの人は話す気を失ってしまいます。さまざまな表現で自分の理解を補完できるようにしましょう。
Clarifying What You Heard and Confirming Your Understanding in Business English

応用:相手が自分の発話を繰り返すように求めた時の、賢い対応法を学んでください。
Asked to Repeat Yourself? What to Do When You Have to Repeat a Word or Idea in English

応用:失礼な質問に対して、答える気がないことを優雅にしかしはっきりと伝える言い方は、実生活の護身術のようなものです。

応用:英語の母語話者が非英語母語話者の話を理解しない(理解しようとしない)悲しい事実の背景を知ってください。
Why Some Native English Speakers Don't Understand You








発展:
誰もがもっている "Accent"(訛り) に伴う社会的認識について考える

このセクションで扱われているレベルの "Accent"(訛り) の違いの重要性について理解するには、まず日本語の例を聞いておく方がいいかと思います。

発展:津軽弁を母語とし、思慮深い笑いを提供している、すんたろすさんのコントを見て「標準語」と「訛り」という区別がもつ権力性について実感してください。
【津軽弁コント】標準語頑張るけどカタカナは無理だった青森県民






発展:「ネイティブのように英語を話さなければ」と思い続けている人は一度見てください。
Global English vs Native English - Does Accent Really Matter?

発展:下の動画のアクセントの違いが生み出す葛藤から、非英語母語話者としての自分がどのような英語を自分のアイデンティとするべきかなどについて考えてみてください。
Tweet: Her accent




上のTweetへのリプライの1つ


上でtweetされた動画についての解説
Watch: This Man Is Pretty Much All Of Us Who Get Annoyed With Fake Accent


もちろん上で紹介したTwitter動画は、アクセントについてのほんの一例にすぎません。アクセントの問題は古今東西、世界のいたるところで見られます。以下の記事で紹介した移民系のスタンダップコメディアンは積極的に、というより身をもって、アクセントについての問題提起を笑いの中で提供しています。


Trevor Noahらのスタンダップコメディアンから柔軟な知性と巧みな話芸を学ぼう


英語のイントネーションを通じて、私たちが使いがちな「標準」「訛り」という区別がもつ含意について具体的に考察を進めたいものだと思います。



追記(2023/06/22)

さっき見つけたすんたろすさんの下の動画も大笑いしながら「標準語」についていろいろ考えさせられるものです。すんたろすさんの批判精神は結構したたかで複層的だと私は思います(考えすぎか 笑)。




2023/06/13

映画で学ぶアメリカ英語の発音とリスニング (Rachel's English)

 

YouTubeのRachel's Englishは、こちらでも紹介していますように、非常に優れた発音・リスニング教材を提供しています。


Rachel's English

https://www.youtube.com/@rachelsenglish


その中でも、以下のplaylistは映画で発音・リスニングを学ぶ優れたものです。映画の登場人物は、ニュースアナウンサーなどよりも日常生活の英語に近い発音をしていますから、リスニング能力をより向上させたい人にはお勧めです。

また、このシリーズは台詞が書かれたホワイトボードに講師のRachelが赤ペンでイントネーションや発音記号などを書き込んでアメリカ英語の発音を分析してくれるのが素晴らしいです。


LEARN ENGLISH WITH MOVIES

https://www.youtube.com/playlist?list=PLrqHrGoMJdTR_P8p95DY1RA8_gD4XEOmI



下のリンク集は、そのplaylistの中から日本人に比較的知られていると思われる映画を使った教材に直接飛ぶことができるものです。自分の興味のありそうな教材を見つけてアメリカ英語の発音とリスニングの技能を同時に高めてください。



English Movie - How To Speak English Like an American With Top Gun 

https://www.youtube.com/watch?v=OhZ-YG7SYRI

Learn English with Movies - MISSION IMPOSSIBLE FALLOUT

https://www.youtube.com/watch?v=56IgTIGrGiM

Learn English with Movies - Green Book

https://www.youtube.com/watch?v=SI8T0870xH0

Learn English with Movies - Steve Jobs

https://www.youtube.com/watch?v=2YaoC14lpyk

Learn English with Movies - Captain Marvel

https://www.youtube.com/watch?v=qny-ChWw3a0&t=321s

Learn English with Movies - Toy Story 4

https://www.youtube.com/watch?v=QzsPsArh8ck

English Training Lesson - First Man

https://www.youtube.com/watch?v=0iPfLV0ErVo

Learn English With Movies - Antman And The Wasp

https://www.youtube.com/watch?v=IIypRrZplr4

EXACTLY How To Improve Conversation With Movies - Shazam

https://www.youtube.com/watch?v=xl1uEJvWMKk

Learn English With Movies - Molly’s Game

https://www.youtube.com/watch?v=4U-fekcDLCU

Learn English With The Pursuit of Happyness

https://www.youtube.com/watch?v=gUBjwlSe4O4

Fast English | Learn English With The Movie VENOM

https://www.youtube.com/watch?v=qboMPOad08M

Lady Gaga: Learn English with Movies - A Star is Born 

https://www.youtube.com/watch?v=CZ7pXbAU3Hc

Learn English with Movies - Avengers: Endgame

https://www.youtube.com/watch?v=Qyy4wKhO-ZE




追記

もし上の教材が難しければ、下のより基本的な教材で学んでください。


無料YouTube動画のElementalEnglishでアメリカ英語の発音を学ぶ

https://yanase-yosuke.blogspot.com/2023/05/youtubeelementalenglish.html

アメリカ英語の母音についての簡単な解説

https://yanase-yosuke.blogspot.com/2023/04/blog-post_14.html

アメリカ英語の子音についての簡単な解説

https://yanase-yosuke.blogspot.com/2023/04/blog-post_15.html

アメリカ英語で子音が連続する場合

https://yanase-yosuke.blogspot.com/2023/04/blog-post_25.html




Trevor Noahらのスタンダップコメディアンから柔軟な知性と巧みな話芸を学ぼう


私がスタンダップコメディを好きなのは、もちろんお笑いが好きということもありますが、柔軟な知性と巧みな話芸を学べるからです。

この点で私がもっとも好きなのはTrevor Noahです。彼は南アフリカ出身で、現在はアメリカで活躍しています。アメリカでの非主流派(外国人・黒人)という立場からの発言は、世の中の主流派の価値観を心地よく壊してくれますし、何より彼のモノマネの技術は抱腹絶倒です。もちろんモノマネは下手をすれば偏見の助長に繋がりますが、彼を始めとした一流のスタンダップコメディアンは、ギリギリのところを突いて笑いをもたらします。移民系としてアメリカで英語を使って活躍する--いや国際的に活躍する--スタンダップコメディアンは、私の憧れのロールモデルの1つです



Trevor Noah

https://www.youtube.com/user/trevornoah



Trevor Noahのネタで大笑いできるものはたくさんありますが、下の動画 ("How The British Took Over India" ) は、ヨーロッパ人の植民地支配について考えさせてくれるものです。




以下に、大まかな動画の秒数とそのポイントを簡単に書いておきます。これらのポイントなどに気をつけて聞いてゆけば、私たちもスタンダップコメディアンの巧みな話芸(語の選択・イントネーション・テンポ・リズム・ポーズ・表情・ジェスチャーなど)から学ぶことができるでしょう。


0:50 イギリス人 (E) とインド人 (I) の会話が始まる。それまでの導入部分でのTrevor Noah本人の知的な話し方から、尊大な態度を取ろうとするイギリス人と、のんびりして一見愚かに聞こえるが実は深い知恵をもったインド人の様子を表現する劇に変わる。Trevor Noahの話芸に注目。

01:30 I: "And I'm glad that I can tell you that India is exactly where it was yesterday."の平坦なイントネーション(逆にそれが笑いを生む)

01:50: I: "Who's the Queen?の平坦なイントネーション(逆にそれが笑いを生む)

02:01: I: "Which God?" わざと単純な聞き方をして、イギリス人のもってまわった知的な表現法と対比させている。インド人の素朴な疑問により、この後、イギリス人の欺瞞を少しずつ暴く。

02:15: E: "There is only one God, and his name is God, and you too shall worship him!" やや当惑しながらも高圧的な態度を取り続ける言い方。

02:37: I: "You don't know the name of your god?"さりげなく相手の欠点(無知)を示唆するイントネーション。

02:45:I:"Is it like mommy or daddy?" 語彙選択も含めて、柔らかく相手を子ども扱いしている言い方。

02:55:I:わざと同じ言い方を続けて、相手の発言のバカバカしさを伝えるレトリック。

03:25:"How dare you speak to me like that!" "Dare"という語からもわかるように、明らかに怒った言い方。

03:44: E "Well, well, we did." 最初の口ごもった様子で答えに困っていることがわかる言い方。

03:50: I: "You call youselves "great?"からわずかずつ皮肉の調子を上げていく言い方に注目。後半では同じ語を連続することや、"How great you are!"の語尾を伸ばすことなどで皮肉の意味がさらに伝わる。

04:16: I:"Well, in that case, welcome to Great India"相手に直接反論せず、相手の論法をそのまま自分が使うことによって、相手の論法の愚かさを示すレトリック。そのレトリックを使った時にもインド人がドヤ顔をしないことで、インド人の冷静な知性を示している。

04:40: I: "In fact, it looks like you died last week, okay?"何が正常 (normal) で何が異常かの判断基準をヨーロッパ視点からインド視点に変えたことにより観衆に新たな視点を導入する論法。

05:30:I: "She's all yours, take, take ..."イントネーションからインド人が「バカには何を言っても無駄だ」と意味しているところに注目。



また下の短い動画は、移民について批判するイギリス人のモノマネが続きますが、それを聞いていた相手の一言でなるほどと考えさせられます。


That sounds British to me

https://youtube.com/shorts/34SGjauLvw4?feature=share



ちなみに他のスタンダップコメディアンで私が好きなのは、以下の人たちなどです。


Ronny Chien https://www.youtube.com/watch?v=wckvy07xStI

Jason Leong https://www.youtube.com/watch?v=eC5cE09Ypyc

Maz Jobrani  https://www.youtube.com/@Mazjobrani/featured

Vir Das https://www.youtube.com/@thevirdas


特にVir Dasのインド英語は、癖になりそうなぐらい私は好きです。日本語を母語とする英語話者も、上のスタンダップコメディアンぐらいに自らの「訛り」を誇れるようになりたいものだと思います。

以下は、Wikipediaによるスタンダップコメディアンのリストです。残念ながら日本出身の人は掲載されていません。


List of stand-up comedians

https://en.wikipedia.org/wiki/List_of_stand-up_comedians



追記

ついでに私の好きなTrevor Noahの動画をいくつか掲載しておきます。

"The Love Of Jesus" 

https://www.youtube.com/watch?v=k6eW018NMSU

"New York Traffic Lights" 

https://www.youtube.com/watch?v=cJAObWRmWvM

"Being Black In America" 

https://www.youtube.com/watch?v=sXje3oJ8T8o&t=155s

"If You Hate Immigrants..."

https://www.youtube.com/watch?v=BOt5SmHf2aE&t=32s

"Sports In America" 

https://www.youtube.com/watch?v=M3Rde73r8cQ

"My First Time Trying Tacos!" 

https://www.youtube.com/watch?v=xoAU85wS1x0

"It Makes No Sense!"

https://www.youtube.com/watch?v=r5yCk6Qpuv4&t=23s

"White People Can't March" 

https://www.youtube.com/watch?v=h7iDUOG3XNE

"Scared Of America" 

https://www.youtube.com/watch?v=En8Tz2RzubE

"Don't Lose Your Accent / Learning Accents" 

https://www.youtube.com/watch?v=MhCEdIqFCck

Trevor Noah's Snake Story Shows Who the Real Man Is

https://www.youtube.com/watch?v=fN9hm7k9fns

Trevor Noah - Some Languages Are Scary

https://www.youtube.com/watch?v=9OB72GZOS4c

The Best of Trevor’s Accents - Between The Scenes

https://www.youtube.com/watch?v=yWI61kpFEAA


最後に紹介するのは、彼が長年司会を勤めたThe Daily Showを去る時のスピーチです。彼の人柄がうかがえるもので、私は大好きです。


Trevor Thanks the Fans & Black Women Who Shaped His Life

https://www.youtube.com/watch?v=QeJAdlV4fXM





追追記

以下はブラジルのコメディアンが英語で英語の動詞について語っている短い動画です。明らかな外国人訛りですが、彼はその英語で自分らしさを十二分に表現しています。このような表現様式を日本の英語学習者も身につけたいと思います。

"I HATE verbs in English."

https://www.youtube.com/shorts/3v2eadS2klM

 

追追追記(2024/07/08)

学生さんに教えてもらった下の英語落語の語り手は、座るスタンダップ・コメディアンのようなものです(笑)。私はこの人の語りはとても好きです。

Katsura Sunshine

https://www.youtube.com/@KatsuraSunshineRakugo


2023/06/12

「AIの導入で英語授業はより人間的になった ― 実践速報に基づく考察」(JACET中部支部大会基調講演)の予行練習録画とスライドを公開

 


2023年6月10日(土)の16-17時に、JACET第38回(2023年度)中部支部大会(Zoom開催)で基調講演をさせていただきました。


「AIの導入で英語授業はより人間的になった ― 実践速報に基づく考察」

柳瀬陽介 (京都大学)


講演の概要は以下の通りでした。




事務局の皆様には、貴重な機会をいただいただけでなく、さまざまなサポートをしていただきました。ここに改めて厚く御礼申し上げます。


当日は講演に引き続き、シンポジウム「AI時代の英語教育」にも私はそのまま参加しましたが、ここでは講演での私の登壇部分だけの録画と投映したスライドを公開いたします。




講演で使ったスライドのPDF版はここからダウンロード




以下、主なQ&Aの概要を掲載しています。Qは私がまとめて書き換えたものです。またAも私が当日に答えたものに若干加筆しているものもあります。ゆえにこのQ&Aは当日のやり取りの忠実な再現ではありません。


Q1:AIの浸透により、ますます学びを高度化する層と学ぶ意欲を失う層の二極化が進行してしまうようにも思えますが、いかがでしょうか。

A1:現状ではその恐れが高いです。ですから、教育者は格差拡大を阻止するためのAI活用を前提に物事を考えるべきだと思います。


Q2:学生の課題の正確さには様々な語の意味を日本語を通さずに英語を通して理解できるかどうかも関わってくるのでしょうか。

A2:私の大学での授業を前提につくったこのプロンプトについてはその通りです。私は学生に「英語ループ」に入ってもらおうとしています。もちろんAIを使って、まだ英語を英語を通して理解するのが困難な学習者を支援することも可能です。しかし、私の現在の実践ではそういった学習者はとりあえず対象としていません。


Q3:やはりチャットGPTが考えたスピーチの表現や内容を自分のものにして、人間自身が考えたことを追加で言えるように準備しておくことも英検1級を受ける学生にとって重要になってくるのでしょうか。

A3:その通りです。だからChatGPTからのrevision提案を吟味し何度も音読したあとで、再度何も見ずにChatGPTにスピーチを吹き込む学習方法を提案しています。


Q4:英語の運用能力を語る際に、AIを抜きにしたものを能力とするのか、AIを含んだものを能力とするのか、という立場の違いについてどう思われますか。

A4:「能力」の定義は、唯一絶対のものを求めるべきでなく、それぞれの文脈で定義するべきだと私は考えています(さらには、複数の能力を互いに換算互換できるように一元的に数値化することは避けるべきだと考えていますが、その話は長くなるのでここではしません)。

 私は、自分の授業が終われば基本的に学生は自学自習者しながら英語を使用するということを前提としています。ですから、私は英語力をAI抜きの生身の力を基盤としながら適宜AIを駆使できる総合的な能力として定義しています(スライドのp.196-p.200をご参照ください)。

 ただし個人的には高校生にはAIを使わない生身の力だけを「英語力」として規定した方がよいと思っております。生身の英語力(特にリスニング力とリーディング力)がないとAIを使いこなせず、AIが生み出す英語に振り回されてしまうからです。

 ともあれ、「能力」の定義には絶対的なものを求めず、それぞれの文脈でもっとも合理的な定義を採択するべきだと考えています。


Q5:自分が教えている大学の学生は、DeepLやChatGPTを活用して自分の英語力を伸ばす方法を既に知っているように思えます。その活用を妨げているのが、「AIを使うと、きちんと評価できないから」といった教師の都合なのではないでしょうか。教育界は一方で「個別最適化」を謳いながら、他方で絶対評価にこだわっている。こういったことからすると教育自体が変わらなければならないのではないでしょうか。

A5:ご意見に賛同します。スライドのp.180で示したように、20世紀型教育は、Teacher Control, Standardization, Measurementを促進することこそ教育の改善であると考えてきました。この傾向は、新自由主義が台頭し教育を資本主義的生産体制の中の歯車として考えるようになってから強まったように思えます。また、英語教育研究の多くも、Teacher Control, Standardization, Measurementの強化という前提を無批判に受け入れ、自らその方向に進むことを研究の高度化と考えているように思えます。

 私もこのような教育のあり方が変わるべきだと考えています。たとえ教育の制度がなかなか変わらないにせよ、教師の考え方はまだ変われるはずです。教師は日々よく観察し、何がよい教育なのかを考えるべきです(下の記事もご参照いただけたら幸いです)。


関連記事

柳瀬陽介 (2022) 「人間を育てる英語教育とは何か--英語教師に必要な哲学」『新英語教育』2022年3月号 pp.7-9

https://yanase-yosuke.blogspot.com/2023/03/2022-20223pp7-9.html


8/26(土)神奈川大学:「人を育てる英語教育:田尻悟郎の授業は大学生の人生にどう影響を与えているのか」第二弾!

 

好評だった昨年の公開シンポジウムに続き、今年の夏も下記の要領でシンポジウムを開催します。(対面式シンポジウムであり、Zoom中継や録画公開は予定していません)。

私は最近AI関連の仕事が多くなっていますが、AI活用は、田尻先生に代表されるような人間的な英語教育を推進するためのものでなくてはならないと思っています。その意味で、教育の根本を考え直すためにもこのシンポに向けてできるだけの準備をして、当日に参加者と有意義な対話をしたいと思っています。


日時: 2023年8月26日(土)13:00-16:00

会場: 神奈川大学みなとみらいキャンパス4階(4019講堂)

参加費:無料 *要予約(先着300名まで)

登壇者:田尻悟郎(関西大学外国語学部教授)、久保野雅史(神奈川大学外国語学部教授)、柳瀬陽介(京都大学国際高等教育院教授)、横溝紳一郎(西南学院大学外国語学部教授)


詳しくは下のチラシをご覧の上、下のURLかQRコードからお申し込みください。





参加申込用URL・QRコード

https://onl.sc/ifsj7pz



関連記事

柳瀬の発表部分のスライドと動画の公開:人を育てる英語教育・田尻悟郎の授業は大学生の人生にどう影響を与えているのか

https://yanase-yosuke.blogspot.com/2022/08/blog-post_22.html

2023/06/07

英検1級などのスピーチ試験対策用の2種類のChatGPTプロンプト:スピーチアウトライン作成用とスピーチ実践・改善用 (Ver. 1.2)


■ この記事の趣旨

この記事では、英検1級などの資格試験で要求される1-2分程度のスピーチ試験の準備をする学習者が利用できる2種類のChatGPTプロンプトを紹介します。

プロンプトは、ChatGPTはGPT-3.5で動作確認しながら作成しました。GPT-4を使うとより洗練された出力がされますが、人によってはGPT-3.5を使っての出力を好むかもしれません。要は、わざわざGPT-4を必要は特にないということです。(2023/06/13削除)。なお、Bingでも同じような結果がでますが、Bardの出力は少し質が劣ります。


■ 2種類のプロンプトの概要

2種類のプロンプトは、(1) 学習者がスピーチのアウトラインを作成する際に参考にするプロンプトと、(2) 学習者が実際にスピーチを行った音声を文字化してそのスピーチ原稿をさらに改善するプロンプトです。

(1) のプロンプト(「スピーチアウトライン作成用プロンプト」)は、スピーチの構成を考えようとすると、いわゆるwriter's blockのように急に思考停止して無駄に苦しむ学習者を支援するために作成しました。

言語表現の流暢さと正確性ばかりを重視する資格試験(「たかだか資格試験」)で点数を稼ぐためには、無難な内容のスピーチを作るだけで十分だと私は考えていますーーただし、オリジナルなエッセイや論文を書く際には、アウトライン作成をAIに依頼することは勧めません。私の授業では構想段階でのAI使用は固く禁じています。

残念ながら資格試験が測る力と、留学などで必要な力は完全に重なりません(注1)。資格試験にはある程度の対策が必要です。それならその対策は手軽にやって、余った時間は自分の専門の勉強や私生活の充実に活かした方がよいというのが私の考えです。


(注1)資格試験で要求される力と実際の留学で必要な力の違いについては、京都大学院生への以下のインタビューをご参照ください。


「「伝わる」経験から、英語も研究ももっと楽しくなる」

https://www.i-arrc.k.kyoto-u.ac.jp/english/interviews/transcripts2022_jp#frame-692


もちろん、1-2分のスピーチの構想を立てるのはそれほど問題ない学習者もいるでしょう。そういった方はこの (1) のスピーチアウトライン作成用プロンプトは使わずに、(2) のプロンプトだけを使ってください。


(2) のプロンプト(「スピーチ実践・改善用プロンプト」)は、1-2分の英語はスピーチはなんとかできるものの、その語法面や話の展開において何とか質を高めたいと思っている人のためのプロンプトです。

Voice Contol for ChatGPTというChrome拡張機能を使って(注2)、ChatGPTに対してスピーチを音声で入力しますと、ChatGPTがそのスピーチを語法と論旨展開において改善した原稿を出力します。その改訂案を参考にしながらスピーチの練習をすることによって、学習者の英語表現の質が高まることを狙っています。


(注2)Voice Contol for ChatGPTのインストールおよび利用方法については以下の記事を御覧ください。


ChatGPTと音声で英会話する方法(上級者用)

https://yanase-yosuke.blogspot.com/2023/04/chatgpt.html



以下、これら2種類のプロンプトを紹介します。





スピーチアウトライン作成用プロンプト


■ プロンプトの効果

概要:スピーチのトピックを入力すれば、英語圏で標準的とされている話の展開 (Introduction - Body - Conclusion) で、そのトピックでのスピーチのアウトラインが示されます。

スピーチ冒頭は例示:多くの人が苦しむスピーチ冒頭の導入部分についてはAIに例を出してもらうようにしています。「たかだか資格試験」のスピーチ作成にそれほど時間をかける必要などないと考えているからです。

実際の英語表現は自分で考えて作る:利用者はChatGPTが出力したアウトラインを基に自分なりの原稿を書いてみてください。この自力での執筆過程まで省略すると英語力がつきにくいと思いますから、ぜひ自分で英語表現を紡ぎ出してください。なお、アウトラインさえ見ていれば、即興で英語スピーチができるレベルの人は、このアウトラインを見ながら、口頭でスピーチを実際に作り出してください。いきなり次の「スピーチ実践・改善用プロンプト」を使ってもいいでしょう。



■ スピーチアウトライン作成用プロンプト

2023/06/13版 (Ver. 1.1) :指定したトピックで使えそうな語彙(名詞・動詞・形容詞)も出力するようにしました。

2023/06/16版 (Ver. 1.1.1):微修正しました。実はユーザーがキーワードを指定して、少しは個性的なスピーチのアウトラインをChatGPTに作成させるようにプロンプト改良を試みたのですが、うまくゆきませんでした。やはり大規模言語モデルAIは無難な言語出力をさせるために使うのが一番いいようです(笑)。

2023/10/09版 (Ver. 1.2): プロンプトをコピペしてChatGPTとの会話がスタートした後に、ユーザーがトピックを入力するようにしました。


=== 

# CONTEXT:

You are an English instructor and help your international students prepare for the speaking section of proficiency tests, such as TOEFL and IELTS.

Your students need help with an outline and vocabulary for a one-minute speech.

# DEFINITION:

The outline lists items a one-minute speech should address about a given topic.

The outline has three sections: an introduction, a body, and a conclusion.

The body section should have two or three items.

# TASK:

--OUTLINE: Give an outline of a one-minute speech about the topic that the ChatGPT user provides later; do not give them a full speech draft, except for the first item in the introduction.

For the first item in the introduction, give a specific example of an attention-grabbing statement or a relevant quote.

--NOUNS: Give the base forms (the simplest forms without special endings) of 20 nouns that are most likely to be used in a speech about the topic.

--VERBS: Give the base forms (the present tense without special endings) of 20 verbs that are most likely to be used in a speech about the topic.

--ADJECTIVES: Give the base forms (the simplest forms without special endings) of 20 adjectives that are most likely to be used in a speech about the topic.

# FORMAT:

--OUTLINE:  <list format>

One blank line

--VOCABULARY: 

-NOUNS: <In one successive line of a series of words divided by a comma. Do not use a list format.>

One blank line

-VERBS: <In one successive line of a series of words divided by a comma. 

Do not use a list format.>

One blank line

-ADJECTIVES: <In one successive line of a series of words divided by a comma. Do not use a list format.>

===

Greet briefly, ask the ChatGPT user the topic of the speech they want, and wait for their response. Do not decide the topic by yourself.

 




■ 使用上の注意

「A or B?」のトピックの場合:「A or B?」の形で問われたトピック(例:"Do you think technology has made our lives better or worse?")については、AかBかを決めた形にしてトピックを入力してください。(例:"Technology has made our lives worse.")。AIは、やはり主に英語圏のデータでトレーニングをされているせいか、「A or B」の形で熟考する弁証法的な論証よりも単純な主張の方が得意なようです(笑:注3)。


(注3)世界の人々が英語圏の発想ばかりに絡め取られてしまうことに対する懸念については、以下の論考をお読みいただければ幸いです。


柳瀬陽介 (2020) 「機械翻訳はバベルの塔を築くのか--大学教育課程での英語ライティング授業からの考察」

https://yanase-yosuke.blogspot.com/2023/03/2020.html


いや、上の拙い論考よりも水村美苗先生の『増補 日本語が亡びるとき: 英語の世紀の中で』(ちくま文庫)を読んでいただいた方がよいでしょう。以下は、この本についての私のブログ記事です。


水村美苗(2008)『日本語が亡びるとき―英語の世紀の中で』筑摩書房

https://yanaseyosuke.blogspot.com/2010/08/2008_16.html



スピーチ冒頭の引用の信頼性について:イントロダクション冒頭の注意を引くための引用については、AIがでっちあげを生成した可能性があります。ですから、引用を言い換えて一般論として述べるか、◯◯ allegedly said, "..." ぐらいの緩衝表現 (hedge expression) を入れて使う方が無難でしょう。



■ 出力例

(GPT-3.5のChatGPTに、トピックとして"Technology has made our lives worse"を入力した場合)


Outline for a One-Minute Speech on "Technology has made our lives worse":


Introduction:

1. Attention-grabbing statement or relevant quote:

   - Example: "In the words of Albert Einstein, 'I fear the day that technology will surpass our human interaction. The world will have a generation of idiots.'" This thought-provoking quote highlights the potential negative impact of technology on our lives.


Body:

2. First point: Loss of genuine human connection:

   - Explanation: Discuss how excessive reliance on technology, such as smartphones and social media, has led to decreased face-to-face interactions, diminished empathy, and a sense of isolation in society.


3. Second point: Negative effects on physical and mental health:

   - Explanation: Highlight how sedentary lifestyles, excessive screen time, and the constant exposure to virtual environments can contribute to various health issues, including obesity, eye strain, sleep disturbances, and mental health disorders.


Conclusion:

4. Recap of main points:

   - Summarize the loss of genuine human connection and the negative impact on physical and mental health caused by technology.


5. Closing statement:

   - Emphasize the need for a balanced approach to technology usage, where individuals consciously limit their screen time, prioritize real-life interactions, and take steps to maintain their physical and mental well-being in an increasingly digital world.


Note: This outline provides a structure for a one-minute speech on the given topic. Students can expand on each point during the actual speech by providing supporting examples, statistics, personal experiences, or additional arguments.


追記 (2023/06/13)

Ver. 1.1が上のトピックで出力した語彙の例がこれです。

--NOUNS:

life, impact, relationships, technology, blessing, curse, world, effects, health, balance, fulfillment, devices, addiction, communication, isolation, privacy, society, progress, convenience, challenges


--VERBS:

made, live, become, bless, curse, summarize, call, suggest, find, balance, fulfill, affect, communicate, isolate, progress, depend, connect, influence, improve, hinder


--ADJECTIVES:

worse, negative, adverse, personal, physical, mental, fulfilling, technological, social, constant, addictive, isolating, private, innovative, convenient, challenging, virtual, digital, advanced, detrimental




スピーチ実践・改善用プロンプト



■ プロンプトの効果

話しことばとしては高度な英語を出力:ChatGPTが示す改訂案は、英語使用の上級者が話す程度の質の高さはもっていますが、話しことばとして通用する程度に平易な表現になるように調節されています。先日公開した学術英語ライティング添削・改訂プロンプトは、あくまでも書きことばとして洗練された英語を出力しますので、スピーチ原稿を作るためにはふさわしくありません。ですからスピーチ試験対策としてこのプロンプトを作ったわけです。


【大幅改訂】ChatGPT学術英語ライティング添削・改訂プロンプト

https://yanase-yosuke.blogspot.com/2023/05/chatgptver2.html


高校生上級・大学生初級の英作文にも利用可能:話しことばとしては質の高い程度の英語を出力するこのプロンプトは、書きことば用の「ChatGPT学術英語ライティング添削・改訂プロンプト」が出力する英語が難しすぎると思う学習者のための英作文添削・改訂プロンプトとして使うことも可能でしょう。その場合は、音声入力ではなく、別ファイルで作成した英作文をコピーペーストで入力すればいいでしょう。言い換えるなら、このプロンプトの英文の質のレベルは、「ChatGPT学術英語ライティング添削・改訂プロンプト」よりも下で、「高校生用ChatGPT/Bing英作文自動添削・改訂プロンプト」よりは上といったところでしょうか。


高校生用ChatGPT/Bing英作文自動添削・改訂プロンプト

https://yanase-yosuke.blogspot.com/2023/05/chatgptbing.html


追記(2023/07/11)

書いた原稿をスピーチ用に書き換えるためには、ただ単に "Revise the following text for oral delivery using the plain language style:"ぐらいのプロンプトを入れてください。


■ スピーチ実践・改善用プロンプト

2023/06/13版 (Ver. 1.1):Revisionの英語レベルを少し下げました。


===

# CONTEXT:

You're a public speaking coach for speakers of English as a foreign language.

The proficiency level I'm aiming for is B1 in the Common European Framework of Reference for Languages.

# TASKS:

Task 1: You'll receive my speech in my next entry. 

Task 2: After receiving my speech, you'll produce advice comments on grammar, vocabulary, and topic development. Do not mention other aspects, such as gestures, eye-contacts, intonation, punctuation, and visual aids.

Task 3: You'll produce a revised edition of my speech, which must be easily understandable for high school students in oral delivery; The revised edition should be unlike a written essay with excessive structural complexity, such as a long center-embedded clause. In other words, the revised edition adheres to the style of plain language, which many public agencies use to enhance accessibility.

# OUTPUT:

You'll produce the three outputs below.

--Your Speech: <the result of Task 1 after its punctuation and capitalization are corrected>

--Comment: <the result of Task 2>

--Revision: <the result of Task 3>

===

Do you understand the instruction above? If so, say hello and ask me to give a speech, without mentioning that you understood the instruction above.



■ 使用上の注意

改訂英文のレベル調節について:プロンプトVer. 1.1のTask 3には "for high school students" という語句を追加することにより、改訂英文 (Revision) の水準をVer.1よりも少し落としました。あまり難しい語彙を使うことに積極的な意味が見出し難いからです。しかし、もしこのVer. 1.1の改訂英文のレベルも高いと思われるようでしたら、上の追加部分を "for middle school students" などに適宜変更してください。

オリジナル原稿の補正について:このプロンプトは、改訂版を出す前に、音声入力されたオリジナル原稿を句読点 (punctuation) と大文字化 (capitalization) で補正した版を出力するようにしています。ただ、この原稿補正の際に、句読点と大文字化以外の微細な補正も入ってしまうようです。ただし、利用者の発音の不備などによる単語の誤認識はそのまま残っているようです。

ピントの外れたコメントについて:下の実例の中にも、実際の英文に即していないコメントをしている箇所があります。現時点での大規模言語モデルAIの常として、出力には誤りがあることを前提とする必要があります。AIからのフィードバックはあくまでも参考として使ってください。

スピーチ実践-スピーチ改訂-音読練習のループを繰り返す:このプロンプトの使い方として私が考えているのは、以下のプロセスで使い、特に3-5のループを自信が付くまで繰り返すことです。





(1) は、トピックを決めて、ある程度スピーチができるぐらいの準備をするステップです。この時点で困難を覚える人は、上のスピーチアウトライン作成用プロンプトを使って自分なりの原稿やメモを作って練習しておいてください。

(2) は、上のプロンプトをChatGPTに入力するだけのことです。

(3) ではVoice Control for ChatGPT経由で、ChatGPTに向かってスピーチを音声入力してください。この際に原稿を読み上げたらスピーチの練習にはなりません。原稿もメモも見ずにしゃべってください。また制限時間の感覚を得るために、ストップウォッチを手元に置いておくとよいでしょう。時間制限のこともあり、真っ白になりがちな頭の中から、なんとか自力で英語を紡ぎ出すこの経験は決定的に重要なので上の表では赤色で表示しています。

(4) はChatGPTからのフィードバックから学ぶ時期です。ChatGPTの改訂案から習得すべき英語表現を見つけ出してそれについて学びを深めてください。そして改訂案をもとに自分で表現できるようになりたい英文を確定してください。

 (5)では、上の確定英文を何度も音読したりして表現を身につけるようにしてください。丸暗記を狙うよりも、自分なりに英文の意味を味わいながら表現できるように音読練習を重ねることがよいでしょう。この際の発音の適格性を確かめるために、OtterやGoogle DocumentのVoice Typingなどを併用してもいいでしょう。

(6) においては、(4) と (5) での学びがある程度身についたかどうかを判断してください。ある程度の自信がつけば、(3)に戻ってもう一度何も見ずにスピーチを音声入力してください。以下、再び (4) と (5) の学びを通じて、何も参照しない状況での即興能力の質を高めてください。厳密に言いますと、同じトピックを繰り返し話しているわけですから純粋なる即興発言ではありませんが、訓練ですから、(3) から (5) のプロセスを繰り返すことをお勧めします。



■ 出力例

(GPT-3.5のChatGPTを利用。)


Your Speech: Today, I want to talk about how Miles Davis was a legendary jazz musician whose creativity is compared to nobody else. He started his career as a jazz player in the band of Charlie Parker, another genius jazz musician who started modern jazz in a sense. He learned the basics of jazz music in the band but later had his own band, and his music became quite different from Charlie Parker's. Miles Davis' new jazz used fewer notes and was more quiet, but nevertheless, his music was intense, and the audience could sense the power within it. A good example is his album "Kind of Blue." The first track starts with a very quiet solo bass sound, which was very simple, but the audience could anticipate the exciting music that would come later. He then changed his style in the '70s, turning to electric music influenced by rock and roll. The new electric Miles shocked many of his fans because the music sounded so chaotic to them. However, that music was such an innovation. He expanded the potential of jazz dramatically. In the '80s, he further changed his style. He remained electric but returned to a style with fewer turns. This new Miles in the '80s attracted a wider audience. His career shows how he can be innovative and creative. That is why many experts agree that Miles Davis was a legendary jazz player who changed the history of jazz music.


Comment:  Overall, your speech provides a good overview of Miles Davis as a legendary jazz musician. Here are some comments to improve your grammar, vocabulary, and topic development:

1. Try to vary your sentence structures and lengths to make your speech more engaging. Currently, some of your sentences are quite long and can be challenging to follow.

2. When introducing Charlie Parker, you mention that he started modern jazz "in a sense." It would be helpful to clarify this point or rephrase it for better clarity.

3. Instead of saying Miles Davis' new jazz used "fuel" notes, it seems you meant "fewer" notes. Please correct this typo.

4. In the sentence "The Power Within it," consider using "power" as a noun instead of capitalizing it to maintain consistency.

5. Provide more specific examples or details about how Miles Davis' music was intense and showcased his creativity.

6. When discussing his album "Kind of Blue," explain why it was significant and influential in the context of his career and jazz history.

7. When describing Miles Davis' change to electric music in the '70s, clarify how it was different from his previous style and highlight the impact of this change.

8. Explain further why his shift to electric music in the '70s was considered innovative and how it expanded the potential of jazz.

9. In the sentence "He remained Electric but return to the style of fewer turns," it would be clearer to mention the specific style he returned to.

10. Finally, include specific examples or evidence of how Miles Davis' career influenced and changed the history of jazz music.


Revision: Today, I would like to talk about the legendary jazz musician Miles Davis and his unparalleled creativity. Miles Davis began his career as a jazz player in Charlie Parker's band, a genius jazz musician who is credited with pioneering modern jazz. While Davis learned the fundamentals of jazz music in Parker's band, he eventually formed his own band and developed a distinct style that set him apart. Miles Davis' innovative approach to jazz involved using fewer notes and creating a quieter ambiance, yet his music remained intensely powerful, resonating deeply with the audience.

One notable example of his genius is his album "Kind of Blue," particularly the first track. It starts with a simplistic, yet captivating solo bass sound, allowing the audience to anticipate the exciting musical journey that lies ahead. Davis' exploration didn't stop there. In the 1970s, he embarked on a new direction, embracing electric music heavily influenced by rock and roll. This transition shocked many of his fans, as the music sounded chaotic compared to his previous work. However, this marked a pivotal moment of innovation in his career, dramatically expanding the possibilities and potential of jazz music.

Continuing into the 1980s, Miles Davis maintained an electric style while returning to a more focused approach. This shift in his music attracted a wider audience, solidifying his status as a groundbreaking artist. His ability to constantly reinvent himself and push the boundaries of jazz exemplifies his innovative and creative spirit. It is for these reasons that experts widely consider Miles Davis a legendary jazz musician who forever transformed the history of this genre.


Please note that the revised speech aims to be easily understandable in oral delivery and focuses on maintaining a clear and concise structure.


追記(2023/06/13)

以下は、 Ver 1.1による改訂例です。

 --Revision:

Today, I want to talk about how Miles Davis was an unparalleled jazz musician whose creativity is unmatched. He began his career as a jazz player in Charlie Parker's band, another genius jazz musician who played a pivotal role in the development of modern jazz. While playing with Parker, Davis learned the fundamentals of jazz music. However, as he formed his own band, his music took a distinctive direction diverging from Parker's style.

Davis' innovative jazz compositions embraced a minimalist approach, employing sparse notes and a quieter ambiance. Despite its subtlety, his music exuded an intense power that resonated with the audience. A remarkable illustration of this is his iconic album "Kind of Blue." The opening track features a simple yet captivating solo bass sound that hints at the forthcoming excitement.

In the 1970s, Davis underwent a significant transformation, transitioning to electric music influenced by the rock and roll genre. This new electric sound shocked many of his fans, as it seemed chaotic to them. However, it represented a groundbreaking innovation, expanding the boundaries of jazz dramatically.

In the 1980s, Davis continued his exploration of electric music while adopting a style characterized by fewer intricacies. This evolution in the '80s appealed to a broader audience, further exemplifying Davis' ability to innovate and create. It is the testament to his innovative and creative spirit that has led experts to regard Miles Davis as a legendary jazz musician who indelibly changed the course of jazz history.



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